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橘靖竜
8,923
ルナ様のお告げより少し前。
「じゃあ新しい家を見に行こっか!」
「楽しみですね。私の部屋もあるとか?」
「どんな豪邸なんだ?15億って想像できないんだが…」
夜になり地球へと異世界転移して来た俺達は、ロサンゼルスへ転移魔法でやって来ていた。
時差がある為、こちらはまだ夜が明けたばかりだ。
「リムジンを予約しているから行くよ」
流石聖奈。
聖奈の先導で俺達は知らない街を歩いた。
リムジンに揺られること四時間。
時差ボケによりぐっすりと眠っていた俺たちは、運転手のクラクションで目を覚ました。
「寝ちゃってたね…」「一体どれくらい待たせたのでしょうか…」「仕事とはいえ申し訳ないな…」
リムジンに乗った途端、サービスで付いていたシャンパンをみんなで飲んだんだ。
俺たちの体内時計で言えば深夜。
そこにアルコールが入れば寝ちゃうのは必然で……
「まぁ、次からは転移で来れるからもう利用することがないのが救いか…」
次回どんな顔をして頼めばいいのかわからんもんな……
「アレがお家ですか?」
「そうだよ!大きいよね!」
リムジンでたどり着いた地は、辺り一面踝丈の高さの草原だった。
芝生より少し長いくらいだな。
ここが異世界だと言われてもわからないくらいには何もないところだ。
そんな場所に大きめの一軒家が鎮座している。
どうやらアレが15億円らしい。
とてもそうは見えないのだが……
いや、大きいよ?
プールも見えるからそこそこの豪邸だということはわかる。
でも15億はしないだろう…上物は良くて一億くらいじゃないか?
こっちは日本と建築基準が違うから安めだし。
土地代だって、ここは辺りにスーパーどころか民家も見えないど田舎だし、格安だろう。
「ん?どうしたの?行こう?」
「あ、ああ」
俺が不審な目を向けていることに聖奈は気付くが、何も言わず、俺の手を取り家へと向かう。
いや…聖奈が騙されるなんてことはありえないだろう。
きっと何かがあるんだ。
家に入るなり、15億円の謎は全て解けた。
ガチャ
「どうぞーって、みんなの家だけどね」
玄関の施錠を解くと聖奈が可愛らしく入室を促した。
「楽しみですね」
「ああ」
俺はついに新居へと足を踏み入れた。
「なっ!?これは…」
「凄いです…斬新と言うか…よく見つけられましたね」
俺とミランの眼下には、巨大なクルーズ船と海が広がっていた。
馬鹿な、と思うだろう?
家に入ったらそこはまだ外なんだぜ?一応囲われているし、屋根もあるから室内感はあるけども。
「凄いでしょ?中々条件に合うところがなかったけど、やっと見つけたの。説明するからとりあえずリビングに行くよ」
放心状態の俺達を促し、聖奈は左手に見える階段へと向かう。
「行こうか」
「はい」
圧倒された俺達は聖奈の後を追った。
「もうわかったと思うけど説明するね。ここは船着場兼プライベートビーチ付きの物件なの」
うん。見たまんまだ。
海から見るとこの家は崖の上に造られて見えるようだ。
実際には崖から飛び出しているんだがな。
「この条件を探していたということは…あれは…」
「そう。あの船で新大陸を探す予定だよ」
「それで15億か…」
「うん。あの船はロングレンジクルーザーって言って、長い航海に耐えられられる設計なの。さらにサロンクルーザータイプだから、中は高級ホテルみたいになっているよ。お値段なんと三億円以上ですっ!」
俺の車10台分かよ……
確か漁師さんは金を借りて船を買う時に、同時に高級車を会社名義で買うとか聞いたことがある。
確かに十倍も値段が違うならそんなことも出来るか。
「じゃあこの家は12億?」
「この家は10億くらいかな。足元みられちゃったからね。でも、そこまで割高ではないはずだよ」
まぁこんな造りなら高いよな…海側なんて柱がなくて全面ガラス張りで、リビングの開放感半端ないもん。
「残りのお金は船の備品代だと思ってね。燃料も買いに行かなくても良いようにタンクを設置して貰ったしね!」
ガソリン入れにも行けないもんな。だって誰も船舶免許持ってないもん。
「納得だ。一つ気になるのは、アレを誰が運転するのかだが…」
「操縦は任せて!!本で勉強したからねっ!」
「ダメです。セーナさんはダメです」
うん。俺もそう思う。
多分出航する前に沈没する。
「えぇーっ!!なんでぇー!!」
「いや…わかるだろ?まぁ俺が覚えるから、その本を貸せ」
聖奈は渋々操船マニュアルを渡して来た。
「聖奈は整備を覚えてくれ。ミランはその補佐として一緒に勉強してくれ」
「わかったよ…」「はいっ!任せてください!」
悪いな。まだ死にたくないんだ。
操縦したがる聖奈と見張りのミランを残して、俺は船へと向かった。
数日後。
「凄い、凄い!ちゃんと動いてるよっ!」
俺は船の操縦を覚えた。
命懸けだからな。そりゃあちゃんと覚えますとも。
今では家の船着場にもしっかりと停められます。
最初は狭くておっかなびっくりだったけどな。
「そりゃあ動くわな。動かなきゃ高いオモチャでしかない」
「これで準備は整ったね!」
そう。これで憂なく船出を迎えられると、この時は思っていた。
まさか数日後に延期が決まることになるとは……
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