テラーノベル
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森を出てから。
渡辺は、できるだけ人目を避けて歩いていた。
村が見えれば遠回りをする。
人の声が聞こえれば、木々の間へ身を隠す。
食料は森で採れるものを探し、水は川から汲んだ。
人間と関わらなくても進める道を選んでいた。
それでも。
宮舘の手がかりは、何も見つからない。
杖も。
食卓に残されていた紋章も。
何を意味するのか分からないまま。
何日かが過ぎた。
「……どこいんだよ」
夜になるたび。
宮舘の杖を握りながら呟く。
返事なんて。
当然ない。
いつもなら。
少し歩けば隣にいる。
森の中で薬草を探す時も。
川まで水を汲みに行く時も。
振り返れば。
そこに宮舘がいた。
それが。
今はどこにもいない。
渡辺は。
杖を握り直した。
「絶対見つけるから」
何度目か分からない言葉を。
また一人で口にした。
その日。
空が暗くなり始める頃。
渡辺は、森を抜けた先で古い建物を見つけた。
崩れかけた石壁。
蔦に覆われた柱。
天井のほとんどは落ちている。
昔は。
何かの神殿だったのかもしれない。
人が住んでいる気配はない。
渡辺は少し迷ってから。
遺跡の中へ入った。
今日はここで休もう。
そう思った。
外よりは。
まだ風を避けられる。
宮舘がいれば。
もっと安全な場所を探そうと言ったかもしれない。
そんなことまで考えて。
渡辺は小さく息を吐いた。
「……いないのに」
何でも。
宮舘ならどうするか。
そればかり考えてしまう。
奥へ進む。
その時。
微かな物音がした。
渡辺の足が止まる。
誰かいる。
すぐに。
宮舘の杖を構えた。
まきぴよ
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「誰」
返事はない。
けれど。
石壁の向こうから。
小さな光が漏れている。
魔法。
渡辺の表情が変わる。
人間ではない。
少なくとも。
普通の人間ではない。
ゆっくり。
壁の向こうへ回る。
そこにいたのは。
一人の女だった。
長い髪。
旅装。
足元には開いた本と。
小さな鞄。
手には。
淡く光る魔法陣が浮かんでいる。
相手も渡辺に気づいている。
「誰?」
警戒した声。
渡辺も杖を下ろさない。
「それ、こっちの台詞」
女は渡辺の杖を見る。
少しだけ眉を寄せた。
「魔法使い?」
「……だったら何」
「別に」
女も魔法を解かなかった。
二人とも相手を信用していない。
しばらく。
睨むように見つめ合う。
やがて、女の方が先に息を吐いた。
「俺は阿部」
渡辺が少し目を細める。
「……渡辺」
それだけ。
名乗っても警戒は解けない。
阿部はゆっくりと。
手に浮かべていた魔法陣を消した。
「俺、ここで一晩休むだけだから」
「俺も」
「じゃあ、勝手にすれば」
「そっちも」
会話が終わる。
渡辺は少し離れた場所へ腰を下ろした。
阿部も元いた場所へ戻る。
同じ遺跡にいるのに。
互いに。
距離を取ったまま。
しばらくして。
辺りはすっかり暗くなった。
阿部が小さな火を魔法で灯す。
渡辺はその光から少し離れた場所で。
持ってきた干した果実を食べていた。
静かだった。
火が弾ける音だけ。
その中で。
阿部がふと口を開いた。
「その杖」
渡辺の手が止まる。
「何」
「あなたのじゃないよね」
渡辺の目が鋭くなる。
「何で分かるの」
「魔力が合ってない」
阿部は火を見ながら言った。
「杖に残ってる魔力と、あなたの魔力が違う」
渡辺は。
少し黙る。
賢者。
そう名乗っただけあって。
魔力を見る力はあるらしい。
「……恋人の」
阿部が渡辺を見る。
「恋人?」
「突然いなくなった」
口にすると。
胸の奥がまた重くなる。
「朝起きたらいなくて」
「杖だけ残ってた」
阿部の表情がわずかに変わった。
渡辺は気づかず続ける。
「変な紋章も残ってた」
「紋章?」
「食卓に焼きついてた」
その瞬間。
阿部が立ち上がった。
渡辺も反射的に杖を握る。
「何」
「その紋章」
阿部は自分の鞄を探る。
そして。
中から一本の小刀を取り出した。
細身の刃。
使い込まれた柄。
装飾は少ない。
けれど。
その柄に。
渡辺は見覚えのあるものを見つけた。
「……それ」
阿部が小刀を差し出す。
渡辺は立ち上がり。
ゆっくり近づいた。
宮舘の杖を見る。
小刀を見る。
同じだった。
杖に刻まれた紋章。
小刀の柄に刻まれた紋章。
形も。
線の重なり方も。
完全に同じ。
「何で……」
渡辺が呟く。
阿部も小刀を見つめたまま答える。
「俺も知りたい」
「これ」
阿部は少し間を置く。
「俺の恋人の」
今度は。
渡辺が阿部を見る。
「恋人?」
阿部は小刀を握り直した。
「めめも、突然いなくなった」
渡辺の胸がざわつく。
「いつ」
「数日前」
「何も言わずに?」
「うん」
阿部の声が少しだけ低くなる。
「朝起きたらいなかった」
同じ。
渡辺は無意識に宮舘の杖を強く握った。
阿部は続ける。
「小刀だけ残ってた」
「いつも持ってく?」
「絶対」
阿部は即答した。
「めめがこれ置いて出ていくなんて、ありえない」
そして。
小刀の刃元を見せる。
そこには。
小さな亀裂が入っていた。
渡辺が覗き込む。
「壊れてる」
「うん」
阿部の眉が寄る。
「これも変なんだよ」
「めめ、武器の手入れだけはちゃんとしてたから」
指先で亀裂の近くに触れる。
「こんな状態の武器、置いていくわけないんだけど」
渡辺は自分の手の中の杖を見る。
傷一つつけず。
毎日手入れしていた宮舘。
どこへ行くにも。
必ず持っていた。
「涼太も」
阿部が見る。
「涼太?」
「俺の恋人」
渡辺は杖を少し持ち上げる。
「これ、置いてどっか行くような人じゃない」
一瞬。
二人の間に。
同じ感覚が流れた。
自分たちの恋人は。
勝手にいなくなったわけではない。
何かがあった。
阿部が。
もう一度、小刀の紋章を見る。
「同じ紋章」
渡辺も杖を見る。
「同じように突然いなくなった」
「武器を残して」
「何も言わずに」
二人は顔を見合わせた。
偶然とは思えなかった。
阿部が小刀を鞘へ戻す。
「俺、めめを探してる」
「俺も涼太を探してる」
目的は違う。
探している人も違う。
けれど。
二人を繋ぐ手がかりは。
同じだった。
阿部が少し考えてから言う。
「一緒に行く?」
渡辺はすぐには答えなかった。
誰かと旅をする。
宮舘以外と。
それも。
今日会ったばかりの相手。
今までなら。
断っていた。
人を信用することに。
慣れていない。
でも。
阿部も同じ顔をしていた。
恋人がいなくなって。
理由も分からず。
ただ探している。
それだけは。
分かった。
「……足引っ張んなよ」
阿部が少し笑う。
「そっちこそ」
「俺、魔法使いだから」
「俺、賢者だけど」
「何その張り合い」
「そっちが始めたんでしょ」
初めて。
ほんの少しだけ。
空気が緩んだ。
渡辺は宮舘の杖を自分の隣へ置く。
阿部も目黒の小刀を大切そうに鞄の横へ置いた。
明日から。
二人で。
同じ紋章を追う。
宮舘を探すため。
目黒を探すため。
まだ。
何が待っているのか。
二人とも知らない。
ただ。
この夜。
森を出てからずっと一人だった渡辺は。
初めて。
同じ人を失った誰かと。
火を囲んで夜を過ごした。
そして翌朝。
二人は。
同じ方向へ。
歩き始めた。
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お〜新しい物語が始まった なぜいなくなったのか… 続き待ってます♪ 3匹と2人が必死に考えてるのも面白い🤣
今後の映画は💚💙が主演なのね、クッキー達優秀なチワワだね(≧∀≦) まだ始まったばかりだからストーリーがどう進展するか分からないけど楽しみ(*ノェノ)キャー