※タグにはつけませんでしたが、飯綱さん愛され…というより可愛がられてます。学園長とか烏さんに。気にならない方は楽しんでいってください
「…ん…ここは…鎖」
少年が目を覚ますと、そこは薄暗い部屋だった。そして、鎖で繋がれていた
「(確か…昨日…)」
まだぼんやりする頭をフル回転させながら、昨日のことを思い出していく
「…負けた、のか」
ただ薄暗い部屋では、呟いた声も、大きく聞こえた
「(とりあえず、鎖を…!)」
悩んでいても仕方がない。そう結論づけると、鎖をとりにかかった。だが、当然銃は回収されていた
「(こうなったら)」
ガンッッッッッッ
少年は、思いっきり鎖を引っ張った。だが、子供の力でどうこうなるものではなかった
「(どうしよう…)」
ピカッ
「?!眩し、」
いきなり電気がつき、眩しくて目を瞑る
「おや、起きていたのですか」
「お前は、昨日の…」
「…」
道満は、無言でドアの前まで歩いていった
「バケツ…?」
バシャッ
「いっつ…!!…テメェいきなり何しやがる!」
道満は、バケツの水を少年にかけた。少年は、どこか怪我をしていて、水が沁みたのだろう。小さく呻き声を上げた。そんなことはお構いなしな様子の道満の手には導線と、電圧機が持たれていた
「さて、今から幾つか質問をします。答えなかったり、殴りかかってくるなら、電流を流します」
「…それで、水か」
「はい」
大人であれば、こんなチンケなものより、即電気椅子にくくりつけて情報を吐くまで電流を流し続けたであろう。だが、やはり道満にとっては気になる少年である。あまり痛めつけては、今後に影響が出かねない
「さて、では早速…君、名前は」
「誰が答えるか 」
「はぁ。できれば使いたくないんですけどね」
「〜〜っっ?!」
流石に、電流は堪えるらしい。少年は、必死に呻き声を殺した。呻き声を上げるということは、負けているということだから。この世界で負けるということは、死を意味する
「ああ、流す電流は毎回大きくしていきますから」
「っハァ…」
「…君、家族が多いんだね」
「…は」
「不思議じゃないだろう?私たちはマフィアだ」
「っ…!家族は関係ない!全部、俺1人でやったことだ!!!!」
巻き込んでしまった。少年は瞬時に悟った
「君は、自分たちの立場を理解しているのかい?」
少年の家もまた、裏の世界に身を置いている。つまり、敵対している勢力に喧嘩を売られた。目には目を。少年が手を出したばかりに、抗争に発展する。そう言いたいのだろう。裏の世界ではよくあることだ。そうやって抗争は始まるのだから。むしろ、それが暗黙の了解であり、裏社会の普通だ
「それ、は…」
少年は、ただ、下を向いた。そして、ブンブンと勢いよく頭を横にふった。自分の浅はかさから、目を背けてまいとするように
「さて、質問を変えましょうか。…なぜ、私の部下を殺して周ったんですか?」
「?!なん…」
それまで少年から距離をとっていた道満だったが、少年が下を向いていた時に距離を詰めたのだろう。そして、自分の質問に唇を噛み締める少年に、耳打ちをするように囁いた
「ねぇ…秦中飯綱くん?」
「え…」
「当然でしょう。君の家のことも突き止めたんですよ?君の名前なんてそれに比べればすぐですよ」
「俺の家族に手出してないだろうな?!」
「ええ…まだ、ですが」
「!」
「言ったでしょう?私たちはマフィアです。暴力に頼ることが普通なんですよ
…君の返答によっては、ね?」
たとえ理由があろうと、暴力には暴力を。裏の世界ではそれが絶対で、普通だ
「さて、では改めて。私の部下を殺したのは何故ですか?」
「…知ってる、だろ…」
知っている…というよりなんとなくだが道満は察している。しかし、それでは意味がない。裏の世界の絶対的なルール。それを覆し得るカードを少年が得るには
「ええ。なんとなく察してはいます。ですが、私は君から直接聞きたい」
「…俺の家は、兄弟が多い。だから、数年前までは、両親はずっと働きっぱなしだった」
「数年前」
「…父さんが、死んだから、母さん1人で、俺たちを養っていかなきゃ行けなくなった。でも、母さんは、過労からか倒れて、病気にかかった。もう、うちには働き手がいなくなった」
「…」
道満は、黙って聞いていた。かなり大きい問題を抱えているのは理解した。恐らく、医者がいないことが1番の問題だろう。まず、裏の人間は、表の病院にはいかない、というより行けない。普通に生きていれば、銃弾が体内に撃ち込まれるなんてことはないのだから。しかし、医者はいないわけじゃない。では何故いないのか。簡単だ。目障りだからだ。抗争になっても、医者がいるせいで図太く命を繋ぐ人間がいる。こちらとしては有難いが、敵からすれば、最も殺すべき人間。そうして医者が狩られるため、こうして医者に診てもらえず、なんてことも稀だじゃない
「…あんたのとこの構成員を狙ったのは…正直当てつけだ」
「当てつけ…君のお父上は、」
「あんたらの抗争に巻き込まれて、死んだ」
「そうですか」
自分でも驚くほど冷たい言葉が出てきた。何故なら、興味が湧かない。正直、だからなんだ、としか思わない。裏の世界に身を置き続ければ、誰だってそうなる。裏の世界に身を置き続ければ、色んな感情が死んでいく。裏の人間が感性にかけるのはそういうことだ
「…母さんの薬も買わなきゃいけなかったから、死体を漁って金になりそうなものを持ってった」
「ああ、それで死体に貴重品がなかったんですか」
「…これが、全部だ」
「なるほど。まあ、理解できなくもないですが、今はどうでもいい」
「っ…!」
飯綱は、警戒体制をとった。幼いながら裏の世界の、しかも裏の世界の底を覗いた飯綱の頭が、警鐘を打ち鳴らし続けている
「そんなに警戒しなくても…といっても無駄ですね。では、簡潔に」
今ここで殺されるのだろうか。家族まで、殺されてしまうのだろうか。そんな不安が、飯綱を襲っていた
「秦中飯綱くん。君、私の元で働きませんか?」
「…は? 」
「もし、君がこの条件を飲むなら、君の家族には一切手を出さない」
「!」
「これが、私が君に与えられる最後のチャンスだ」
裏社会の絶対的ルール。しかし、それは表のように、示談も一応存在する。もちろん、表ほど綺麗なものではない。それでも、確かに、示談は存在している
「…俺は、何をすればいい?」
「おって説明しますが…それはイエスととっても?」
「…ああ」
道満は、飯綱を繋いでいた鎖を解いた
「では、ようこそ飯綱くん」
「?!」
道満は、飯綱の返事を聞くと、自身の面を外した
「えっと、その顔…」
道満の顔には、大きなあざがあった
「負けただけですよ」
事実、道満はその男に負けた。否、勝ったことは一度もない
「私は蘆屋道満。今日から君の上司だ」
「…よろしく」
「まずは敬語の勉強から始めましょうか」
「え」
「え?」
「〜っ!」
途端、飯綱はドアへ一目散にかけていった
「どこへいくんです?!」
必死に扉の鍵を開けようとする飯綱。万一の逃走防止ように、鍵を閉めておいたのである。鍵は、道満が持っているが
「勉強なんざ…死んでもやるかー!!!!!!!!!」
「はあ?!大事なことだから言ってんですけど?!」
「知るか!ちゃんと下で働く!!それでいいだろ?!!!!!!」
「人としての礼儀を…」
「あーもーうるせー!わーーーーー!!」
「叫ぶな!!ほら、そんなに難しいことはないですから!!」
「大体そういうのは難しいってのがおきまりじゃねーかーーー!!!!!!」
「本当にっ…言語の話ですから…!」
「あー聞こえねーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
「だから…っいつまでも叫んでんなクソガキ!!てか、話聞けー!!!!」
こうして、シリアスクラッシャー・秦中飯綱は爆誕し、蘆屋道満の右腕として成長していく事になる
一方、ドアの外では…
「…何してんの、あっちゃん…」
叫び声を聞きつけ様子も見にきた烏が、そこにいた
コメント
6件
面白いです!
本当に何してるの?2人ともwww