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麗は料理をテーブルに出しながら後悔した。


何故肉じゃがにしたのか。

ジャガイモと玉ねぎが安かったからであるが、カレーにすればよかった。


偏見とはわかってはいるが、初めて男の人に食べてもらう手料理に肉じゃがは何だかあざとい気がする。


麗でーす。社長やってる26歳で、得意料理は肉じゃがでぇす! 今日は、白馬の王子さまに会いたいなーと思って来ちゃいましたぁ。

麗は行ったこともない合コンでキャピキャピしながら自己紹介をしている自分の姿を想像した。


(寒い、寒すぎる)


今からでもカレーに変身させる魔法のレシピないかと、無理なことを考えつつ、付け合わせのほうれん草のお浸しや、味噌汁、ご飯を並べる。


「ありがとう」

部屋着に着替えてきた明彦に流れるように頭上にキスを落とされた。

まるで、キスをするのが当たり前の事であるかのようで、麗は欧米かとツッコミたくなった。


「お口に合うといいけど」

「いただきます」

麗が明彦の向かい側に座ると、明彦が手を合わせてくれたので、麗も一緒に合わせる。

「いただきます」


早速、明彦は肉じゃがに箸をつけた。

流石はお金持ちの家のお坊っちゃまだけはあり、綺麗な箸使いである。

麗は明彦が肉じゃがを口に含み、咀嚼する様子をじっと見た。


「麗、そんなに見られたら食べづらい」

「ごめん、つい」

麗も肉じゃがを食べたが、やっぱりジャガイモが若干シャリっとしている。

「ごめんね、ジャガイモ失敗したわ」

「俺はこれくらい固い方が好き」


嘘だ、絶対に嘘だ。

と、麗はジャガイモを奥歯で噛みながら思った。


「ところで、麗。後でネットで買い物しようか」

明彦が味噌汁を飲んだので、麗はやはりその様子をしっかりと見て、口に合わなくて無表情になっていないかをまた、確認してしまった。

「何買うの?」

「麗の部屋着」

「えー、いらんよ。まだ使えるもん」


そういえば、高校の体育祭や文化祭で作ることになっていたクラスTシャツは駄目になるのが早かった。


(あれは、本当に無駄金を使わされた)


皆が皆、お小遣いが潤沢にあるわけではない。

特に麗は短大入学が決まってアルバイトを始めるまでは、姉から時々お小遣いを貰っていたので、そのお金を使うのが本当に申し訳なかった。

しかし、クラスTシャツを作る段階で購入希望者のみにして欲しいと言わなかった自分も悪いので、仕方なく購入し、伸びに伸びて姉に捨てなさいと言われるまで使い倒したのだ。


「体操服はもう充分減価償却できているはずだろ」

確かに、体操服の身になって考えてみたら、あのクラスTシャツと同じく、もう充分以上働いて、そろそろ引退したいかもしれない。


「そっか。じゃあ、捨てるわー」

「捨てずに箪笥に仕舞っておくといい」

素早い返事に麗は眉をひそめた。


「なんで?」

「仕舞っておくといい」

なおも念押しされ、麗は曖昧に頷いた。

「うん、わかった」


「それと、昨夜、着ていたTシャツ、メッセージ性が強すぎないか? あれ、どこで売ってるんだ?」

確か昨夜は、お酒は二十歳、水道水は一歳になってから。と、書かれているTシャツを着たのだ。


「ああ、あれは、お母様が趣味で参加してはる南京玉すだれサークルのクリスマス会のビンゴで貰ってきはったやつやねん。だから、販売元は知らんわ。タグ見たらわかるかな」

いらないので棄てるという継母に勿体ないのでパジャマがわりにするからともらったTシャツは、何故か生地がしっかりしていて、着心地がよくお気に入りだった。


「本当に店を知りたい訳じゃない。兎に角、麗の部屋着を買うのは決定事項だ」

「えー」


明日は、継母からもう一枚貰ったゆで時間別、ゆで卵の出来上がりの違いTシャツを着る予定だったが、それもお役ごめんにしなければならないのだろうか。


まだ使えるのにと、麗は唇を尖らせた。

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