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第10話 「違うそうじゃない」
「……」
何も知らなければ、威圧感ある強面の男性にしか見えないこの男。
「園(その)田(だ)先輩!」
「そういえば、先輩には話してませんでしたね」
鋭い視線に晒されているのに、夏実は真っ赤になって焦り、史花は平然と言ってのけた。
園田悠一(ゆういち)。
夏実と史花が所属するバスケットボールサークルの先輩である。
「そうか……桜木に、ついに恋人ができたか」
「は、はい」
「緩みきっているな。主に、口(こう)角(かく)と目元が。小動物を愛でるときの俺のような顔だ」
(この強面が豹変する瞬間が見てみたいわね)
ちなみに、史花だけでなく夏実も、緩みきった悠一の顔を見たことがなかった。
「それで、相手は誰なんだ」
「……」
当然の質問に、夏実は少し躊躇(ためら)う。
京輔と悠一は面識はないが――話題に出した以上のことを、悠一はどこまで知**********
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