テラーノベル
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その日の放課後。新一が「野暮用で先に帰る」と言って教室を出て行った直後、快斗のスマートフォンがポケットの中で短く震えた。
『今、工藤の学校の裏の喫茶店におるわ。ちょっとツラ貸せや、大泥棒さん』
メッセージの主は、昨夜の命の恩人(?)である服部平次。快斗は苦笑しながら鞄を掴むと、学校の裏手にある目立たない純喫茶へと向かった。店の奥のボックス席、キャスケット帽を深く被った平次が、メロンソーダのストローを咥えながらニヤニヤと快斗を待っていた。
「よっ、お出ましやな。昨夜はどーも、怪盗キッド様?」
「声がデけぇよ、西の探偵さん」
快斗は平次の向かいの席にドカッと腰掛け、やれやれと肩をすくめた。
「……まぁ、昨夜のことは感謝するよ。お前があそこで転んでくれなきゃ、マジで俺の顔面が白日の下に晒されて完全に詰んでたからな」
「せやろ? 高級寿司の詰合せ、期待して待っとるわ」
平次はガハハと笑うと、急に真面目な顔になって机に身を乗り出してきた。
「それにしてもお前ら、なーんかえらいことになってるやんけ。工藤の奴、大阪におる俺にまで『キッドにハッキングされてる! 俺の恋愛相談が全部バレてる!』って大パニックで電話かけてきおったぞ。……お前、あいつに何したんや」
「何したって……ちょっと、ハッキングされたキッドからのメッセージ(自作自演)を送っただけだよ」
快斗はメニュー表をいじりながら、思い出すだけで耳の後ろが熱くなるのを隠すように視線を外した。
「そしたらアイツ、俺(キッド)への返信に『俺が本当に隣にいてほしいのは黒羽なんだ。お前が黒羽ならよかったのに』なんて特大の爆弾投げてきやがって……。それで今度は俺(快斗)がリアルに悶絶して、教室からトイレに逃げ出す羽目になったんだよ!」
「ぶっははははは!! お前ら最高やな!!」
平次は机を叩いて大爆笑した。ひとしきり笑い転げた後、平次は呆れたようにため息をつく。
「いや、ホンマさ……もう正体言っちゃえばいいやろうに。」
「……は?」
「だってそうやろ? 工藤は『キッド』のことも気になってしゃあない上に、目の前におる『黒羽快斗』にも完全に心臓かき乱されとんのや。あいつの脳みそは今、お前一人に完全に支配されとる。お前が『俺がキッドや』って一言言えば、あいつ一瞬で降伏して、お前の腕の中に飛び込んでくるで?」
平次の真っ直ぐな言葉に、快斗は言葉を詰まらせた。言えるものなら、今すぐにでも言いたかった。目の前で真っ赤になって「お前がキッドならよかったのに」と呟く新一を、その場で抱きしめて、全部俺だよと教えてあげたかった。快斗はスプーンでグラスの氷を小さく叩き、ぽつりと溢した。
「……言えるわけねぇだろ。俺が怪盗をやってる本当の理由(わけ)を、あいつに背負わせたくねぇんだよ」
「組織、の件か」
「ああ。あいつは探偵だ。あいつには、光の当たる場所で、ただの高校生として俺を追いかけてきてほしい。……それにさ」
快斗はふっと、大怪盗キッドとしての、そして一人の少年としての、酷く切なくて甘い笑みを浮かべた。
「正体がバレないギリギリの境界線で、あいつが俺(キッド)に恋をして、俺(快斗)に嫉妬して、無自覚に振り回されてるマヌケなツラ……あれ、めちゃくちゃ可愛いんだよ。もうしばらく、この特等席でじっくり鑑賞してたいじゃん?」
「うわ、うわあ……。大泥棒さん、やっぱり性格悪っ……!」
平次は本気で引いたような顔をして身を引いた。
「工藤が不憫でしゃあないわ。あいつ、今も『黒羽のスマホがハッキングされてるかもしれんから、これから学校では筆談にする!』とか言うて、鼻息荒くノート買いに行っとったぞ」
「は!? 筆談!?」
快斗は思わず目を見開いた。
「せや。お前がキッドの代わりに工藤をドキドキさせる言うたから、あいつ余計に意識しとんのやろな。……ま、正体隠すんはええけど、あんまり工藤をいじめんなや? あいつがあんまり可愛そうやったら、俺が大阪から『黒羽がキッドやで』ってバラしにきてもええんやからな」
유리
6
201
「おい待て、それだけは絶対にやめろ!!」
ニヤニヤと笑う平次に、快斗は本気で焦って身を乗り出す。夕暮れの喫茶店、二人の少年たちの悪巧みのような、けれどどこか温かい会話が響く。快斗はポケットの中のスマホに触れた。新一が今頃、自分のために必死にノートを選んでいる姿を想像するだけで、また胸の奥が愛おしさでいっぱいになる。
正体を明かさない光と影のゲーム。けれど、その主導権を握っている大怪盗が、一番探偵に溺れているのは、紛れもない事実だった。
コメント
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うわああ第18話も神だった〜!!😭💕✨ 服部くん登場でさらにカオス度増し増しやん!!「筆談する」ってマジで言い出した工藤くんの全力回避ムーブ、想像しただけで尊すぎて悶える…!! でもそれ全部キッド(快斗)の掌の上ってのがまたズルいよな!!「可愛いからもっと見てたい」って最高のポジション取りじゃない?笑 そして最後の「一番探偵に溺れてる」って一文に全部持ってかれた…この二人、永遠にこの駆け引きしててほしい…!! 次話も待ってます🌸🔥