テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
20
14
兵十は、もう、ひとりぼっちになりました。「おれと同じ、ひとりぼっちの兵十か」
ごんは、おっ母の死んだ兵十の家(うち)の方を、しみじみと見つめました。
兵十の家の裏には、納屋(なや)があって、その中に、いわし売りが、いわしの籠(かご)を置いて、休んでいました。
ごんは、そのいわし売りの後ろへまわって、籠の中から、いわしを五、六匹、つかみ出しました。そして、それを、兵十の家の、裏口から、中へ投げ込みました。
「これで、鰻のつぐないになったぞ」
と、ごんは思いました。
つぎの日、ごんは、また、いわしを五、六匹つかんで、兵十の家(うち)へ持っていこうとしました。すると、途中で、いわし売りの声が聞こえました。
「どろぼう狐(ぎつね)め、こないだは、おれのいわしを盗んで、兵十の家(うち)へ投げ込みやがったな。おれは、ちゃんと見つけていたんだぞ」
ごんは、びっくりして、いわしを放り出して、逃げました。
「しまっ。いわし売りは、おれが盗んだのを知っていて、兵十が盗んだと思ったんだな。だから兵十は、いわし売りに、ひどい目に合わされたんだな」
ごんは、深く後悔(こうかい)しました。
「これからは、もう、よそのものを盗んで持っていくのはやめよう」
ごんは、山へ行って、栗(くり)をたくさん拾ってきました。それを、兵十の家の、裏口から、中へ投げ込みました。
つぎの日も、ごんは、山へ行って、今度は、大きくて、見事な松茸(まつたけ)を、二つばかり見つけて、それを、兵十の家(うち)の裏口へ置いておきました。
そのつぎの日も、そのつぎの日も、ごんは、栗や松茸を、兵十の家へ持って行ってやりました。
三段落 終わり
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!