テラーノベル
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数日後。
mtk side
病室の天井は、あの頃と同じ白だった。
僕は目を覚ました瞬間、
全身が強張るのを感じた。
「…大丈夫。」
最初に聞こえたのは、涼ちゃんの声だった。
ベッドの横に椅子を寄せ、眠らずにいたらしい。
医師の説明は淡々としていた。
強い精神的ショックによる自律神経の乱れ。
乱雑に扱われた故の節々の軽い痛み。
そして、僕は人生二度目の
サブドロップを経験したらしい。
命に別状はないが、しばらく安静が必要だと。
「ッ…す、すいませ、ッ…」
僕は何度も謝ろうとしたが
言葉が喉で止まった。
なぜか目は涙でぼやける。
代わりに涼ちゃんが言った。
「元貴は何も悪くない。ちゃんと逃げてきた」
その言葉で、初めて呼吸が深くなった。
若井は病室の隅に立っていた。
視線を合わせない。
僕がそれを望んでいないと、わかっているからだ。
〜
wki side
俺は、自分が「Dom気質」であることを
ずっと自覚していた。
主導権を握ること。
場をコントロールすること。
それは音楽の現場では強みだった。
だが、人に向けるものではない。
中学時代、元貴が壊れていくのを
俺は遠くから見ていた。
何もできなかった。
近づけば、余計に追い詰める気がした。
だから距離を取った。
守るために、離れた。
俺は元貴に触れない。
指示もしない。
「大丈夫か?」とすら言わない。
それが、俺なりの抑制だった。
元貴がこちらを見てくるのが分かる。
俺は決してそっちを向かない。
少しでも抑えられなくなったら
今までの意味が無くなってしまうから。
〜
mtk side
退院後、僕はしばらく涼ちゃんの家で
過ごすことになった。
夜になると、不安が波のように押し寄せる。
涼ちゃんはそのたびに、ただ隣に座った。
触れない距離で、同じ音楽を流し
同じ空気を吸う。
若井は頻繁には来なかった。
だが、必要な時には必ず姿を見せた。
ある夜、僕がぽつりと聞いた。
「…怖くないの?」
若井は少し考えてから答えた。
「怖いよ。だから、ちゃんと抑えてる」
それは命令でも、支配でもなかった。
ただの正直な言葉だった。
「…元貴こそ、怖いだろ、俺のこと」
その声は、どこか寂しそうだった。
僕はすぐに答えた。
「うん。怖いよ。」
「ッ…、そっか。」
どうしてそんな顔をするの?
どうしてそんなに傷付いてるの?
ねぇ、若井。
まだ僕の返事、終わってないよ。
「でもね、大好きだよ。」
「支配されるのは嫌い。怖いし、
自分が何者なのか分からなくなる。」
「俺と居たら、いつか
そうなるかもしれないんだぞ」
それでも、
「それでも僕はいいの。
だから、勝手に離れていかないでね。」
コメント
2件
めっちゃ好きですぅぅぅぅぅぅぅぅ 続きも楽しみです