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夏祭り
海斗を夏祭りに誘おうと言ったものの、あんなこと口にしといて普段と同じように話して
いいのやら。心のなかでうずうずしながら登校する。変な気持ちだ。
と、思っていると、海斗が門の前で誰かを待っていた。流石に私では無いだろう。
そう思ってゆっくり歩いて向かった。
「おはよ!由香。」手を振られて私だったって事に気づいてから、走って海斗の方へ
向かった。
「おはよう!海斗。」
海斗は私の顔を見て微笑んだ。
どきっ。あれ?なんだろうこれ、よく分からない感情が浮かんでくる。
「行こう、由香。」
海斗といるとどきどきする。安心感がある。今までとは違う感情が浮かんでくるのだ。
「う、うん!」
こんな感情な自分に思考が空回っていた。
どうしよう、言おうかな、夏祭り行こうって。いや、でもどんなふうに言えば、うーん。
でも言わなかったらこのうずうずはおさまらない。ちゃんと言わなきゃ。
「ねぇ海斗。」
海斗はこっちを見て「何?どうした。」と答える。
どきどきしながら私は勇気を振り絞って言葉にした。
「今週の土曜日に夏祭りがあるんだけど、よかったら一緒に行かない?」
なんて答えるかな。断れるかもしれない。言い方失敗してるかも。大丈夫かなぁ。
海斗の方を見ると海斗は今まで見たことのないような眩しい笑顔でこっちを見ていた。
「うん!行く。一緒に行こう。」
喜んでもらえたのかな。そう思うと肩の力が抜けた。
「何時集合にする?浴衣でくる?」
海斗はすごく嬉しそうに話を進めていく。楽しみにしてくれてるのかな?良かったぁ。
「花火が9時からだから7時くらいで良いんじゃない?」
そう答えると微笑みながら「うん!良いよ。」と答えてくれた。
浴衣かぁ。どうしようかな、海斗がどっちでくるかで私も決めようかな。
「海斗は浴衣で来る?」
海斗は悩ましい顔で考えていた。
いつの間にか私はずっと海斗の方を見ていた。
透き通った麗しい瞳、やさしい声、顔つき、全てに見惚れていた。
海斗はこっちを振り向く。どきっとして顔を背けた。穴があったら入りたい。
「浴衣で来ようかな。」
浴衣で来るのか。じゃあ私も浴衣で行こうかな。でも浴衣ってどう着るの?着たことない
からな。少し考えて海斗に答えた。
「じゃあ私も浴衣で来ようかな。」
海斗は微笑んだまま前を向いて歩き出した。
教室に着くと真由ちゃんはもう来ていて、女子グループと一緒に雑誌など菓子などを
食べていた。
海斗が教室に入った瞬間に皆机の周りに集まって来るのだ、もちろん真由ちゃんもだ。
いつもの光景で慣れているものの、やはり海斗は私の方へと向かってくる。
「由香。さっきぶり!」
私は真由ちゃんに言われたことを思い出してぞくっとした。
真由ちゃんの視線、というか女子グループ全員の視線がこちらへと向いている気がする。
これは危険だ。早く何か言わないと、海斗が危険な目に合うかも。
「そうだ。先生に頼み事があるんだ。」
海斗は微笑んでこう答えた。
「俺も一緒に行こうか?」
ついてきてほしい。だけど、海斗を危険な目に合わないためにも、と思って空想を海斗に
告げた。これは全くの嘘だ。
「誰にも言っちゃダメなことなの。」
だけど、海斗は変わらない笑顔で微笑んだまま「そうなんだ。」と答えた。
海斗は他の友達の方に行き、楽しそうに話していた。これで大丈夫だろう。あまりの安心
に肩の力が抜けた。
真由ちゃんは、女子グループはこっちを見て嘲笑っていた。少し苛立った、だが、こんな
苛立ちも慣れていて、耐えられる方だったし、すぐに忘れられた。
チャイムが校内に響きわたる。教室に戻ると皆席にしっかりついていた。
「えーHR始めるぞー。」
真由ちゃん、多分女子グループとなにかしてくるつもりなのかな。今日は真由ちゃんだけで
なく、グループ全員こっちを見ていたからなぁ。このまま海斗と話したり、遊んだり
すると、いつ何されてもおかしくはない。
7時間目の授業のチャイム。
「えー。」
先生の声が教室中に響いていたが、私はまた、違うことを考えていた。
夏祭り、真由ちゃんと会ったらどうしよう。海斗に被害が無いようにしないとな。
浴衣はお母さんにしてもらって、持ってくるものは、手布とちり紙と、後何が必要かなぁ。
友達との夏祭りは当然のこと、初めてだ。しっかり確認して行かないとな。
そんな事ばっか考えていたら、いつの間にか授業は終わっていた。
「これで、終わりにしまーす。」
皆立ち上がって帰ったりや部活やと皆と楽しそうだった。私も早く帰ろう。
「由香!一緒帰ろう。」
海斗だ。どうしようかな。ここはうんって言ったほうが海斗はどう思うだろう。
嬉しいのかな。
でも、断ったほうが海斗の身のためでもあるし、どうしよう。悩んでいると、
「海斗〜。一緒帰ろ〜!」女子グループだ。ここで海斗が帰るって言えば安全だ。
「ごめん。由香と帰りたいんだ。」
その言葉に女子グループも私も目を丸くして、硬直した。
「帰りたい?海斗って今まで、自分から誰かと帰りたいなんて言ったことないよね?」
真由ちゃんが海斗に問う。そうなんだ、今までなかったんだ。
「なのになんで由香ちゃんだけ?」私も考えていなかった低い声が真由ちゃんの口から
漏れていた。女子グループの女子たちも流石に考えていなかったのだろう。顔を歪めている
「由香は特別だよ。」
え。私って海斗に特別扱いされてたの?海斗がいう特別ってどういう意味?
「何でこんな女なの!なんで地味なこんな女を選ぶのよ!」
真由ちゃんが発狂しはじめた。
それでも海斗は静かに、冷静だった。少し笑顔に靄がかかっているようにも見えたが。
「由香は地味なんかじゃないよ。誰よりも優しくて真面目で誰よりも純真な心を持ってる。
俺にとって今までで一番関わりやすい子だよ。」
真由ちゃんは私を睨みつけて、更に低い声で海斗に告げた。
「もういい。海斗、最後に言わせてよ。」
海斗は真由ちゃんの方を見て微笑んだ。そして「どうした?」と答えた。
私は何も言えなかった。黙って見とくことしか出来なかった。
「好きだよ。海斗が好き。」
女子グループや私がいるのにもかかわらず、そう口にした。
私は、見てよかったのかな。迷惑かもしれない、だけど真由ちゃんは続けた。
「その誰にでも同じようにできる優しさ、そのきれいな瞳人をしっかり守れる濁りのない
その純粋さ、すべてが好きだよ。」
その真由ちゃんの気持ち分かるよ。自分じゃ嫌かもだけど、本当に納得できた。
海斗は申し訳なさそうな顔をして返事をした。
「まずはありがとう。その気持とても嬉しいよ。」
あまりにも丁寧だったので驚いた。やっぱりやさしいなぁ。皆優しさに惹かれていくんだ。
「だけど、ごめん。俺好きな人がいるんだ。真由の気持ちには答えられない。同じような
気持ちにはなれない。」
海斗は真っ直ぐで素直な答えだった。
真由ちゃんは海斗の方を見て、顎を一筋の涙がながれる。その後もぼろぼろと流れていた。
「そっかぁ。あーあ失敗しちゃった。」
そう言って女子グループに支えられながら帰っていった。大丈夫かな。少し心配だった。
「海斗、良かったの?」
海斗は微笑んだが、目が笑っていない。「うん。良いよ。」そう答えた。
海斗も心配になってきて、言っちゃダメかもしれない言葉がぽつりと出てしまった。
「目が笑ってないよ?ほんとに大丈夫?」
海斗は顔を歪めた。そしてこう答えた。「本当はめっちゃ申し訳ない。号泣してしまうくらいショック受けさせてたなんて考えてもいなかったから。心配だよ。」
海斗は本当に優しいね。真剣な目をしていて、歯を食いしばる海斗はなんて優しいんだろう
「海斗はやさしいね。」そんな言葉だけが口から漏れた。
「ありがとう。今日は真由たちと帰るね。」
納得してあげないと。海斗の気持ちに答えてあげないと。友達だから。
少し寂しいけど、海斗がそう言うなら言っておいでっていうことしか私には出来ないから。
「うん、行ってきな。」
ちゃんと笑顔を作れているだろうか分からないが、ちゃんと声が出てるか分からないけど
海斗にそう告げた。
「ありがとう。由香。明日は絶対一緒に帰ろうね。」
「絶対」それが本当に叶うか分からないけれど、頷いて、海斗に背を向けた。
海斗はそのまま背を向けて、走って、真由ちゃんのほうに向かった。これでいいんだ。
妹を寝かしつけてから部屋に戻り、ベットに仰向けで寝転がった。
考え事をしながらいつの間にか眠ったいた。
コメント
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海斗の「由香は特別だよ」って言葉、すごく響きました…。あの場面、由香ちゃんの戸惑いと嬉しさが伝わってきて、私までドキドキしちゃった。真由ちゃんの告白も切なくて、でも海斗くんの優しい断り方に彼の人柄が出てて、余計に胸が痛くなった。最後の「絶対」って言葉に、この先どうなるんだろうって不安と期待が混ざってます。続きがすごく気になる…!