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#ご本人様とは一切関係ありません
KamassKRRR (くらリ
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滝に深澤と岩本を送り届けて、阿部と佐久間はふーちゃんに乗ったまま芙蓉の許に戻っている。
💚「佐久間……俺のお願い、憶えてる?」
🩷「……もちろん」
それは、阿部から話があると切り出された時。
◆
💚「俺の異能を、佐久間に託そうと思う」
🩷「にゃ……? それって、どういう……」
💚「俺の精神を電気信号にして佐久間に移して、佐久間の能力を最大限まで引き上げる。一部だけど俺の異能も使えるようになるよ」
🩷「え、そんなことできるの!?」
💚「芙蓉と戦うのが分かったから、できるようにしたの」
🩷「さっすが阿部ちゃん! この短期間で凄いな」
💚「でもこれは、そう簡単に使えるものじゃない。その一回に全てを掛ける」
🩷「……うん」
阿部の物言いに、それがどれだけ危険なものかは理解した。本当なら止めたい。ダメだと言いたい。けれど、言える雰囲気ではなかったから頷いた。
◆
それを、今からやるという事なのだろうと思った。
💚「着いたら、ふーちゃんから落ちたように見せかける」
🩷「……へ?」
何を言っているのだろうか。
そんなこと、できるわけがない。
💚「佐久間なら着地できるでしょ。地面に到達する直前で粒子転移したら大丈夫」
🩷「え……いや、ちょっと待って! え、なに? ふーちゃんから落ちる? ごめん、言ってる意味がわかんない」
今、阿部は佐久間“なら”と言った。では、阿部は? 着地できないのは目に見えている。いや、普段の阿部なら可能なのだ。電磁浮遊で浮く事が出来る。
けれど、そうではないのだと阿部は物語っていた。
💚「この力は、対芙蓉の切り札だから、俺がその能力を使うのを、芙蓉に悟られたくない……気絶したように見せたいんだ。だから佐久間。何があっても、俺を助けないでほしい」
🩷「……っ!」
それは、佐久間にとって苦渋の決断だった。
とても仲が良くて、親友と呼べる間柄で、一緒に旅行もする仲だ。気兼ねなく一緒にいられて、お互いに気を遣いつつもゆったりと過ごせる相手。
その阿部を、助けないという選択肢は佐久間にはない。
🩷(本当に芙蓉の目的は願いを叶えることなの? もしかしたら違ってて、そんな危険なことをする必要、ないんじゃない? いやでも、阿部ちゃんの胸の花はどうにかしなきゃだし、芙蓉が阿部ちゃんのこともふーちゃんのことも狙ってるなら倒すか捕まえるかしなきゃいけない……いや、でも)
葛藤が頭の中をぐるぐると巡っている。
それでも、佐久間がすることは一つしかないのだ。
その笑顔を、曇らせてはいけない。ずっと、阿部は覚悟をしていたのだろう。この一週間で考えて出した結論なのだろう。
だから、佐久間は応えるだけだ。
🩷「……わかったよ……俺も全力で、やる」
だから佐久間も微笑んだ。
精一杯の笑顔を向ける。
💚「ありがとう、佐久間」
ぎゅっと、手を繋ぐ。
大丈夫だと、お互いに確かめるように。
💚「いた」
眼下に見えるのは、木の枝に追われている五人の姿と、優雅に立っている芙蓉。
💚「いくよ、佐久間」
🩷「……にゃす!」
ふーちゃんを見つけたからか、追いかけて来る無数の枝。それらを避けながら飛んでいるふーちゃんの背中で、阿部の目が翠色を帯びる。
💚「BOOST」
電気が体の中を駆け巡る感覚があり、途端に佐久間の視界がクリアになる。と同時に、繋いでいる阿部の手から力が抜けたけれど、佐久間は手を離さなかった。
阿部の意図を理解しているふーちゃんが旋回して、意識のない阿部の体が落ちていっても、それは変わらない。離せる筈がなかった。
🩷(ごめん、阿部ちゃん。助けないって言ったけど、やっぱ無理だよ。それに今、俺が手を離すのって絶対変だ。怪しまれないようにするには、こうした方がいいよね?)
言い訳のような事を思いながら、共に地面に向かって落ちていく。
すぐ近くにいる筈の目黒の姿を探しながら―――居た。
🩷「きっと蓮なら受け止めてくれるハズ。頼んだぞ、蓮」
落ちていても尚、追いかけて来る木の枝を見据えて、佐久間は阿部に向かって来る枝を蹴りつけ、そこでパッと手を離した。わざとらしくならないように、攻撃のせいで手が離れてしまったかのように。
🖤「……っ?! 阿部ちゃん! 佐久間くん!」
何十メートルも上空から落ちて来る、阿部と佐久間の姿に息を呑んだ。
佐久間なら、落ちたと同時に粒子転移で地面に降りられる筈なのに、どんどん二人の姿が近づいてきている。
何故、どうして。
混乱する頭でその姿を見つめていると、佐久間が枝を蹴りつけ、その間に阿部だけが落ちてきているのがわかった。
🖤「阿部ちゃん!!!」
有りっ丈の声で叫んで、すぐに蔓を向かわせた。阿部の体をしっかりと捉えて勢いを殺し、ゆっくり降りてきた阿部を目黒が横抱きで受け取ると、ラウールと渡辺もすぐに駆け付けた。
🤍「阿部ちゃん!」
💙「しっかりしろ!」
阿部はぐったりとしたまま、目黒の腕に抱かれている。
粒子になって移動し、降りてきた佐久間は目黒に助けられた阿部の姿を見て、ホッと胸を撫でおろした。そして、目の前にいる芙蓉を見据える。
🩷(阿部ちゃん……阿部ちゃんってホントに凄いんだね。これだけの情報を見て、その中からいつも俺たちに必要なものを選んで伝えてくれてたんだ)
今、佐久間の目には様々な物の情報が視えている。
説明文が勝手につくように、木の種類や樹齢、花の名前や特徴などが詳細に記されていて、それは芙蓉についても同じだった。身長や年齢、芙蓉の性格や異能についてまで詳しく書かれている。
これが普段、阿部が電脳空間で見ているものなのだろうか。
🩷「芙蓉。阿部ちゃんの胸の花、解除してもらうよ」
「わたくしを止められたら、考えて差し上げますわ」
🩷「余裕だね。その余裕、いつまでもつかな?」
スッと消えた佐久間の右足が、次の瞬間には芙蓉の体を蹴っていて、衝撃に芙蓉が吹き飛んだ。
🩷「みんな! 阿部ちゃんのこと、よろしくね。あいつは俺に任せて」
🤍「え? ちょ、佐久間くん!?」
佐久間はそれだけを言い残して、ラウールの制止を聞かずに芙蓉の許へ向かう。
阿部の電気の力を使って、地面を蹴る時に磁力の反発する力を使うと、あっという間に数十メートル進むことができる。粒子化する必要がない分、こっちの方が消費するマテリアは少ない。阿部は電気の異能を使うと疲れると言っていたけれど、それは佐久間には適用されないらしい。
🩷(阿部ちゃん、ホントはこんなこともできちゃうんだ……普段、電気の異能をあんまり使うことないから、知らなかった)
恐らく、本気で戦ったら佐久間は阿部に勝てない。
直情的な佐久間とは違って、本気の作戦を立てた阿部は一枚も二枚も上手だ。そこにこの能力が合わさったら最強なのではないだろうか。
🩷(ま、俺と阿部ちゃんが戦うことなんてないんだけどね)
共通点はなくても気が合うし、考えていることが手に取るようにわかる時もある。佐久間は阿部に気を許しているし、ずっと一緒にいたいと思える存在。
だからこそ、芙蓉には腹が立っている。神奈川で阿部が13階から落とされたと聞いた時、血の気が引いた。あのまま阿部が死んでいたらどうするのかと。機転の利く阿部だったから大丈夫だっただけで、他の者だったら対応できていたか―――。
だからこそ、ここで決着をつける。
芙蓉の背後に回り込み。
🩷「阿部ちゃんに手を出した事、後悔させてあげるよ」
滝のギリギリのところに人ひとりがやっと歩けるという道がある事に気が付き、歩いて行けば大きな洞窟が確かに存在していた。
トラックでも通れそうなほどの広さの洞窟は、坑道とかに近いかもしれない。
中に入って歩いて行くと、行く手を阻むのはネズミとコウモリの大群で、燃やすわけにも傷つけるわけにもいかないので、全てを叩き落として先へと進む。
💜「いやぁ、あんなにいるとさすがにぞわっとすんね」
💛「虫じゃないだけいいけど」
💜「照、そういうのフラグっていうんだよ?」
💛「あ」
慌てて口元を抑える。
動物相手ならいいが、あれが虫の大群だったら岩本も深澤も間違いなく叫びながら逃げ帰っている。一匹見つけただけでも大騒ぎなのに、大群で来られたら気絶する自信もある。
そうして奥まで向かっていると、ただでさえ広い通路だったのに、それを更に超える巨大なドームがその姿を現した。
洞窟内だというのに仄かに明るいその場所。蛍のような光が飛んでいる大きな蕾が中央にあり、その周囲には小さな草花が咲き乱れている。
💜「思った感じと違うね」
💛「まあ、綺麗だろうが何だろうが燃やすけどな」
💜「容赦ないねー」
💛「ずっとモヤモヤしてんだよ。阿部の胸の花。お前だってそうだろ?」
💜「まあね。あんな手の込んだことしておいて、何もないわけないからね」
だからさっさと終わらせたいと、手に炎を纏わせる。これで触れれば一発だと蕾に近づいた時、地面がボコッと盛り上がった。
💜「照!」
慌ててバク転して回避をすると、岩本が立っていた場所に現れたのは背中に長い棘のある動物だった。
岩本も深澤も唖然としている。
💜「えっ、なんだあれ。ハリネズミ、じゃないし」
💛「あれじゃね? えっと……ヤマアラシ?」
あのくらいなら大丈夫だろうと思ったのだが、ボコッ、ボコッと次から次へと地面からヤマアラシが出てくる。体長は1メートルないくらいだけれど、それが30匹以上いるので、蕾に近づけない。
💛「くそっ。あと少しだってのに!」
💜「あれだって普通の動物じゃん! もー、攻撃できないっての!」
岩本が威嚇用にヤマアラシの足元に火を放つけれど、あまり気にしていない様子のヤマアラシがこちらに向かって突進してきた。
💛「ヤバッ」
💜「可愛いのに、なんなんだよ!」
途中まで突進してきたかと思うと、急にぐるんと後ろを向き、棘を逆立てて更にこちらに突進してくる。
ギリギリでかわしたけれど、針の一本が服を貫通しているのを見て焦りの色が浮かぶ。
💜「うへ。当たったらいたそー」
💛「火にもビビらねえし、ふっかの鋼じゃケガさせちまうし……」
そうして話している間にも、ヤマアラシは針を刺そうと突進してくるので、避けるので精一杯だ。これを突破していこうにも、伸びた針は意外に高さがあって、ジャンプで飛び越えるのは難しそう。
こうなったら。
💛「ふっか、飛ばしてくれ! 突破する!」
💜「おっけー! 一旦、周囲を開けるよ!」
自分の周囲に膝下ほどの低い鋼の壁を作って、それをどんどん外側に向かわせると、迫って来る壁に気圧されるように距離を置くヤマアラシたち。
💜「いいよ、照!」
手のひらを重ねて膝を曲げ、体制を整えると岩本が走って来る。左足が深澤の手に乗ると、勢いよく中心部に向かって岩本を飛ばした。
岩本の手には炎。
天井の穴から月の光が差し込んで蕾に当たると眩いほどの光が蕾から溢れ出して、目を開けていられなくなって岩本は地面に落ち、深澤も腕で顔を隠す。
意識のない阿部を抱きしめながら佐久間と芙蓉の戦いを見ている目黒だったが、不意に、その腕から阿部の重さがなくなった事に驚いて阿部を見る。
🖤「あ、阿部ちゃん……?」
その胸に咲く月下美人の花が、キラキラと輝いて眩い光を放っている。けれどそれだけではない。阿部の体が、地面と水平のまま浮き上がっている。
🖤「阿部ちゃん!」
慌てて手を伸ばしたが、阿部に触れる前にバチッと強い静電気が起きたみたいに弾かれてしまって触れない。
その光景を、渡辺も、向井も、ラウールも、宮舘も、芙蓉と戦っていた佐久間も見ている。
❤️「阿部!」
🧡「うそ、なんでなん!?」
🤍「阿部ちゃん!!」
どんどん空へと上がっていく阿部を、止める術がない。
🩷「な、何で、急に!?」
「ようやくですわね。この時を待っておりましたのよ」
ふわりと、浮き上がる芙蓉。
🩷「あ、待て!」
このまま芙蓉を阿部に近づかせるわけにはいかないと向かおうとして、でもできなかった。佐久間の体も四肢も太い枝に絡めとられている。
それは他の五人も同じで、異能を使おうとすると締められるので、異能を使っての脱出もできない。
上空に、木の枝が重なって網が出来上がり、阿部の体が横たわる。そのすぐ傍まで浮き上がった芙蓉が、嬉しそうに愛おしそうに阿部を見つめる。
「もうすぐですわ。もうすぐ、願いが叶いますのよ。さあ、亮平様。あなたの願いを教えてくださいませ」
芙蓉が、阿部の胸の月下美人に触れる。
🖤「やめろー!!!!」
目黒の声が響き渡る。
すると、芙蓉が動きを止めた。その顔は途端に険しくなり、そして「フフフフッ!」と楽し気に笑う。
何が行われているか分からないみんなは眉を顰めるだけだ。
「やってくれますわね、亮平様。これでは、願いを叶えることはできませんわ。全てが囮だなんて思いませんもの。本当に、賢いお方」
一人で納得したような芙蓉の言葉に、目黒たちは顔を見合わせている。
🩷「え、なに、どゆこと?」
🧡「何がどうなってるかわからへん」
❤️「よく分からないけど、芙蓉の願いは叶わないって、こと?」
誰も、何一つ理解ができていないけれど、芙蓉の様子を見ると、芙蓉の目的は達成できないという事だけは理解できる。
「ああ、残念ですわ。これでは、おまじないの効力が発揮されないもの。もう、この月下美人は使えませんわね」
阿部の胸の花に芙蓉が触れると、月下美人は光の粉になって消えていった。
「今回はわたくしの負けですわね。けれどおかげさまで、とても素敵な出会いと収穫がありましたわ。亮平様も、皆さまも、大変素晴らしいご活躍でした。またどこかで、お会いいたしましょう」
そう言って阿部から離れると、芙蓉は眼下にいる皆を見て。
「それでは、ごきげんよう」
スカートをつまんで上品なカーテシーを披露し、雲が月を隠すのと同時に芙蓉は闇の中へと消えていった。
そして、芙蓉が消えるとふーちゃんに乗った岩本と深澤が駆け付けた。
💜「みんな! 無事!? って、全然無事じゃないね!」
💛「ちょっと熱いけど我慢しろよ!」
そう言って岩本はみんなの体に巻き付いている枝に火をつける。
🩷「うおっ! あちっ、あっちい!」
🧡「ちょお、照兄、雑すぎひん?!」
💛「だから、我慢しろって!」
炎は枝のみを焼き尽くし、動けるようになると宮舘がすぐに枝に捕まっていた六人を冷気で覆う。
みんなが解放されたのを見て、深澤が阿部の寝ている枝の網に乗ると阿部の体を抱き上げ、ふーちゃんの背中に戻った。そしてゆっくりと地上に向かい、ふーちゃんの背中から降りると皆が駆け寄って来る。
🖤「阿部ちゃんは?!」
💜「胸の花は消えてるね。でも、心臓の鼓動が弱い」
🩷「あ、それなら大丈夫」
佐久間が阿部の額に自分の手を置き。
🩷「save your heart」
すぅっと佐久間の体から緑色の光が阿部の体へと流れ込んでいく。そして、ピクリと阿部の眉が動き、ゆっくりと目が開いた。
💜「阿部ちゃん」
🧡「阿部ちゃぁん!」
🤍「阿部ちゃん!」
思わず飛びついてくる向井とラウールに。
💜「おわっ!」
耐えられなかった深澤は阿部を抱いたまま後方に転がり、後ろにいたふーちゃんのおかげで倒れることはなかったけれど、阿部、向井、ラウールの三人がのしかかっている状態になっている。
💜「お前らな、嬉しいからって急に来るな!」
🖤「ちょ、二人とも離れて! 阿部ちゃんが潰れる!」
向井とラウールを乱暴に引きはがす目黒。
🧡「ごめんなぁ、つい、嬉しくなってもうて」
💙「阿部ちゃん、大丈夫か?」
💚「う、うん。大丈夫……全部、終わった?」
❤️「終わったよ。芙蓉はいなくなった」
💚「……そっか……良かった……」
💛「阿部も無事だったことだし、帰るか。詳しい話は、また明日だな」
🤍「だね。もー、くったくたー!」
💜「じゃあ、みんなふーちゃんに乗って。帰って寝よう!」
おー!と団結するみんなは、先ほどまで戦っていたとは思えないほどに和やかだった。
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