「あーあ、なにしてんだろ、おれ……」
一日休んでしまったら、もうだめだった。明日は、明後日は、寝る前にはそう思うのに、朝になってみれば起き上がることもできなくて、当然出勤もできなくなった。体調不良と誤魔化してみたけれど、もうそんな言い訳じゃ誰も誤魔化されてくれない。
「なんか食べなきゃ…………」
のそり、起き上がる。リビングに降りれば、飼い犬だって俺を見て、久しぶりだなって顔をしていた。しんと静まり返った廊下を振り返る。こんな平日の真っ昼間、人の気配があるはずもない。だけど、何も食べないで寝ていたら、まだ食べられそうにない? って親が必要以上に心配するから。
冷蔵庫を開ければ、温めて食べてね、母親の字でメモが貼られた雑炊が鎮座していた。温めるのも、面倒くさいな。冷たいままの雑炊は、レンジをさぼったせいなのか、ほとんど何の味もしなかった。
「…………っ、んぐ……」
残すのも気が引けて、口の中に詰め込む。こんなとき、前の俺なら好きな動画でも見たんだろうけれど、見たくないものが目に入りそうで、それでも静かなのは寂しくて、適当につけたテレビは出演しているのが誰なのかもわからなかった。こんな芸能人、いたっけ。テレビの中の笑い声が、一人きりの部屋に虚しく響く。
体調どう? 距離感を探るみたいに送られてきたDDのメッセージだって、あの日から未読無視したまま。どうすればいいか、答えは出ているはずなのに、返信できない。大丈夫だよって、一言返せば済むはずなのに。
結局トイレで便器に顔を突っ込んで、ついさっき食べたものも好きだったはずのコーラも、全部吐いた。