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池田気づいてたんだ。真奈美ちゃんこれをどんな風に利用するのか考えるのかしら?
真奈美ちゃん、なんとかピンチを切り抜けて🙏
気付いてた… どうする真奈美ちゃん!!! 落ち着け〜!冷静に!必ず天は味方してくれる!!! 逆に池田を利用する? とにかく今!今上手く切り抜けられますように🙏そして今後のためにもう少し何か仕入れられたら…
コーヒーとミルクなどを整えてエレベーターに乗ろうとワゴンを押して歩くと、ノーネクタイのシャツを腕まくりした運転手さんが私に気づいてエレベーターを開けてくれた。
「ありがとうございます」
私の声に、小さく会釈するだけの運転手さんは、ご主人様の車の洗車をしていたか磨いていたのだろう。
毎日運転の仕事があるわけではない運転手さんだけど、ご主人様の趣味である何台かの車を常にピカピカにしておくという任務もあるようだ。
そして、この運転手さんは私たちとほとんど話をしない。
私たちに興味もなく、遥香にさえ興味なく、中園篤志と中園篤久に仕えますという心持ちの方なのだろうと想像出来る人だ。
「お待たせしました。コーヒーをお持ち致しました」
「ここへ」
「はい」
小さなテーブルに一人掛けソファーがふたつ。
そのソファーに座った遥香と池田の間にあるテーブルにコーヒーの入ったカップなどを置きながら、さっき池田が遥香に
“ハウスキーパー?メイド?”
と尋ねていたのも、もっともな疑問だな……と思った。
家政婦とハウスキーパーが同意語だろう。
家政婦は、掃除、洗濯、料理、買い物といった基本的な家事から、庭の手入れ、シーツ交換、衣類の整理整頓など幅広い家事全般を請け負うプロフェッショナル。
メイドは家政婦としての家事全般に加えて、来客対応、おもてなしも業務になるので、フォーマルな服装とマナーを要する。
ここではそれがごちゃ混ぜになっているからね。
でもそれは、現場から会社へ不満が上がらない限り、見て見ぬふりで許容されてしまう。
今の私にすれば好都合だけれど、通常勤務でこんなことは会社へ報告案件よ。
「はい、お待ちかねのお土産。真奈美専用よ」
ポイっといきなり投げられては受け取れるはずもなく、小さなそれは絨毯に落ちた。
ナニコレ……?
と思いながら、膝を絨毯につけてそれを手にすると
「……なんですか……これ?」
笑えるほどの、遥香の腹黒証拠だという喜びを押し殺して、私は手にしたものを見つめて声を絞り出した。
きっと二人には、ショックや怒りに震える私が感情を抑えて発した声に聞こえたに違いない。
でも、私は歓喜に震えているのよ……さあ、遥香……アナタの汚れた魂を録音させて!
「あら、真奈美はホテルに泊まったことないから知らないのね。それ、アメニティって言うの」
「アメニティの歯ブラシが……お土産?」
もう言いながら笑いをこらえるのが大変よ。
ホテルのアメニティひとつを持ち帰って“お土産”って、最高に笑えるもの。
「アナタにはそれくらいで十分」
「……はい、ありがとうございます。失礼します」
私の用は済んだ、長居は危険……うまくいったと奥歯を噛みしめながら部屋から出ようとする私の耳に、私を歓喜から突き落とす声が聞こえた。
「俺、真奈美を知ってる……」
「はっ?亮一と真奈美が知り合いってこと?」
無視出来ない言葉に、私はドアを見つめたままの自分が顔色を無くすのを感じた。