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〈kintoki side〉
いつも歩いてきていた通学路がこんなにも憂鬱なことはないだろう。
疲労による身体の重さではなく、精神的な何かが漠然と俺を襲う。
br 「明日にはスマイルも戻ってきてるかな」
そうしてウキウキとしている彼の後ろ姿を見ていったいどうやって伝えるべきかがわからない
たとえどんな方法を使っても、真実を伝えれば彼のその笑顔が歪むことはわかっていたから。
sh 「、、、、もし戻ってきてなかったらどうする?」
br 「どうするって、、、」
nk 「ごめん、、、話を遮っちゃうんだけどさ、しゃけときんときの寿命問題って解決したの?」
br 「ぁ、、」
寿命、と言うワードを聞いてピンとこなかったわけじゃない。
意味もわからず連れて行かれた彼岸。
彼岸にきた俺を一瞬悲しそうな瞳をしたスマイルの顔、最近感じていた気怠さ。
もしそれが「寿命」に関係していたら、、、?
nk 「隠してもしょうがない。全部話すよ」
sh 「俺ときんときの寿命が短かったから、、、、彼岸にってことか。」
kn 「でも無事に帰ってきたってことは短いことには変わらないってこと??」
kn 「あとの短い人生は楽しんでくださいってことなのか、、、」
本当にそうなのか?
それだと帰ってきたことが無意味に等しくなるんじゃないか?
俺はここにいていい存在なのか、俺の居場所はいったいどこになるんだろう。
、、、あぁ。スマイルもずっとこんなことを感じていたのかな
ズキンッ
kn 「ゔっ、、」
sh 「っ、、、」ゲホッゲホッ
br 「ちょ、ふたりとも大丈夫??」
胸がいたく熱い感覚に思わず声が出た。
じわじわと全身に広がる暖かさで体が軽くなっていく。どこか懐かしい香りと声が聞こえた気がした。
kn 「、、すま、、いる」
あぁ。全てを察してしまった。
スマイルは元から帰るつもりなんてなかったんだ。俺たちを助けるために嘘をついたんだ。
それはここにいる4人がすぐに理解することができていた。
sh 「ぃやだ、、、こんなのあんまりだ」ケホッ
sh 「いっそのこと、俺が死ねばっ」
nk 「それ以上言ったら頭引っ叩くよ。」
nk 「どんな結果になろうと、受け止めるって決めてたんだ。それにスマイルのことだからたくさん考えて結果を出した」
nk 「それを踏み躙るような言い方しちゃダメだ。絶対に。」
br 「、、、多分きりやんがいちばん悔しいんだよ。今日はもう帰ろう。」
こんな形で彼の行方を知ることになるのが、なんとも不甲斐なくて、複雑な気分だった。
認めたくない。
でも生きなきゃ。
いや、、、生きたいと願わなきゃ。
…………………………………………………*
〈kiriyan side〉
ふはっ、と空気と笑みが混じる音がした。
俺は彼の顔を見ることができなかった。一体どんな顔をしているだろうか、そんなことよりもこの気持ちがちゃんと受け取ってもらえるかの不安感が襲った。
sm 「きりやん、、ちかくにおいで」
俺はこの扉からそちらにいけないから。といつも通りに話す彼のもとに足を運べばきっとお別れになる。
でもそんなことで躊躇して時間を無駄遣いするようなことはできなかった。
俺は彼との最後の時間を少しだけでも味わいたい。
〈smile side〉
好きだと伝えられた時、今まで感じでいた孤独感がじんわりと熱を持った。それと同時に、もうこれ以上依存してはいけないのだと悟った。
きんときが彼岸に来た時に触れたときも俺には体温がなかったし、彼岸の水で足が疲れるなんていう水圧すらも、もう感じなくなっていた。
それは俺が生身の人間じゃないことと、彼岸の生活に適応してしまっていることを表していたんだと思う。
だから嬉しさと、失望が一緒にして口から出た。下を向いたまま久々に感じる熱が目頭に集まっているのを理解して、これが涙だと認識した。
sm 「きりやん、、ちかくにおいで」
今にも泣きそうな彼の瞳は本当に綺麗だった。病院にあるとされる俺の肉体と重ねることもなく、純粋に魂である俺だけを視界にいれて、俺に熱を分けようと抱きしめてくれた。
kr 「ごめん、、、助けられなくてごめんっ」
sm 「そんなこと言うな」
sm 「きりやん」
俺がその名前を呼べば、再び俺をその瞳に閉じ込める。
あぁ、綺麗だ。
その柔らかな髪も、必死になったことを表す乱れて汚れた制服も、温もりを持つその手も、震える艶めく唇も。
チュッ
ぴくりと反応するその身体がとてもかわいらしいと感じた。
あぁ。もっと早く気づけていたのなら
俺は名残惜しそうに熱から離れた。
俺の夏はきっともうここまで。
だから最後に呪縛の念を残した。
sm 「きりやん、、、もし数年後もずっと俺のことが好きならーーーー。」
これは約束でもない。誓いだ。
sm 「ふぅ、、、。」ゲホッゲホッ
流石に半分の体力を使うと負荷が酷い。
長 「すま、、、いる、?」
sm 「、、、最期に聞かせてくれ。」
sm 「ここまでして何故俺を助けた」
乾いた笑い声が静かに水を揺らす。
長 「、、、久しかったんだ。」
sm 「ん?」
長 「あんなふうに笑い合える相手が、、
久くて、僕はまだ、、心は死んでないって」
確かめたかった、と
ありがとう、という言葉は音になっていなかったが口の動きで読み取れた
月へと帰るその眩い光は、夏の朝日に照らされてまるで夏に降る雪のようで、その非現実的な景色が俺を天へと誘う。
あとは、ふたりを送るときに触れた胸を介して寿命の引き継ぎを行うだけ。
きっときりやんならやってくれる。
大丈夫。俺はひとりじゃない。
朝日が永遠に昇らない、
厚い雲に覆われたこの学園も。
みんなで過ごした朝のぐーたらとした時間も。
あの昼ごはんの賑やかさも。
夜は冷たく静かな場所で瞳を閉じていたのも。
全部が全部、この俺を作り上げてくれた。
ほら、
もう大丈夫、、、、、、。