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瑠璃🍫✨💭ྀི
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「お疲れ、お疲れ。悪いね、時間取ってもらって。何食うか。先飲み物か」
注文用タブレットを見ながら要領悪く落ち着かない様子に吹き出す。
「橘さん、さっきと全然違いすぎません? 仕事中はかっこいいのに」
「あのなぁ、緊張。緊張してんだよ。察しろ」
「あはは、そんな風には見えませんでしたけど。そっか、橘さんでも緊張するのかー。責任重大ですもんね」
橘さんは一瞬ポカンとして、すぐに吹き出した。
「まあな」
「え、はい」
何だろう。なにか間違ったんだろうか。
「まぁ、1杯くらい飲んでもいっか」
「あ、はい」
「ん。何する」
そう言って橘さんは私にタブレットを寄越した。適当に酎ハイと食べものをタップして橘さんに返した。
注文したものが届くまでに橘さんは手持ちぶさたに自分の組んだ指先を見ていた。
……話したいことがあったんじゃないのかな?
あ!そうか。橘さんがこっちにいた時から随分時間が経ってるし、三宅くんはもういない。橘さん気が置けない人と飲みたかったのかも。ずっと気を張っていたのかもしれない。
「橘さんって、奥さんはあちらにいらっしゃるんですよね。ってことは今は単身赴任ですか? 」
「え……単身赴任? 」
「マンスリーマンションみたいな感じですか。このプロジェクトが終わると戻られる、とか」
橘さんは今度は確実に吹き出した。何かおかしかったのだ。え、何?首を傾げて待っていると橘さんは顔を上げ、一つ息を吐いた。
「相変わらず、お前は……無頓着というか、鈍いところがある」
「どういう……」
「俺ね、こっちに帰って来た。単身赴任じゃなく、一時的なものでもなく。帰って来たんだ」
「あ、ええ。そうですか」
別に、私もそう思ってましたけど。帰って来たこと知ってるけど、異動だし。転勤?だし。
「……別れたんだ」
――…………え?
「まあ、親しい奴には話してるから東谷も知ってるかと思ってた。三宅にはあいつの異動前に話したから東谷にも伝わってると思ったんだけど……俺の話題は上がらなかった……ってことな。離婚、したんだよ」
十分な間を置いて橘さんはじっと私を見つめた。
「話題、というか、その……あまり他人に軽々しく話す内容ではないと判断したんじゃないかな」
じっと見つめる視線は外さず、橘さんはふっと表情を緩めた。
「そういうことにしておこうか」
はー……と私も息を吐いた。あれ、何で私が怒られている気分にならなきゃならない――……
「え、は、いつ別れたんですか、いつ」
「半年……いやもうちょっと経つか」
「え、じゃあ、前に会った時はもう? 」
「そうだな」
「何で言ってくれなかった……」
んですか、そう聞こうと思って口を噤んだ。そんないちいち報告が来る関係性でもなかった。異動だって前もって聞かされたわけじゃないし。
「前に会ったの結婚式だろ。さすがにな。他の人たちも結婚とかめでたい話題ばっかりだったし、ちょっと、なあ」
それはそうか。おめでたい席に水を差さないように。でも、と当時を思い出す。結婚式からも会ったし三宅くんには話していたわけでしょ。私には……?
じっと見つめてくる橘さんに、あれ?と思いながら尋ねる。
「あ、もしかして今日そのこと報告しようと声かけてくれたんですか。いいのに、そんなプライベートなこと踏み込みませんよ、私! 」
橘さんはやっと目を逸らし、くくっと肩を震わせた。
「うん。そっか。酒も来たし、はい乾杯」
「え、はい。カンパ……イ」
橘さんは私がグラスを持つのも待たずテーブルに置かれた私のグラスに自分のジョッキを軽くぶつけた。
雑。雑な乾杯でチラリ橘さんがジョッキに口をつけるのを見て私もグラスに口をつけた。なんだって言うのよ、全く。
「鈍いな、東谷はほんと。今も昔も」
「悪かったですね」
ムッとして言い返すけど橘さんはにこにこしていた。
「東谷の彼氏。あれ、めっちゃ若くないか」
急に広睦くんの話を振られ、とっさには取り繕えなかった。全部顔に出ていたと思う。
「やっぱり、親戚じゃあないよな。でも婚活してるってことは恋愛と結婚は別ってことか? いやそんな分けれるほど器用じゃないだろ東谷。向こうの年齢がネックってことか」
「もう……」
全部言い当てられて私は両手で顔を覆った。
「うーん」
橘さんは顔を上げられない私の前でのんびり何か考える素振りをしていた。
「俺が離婚した原因なんだけど」
「は? 」
私を困らせてそのまま放置して自分語り?不審に思って顔を上げると橘さんは
「うん」
と柔らかに微笑んだ。私が知っている、いつもの、昔から変わらない橘さんの笑顔だ。
「そろそろ子供が欲しいなって奥さんに……ああ、元妻に言ったんだ。仕事も落ち着いてやっと余裕が出来て一息ついてそろそろ、そう思って言った。軽い気持ちで言った。そうだねって返って来ると思った。じゃあ『何であなたのタイミングなの? 』って言われて、何でって……。彼女はちょうど仕事が乗って来てこれからってタイミングだった。『日常の会話でそれがわからなかったの? 』って言われてハッとしたよ。『産まない側のあなたがどうしてタイミングを取るの? 』って……。向こうは結婚してすぐに子供が欲しかったみたいだ。続けて二人。そこから仕事復帰してっていうキャリアプラン。でも俺が忙しくてなかなかタイミングとれないのもあって。向こうが子供はいいかなって思い始めた頃に俺が欲しいと言い出した。『私がいくつか知ってる? 』冷ややかにそう聞かれた時はもう向こうの気持ちは決まったんだろうな」
私のライフプランにも出産は含まれていて。年齢の壁がいかに厳しいか理解してルつもりだった。それで悩んでいたのだから。
コメント
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えっ!橘さん、離婚してたんだ…!😳✨ しかも「子供欲しい」って言ったタイミングがズレてたのが原因って、めっちゃリアルでグサッときた…。東谷さんの「何で言ってくれなかった」って気持ち、すごくわかるよ。でも橘さんの「鈍いな」って言い方に昔と変わらない温かさがあって、なんだか切なくてじんわりした…💭 次が気になる!