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森くん×ちょんまげ
あの時、二人が話し合えていたら
⚠捏造を多く含みます。両思いEND想定ですが、現時点での森→ちょん要素有!
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助けようと会った友達は、僕に対して刃を向けてきた。誤解故の行動とはいえ正直ショックだった。なんとか誤解を解いたは良いものの、あのまま彼の興奮状態が続いていたら僕の身は…と思うとぞっとする。
なにより、ナイフを握る手が震えているのを見るのが心苦しかった。だから彼の手からナイフが抜け落ちた時、僕は心底安心した。
誤解を解いたあと、「ごめん」と泣きそうな顔で何度も言われた。「ありがとう」とも言われた。彼は、当たり前だけど僕の知っている姿よりずっと大人になっていて。寂しいと思った。でも前髪を縛った変な髪型も、眉を下げてくしゃりと笑う顔も、僕の名を呼ぶ優しい声色も、変わっていないところもいくつかあって。嬉しさもあった。
けれどやっぱり、彼の根幹は変わっていたみたいだ。聞けば猿橋さんの来訪がきっかけらしい。努力をして変わった彼女を見て、自分の罪と向き合い続けることにしたのだとか。僕の知らない今日までのことを、彼は全て教えてくれた。償いたいと言っていた。許されようとは思っていないとも言っていた。声は落ち込んでいるようにも聞こえたけど、そう語る彼の瞳には、たしかに決意が宿っていた。
ずるいと思った。僕はあの頃から止まったままなのに。僕はずっと、あの頃の君達に囚われているのに。僕がホームページに書き込みを続けていた間にも、きっと彼は前に進んでいた。前を見ていた。そしてその先には、きっと昔みたいにキング達がいるのだろう。
また僕を置いていくの、ちょんまげ。ずるい、ずるいよ。君の方が僕よりずっと悪い子だったのに。どうして僕より先に行っちゃうの。どうして僕を置いて変わっちゃうの。
君は友達欲しさに人にいじわるをする弱いやつで、ダメな子で、悪い子で。君はそういう子だったはずなのに。それなのに嬉しそうに笑った顔は眩しくて、一緒にいると心が軽くなって、憎めなくて。ほんとはいじめを悪いことだって分かってて、悩んでたのも僕は知っていて。今だって、僕に向けてくれる目はあの時と変わらず優しい。ずるいお人好しの目。その僕を見る目が、僕に向ける顔が、呼びかける声が、僕を狂わせたとも知らないで。
「…森くん?」
彼の声で我に返る。気づけば彼の腕を掴んでいた。ちょんまげは目を丸くして僕を見る。慌てて手を離そうとしても、体が言うことを聞かない。逃がしたくない。僕だけを見て欲しい。これじゃまるで、僕が子供みたいじゃないか。
「森くん」
優しい声がする。
「僕、君にも償いたい」
きっと森くんを、長く苦しめただろうから。彼はそう付け足す。ちょんまげには全て見透かされていた。僕が変われないことも、それに苦しんでいることも。置いていかないで欲しいと、子供じみた感情を捨てられないことも。だからこうして、僕に精一杯寄り添おうとしてくれている。やっぱりそういうところは変わらない。縋られたら見捨てられないんでしょう。そうやって昔の面影を見せて僕を囚われたままにするのも、君のずるいところだよ。
「じゃあ、お願いしたら抱かれてくれるの」
僕は最低な質問をした。ちょんまげは声は出さずとも、また目を丸くして驚いた。当然だ。きっと彼は、僕が拗らせている恋心になんてちっとも気づいていなかったのだから。パソコン室に行ってはくだらない動画に夢中になって笑ったことも、学校を欠席した次の日貸してくれたノートの字が綺麗だったのも、ある日突然前髪をくくってきて、「いいんじゃない」と言うと嬉しそうに笑った無邪気さも、大人になって学校にキング達とやって来て、僕に気づいた時のあの顔も。僕は一つも忘れてない。恋人になって、と言わないのは、僕なりの誠意だ。多少歪んだ誠意かもしれない。
この願いにちょんまげがYESと答えても、それは罪悪感だとか、償いだとか、同情だとか。僕の願いを無下に出来ない彼の優しさ故だ。その関係が続いても、僕もちょんまげも傷つくばかりだと言うことも分かってる。それでも、君が一時的にでも僕だけを見てくれるなら。僕だけのものになってくれるなら。その優しさにつけこんでやろうと思った。
「いいよ」
随分間が空いて返ってきたのは、短い一言だった。僕に言われた言葉を受けて、彼は何を思っただろう。少し震えていたように感じたのは、まだ微かに残っている僕の理性からだろうか。
「森くんなら」
そう言うと、また変わらない笑顔を見せた。僕を見る目もまた、変わらず優しい。胸がズキリと痛む。その痛みも知らないふりをして、ちょんまげを見る。きっとちょんまげは、償いというていであればどんな我儘でも聞いてくれる。いつまで経っても変われない僕のお遊びに付き合ってくれる。だとすればなんて健気な人なんだろう。彼への黒く濁った感情が、また質量を増やした。黒色のクレヨンでぐちゃぐちゃに塗りつぶしたかのような、幼稚な感情。それすら受け入れようと努力する彼のそれは、優しさと言うべきか、弱さと言うべきか。
「あれ、冗談だった?」
「…え?」
「いや、なんにも言ってくれないから」
僕が物思いにふけている間は、ちょんまげにとっては苦痛だったらしく。少し気まずそうに顔を覗かれる。冗談だったら恥ずかしいこと言っちゃったな、と言うと彼はぎこちない笑みを浮かべた。微かな期待と不安が混じった瞳で僕を見つめる彼に、僕は笑って言った。
「冗談だったら良かったのにね」
そう言う僕の顔は、君の目にはどう映っていただろうか。
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初めての小説なので読みにくい所もあったと思いますがありがとうございました!私が書きたかっただけの話です。リクエスト、感想あればよろしくお願いします!!
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