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第5話「地下からの軟体、その名はこより」
「私、結守(ゆいもり)律って言います。よかったら弟子にしてください」
(わ、わ!!私…こんな固まっちゃって…何かとても真剣な子って思われたら嫌だな…どうしよう…!前から思ってるけど…!友達出来ないよぉぉぉぉぉ!!)
律は心の中でパニックになっているが、実際は顔がスンとしており、クールで冷静な子だと思われがちで、周囲から距離を置かれているのであった。
一方、隣に立つ絢は——。
(え、どうしようどうしよう…僕こんなクールでかっこいい子連れて来ちゃったよ、どう接するべきなの…!?)
お師範は律を見て、やれやれと大きなため息を吐いた。
「お前さんは…そうだな…柔軟性を極め、結(むすび)ノ呼吸を覚えろ。だが、かわし(私)は結ノ呼吸を教えられん…だからアイツ、わしの娘を呼ぶ、こよりーーー!!」
お師範が天井に向けて大声を張り上げた、その直後だった。
ガタ……。
部屋の隅の薄暗い床板が、突如として音もなくスーッと開く。
次の瞬間、絢と律の目が点になった。
そこから現れたのは、人間とは思えない角度で体がグニャリと折りたたまれた一人の少女。
彼女は蛇のようにしなやかに、かつ完全に無音のまま、地下からシュルシュルとこれ以上ない柔らかさで這い出てきたのだ。
「ふぅ……呼んだ、お父ちゃん?」
軟体人間のような独特のポーズを維持したまま、少女——こよりは首だけを180度近く回転させて、絢たちをじっと見つめた。
「ひえっ!? ば、化け物……っ!?」
絢はガチで怯え、情けない声を上げて数歩飛び退く。
一方の律は——。
(わわわわわ!!何あの人!?体柔らかすぎだし怖っ!!無理無理無理、心臓止まるーーー!!)
心の中では脳内麻薬が出そうなほど大パニックを起こしていた。しかし、恐怖のあまり完全に身体が硬直してしまったせいで、顔はスンとしたまま微動だにしない。
こよりはグリリと不気味な動きで立ち上がると、律の顔のすぐ近くまで顔を近づけた。
じっと律の瞳を覗き込み、ニヤリと不敵に笑う。
「ほう……私のこの登場を目の前にして、眉一つ動かさないとはね。いい度胸の娘だ。気に入ったよ」
(気に入られちゃったよぉぉぉぉぉ!! 違うの、ただ腰が抜けて動けないだけなのーーーっ!!)
律の心の叫びは、誰にも届かない。
「こより、この娘はお前の弟子だ。結ノ呼吸を叩き込んでやれ」とお師範。
「オッケー。じゃあそこのクールな可愛い子ちゃん、さっそく地下の特訓部屋に行こうか!」
こうして、勘違いが勘違いを呼ぶ、律の恐怖の軟体修行が幕を開けるのであった——。
コメント
1件
あーっ!めっちゃ面白かったわこれ!! 律の心の叫びと外面のギャップが最高すぎるww「気に入られちゃったよぉぉぉ」って脳内パニックが可愛すぎるし、こよりの登場シーンは完全にホラーやったけど、その後の勘違いコメディに笑ったわ。 結ノ呼吸の修行編、どうなるんやろ…楽しみすぎる🔥