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瑠璃🍫✨💭ྀི
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「『いいわね、パートナーを替えたらいつでも子供が出来る側の人間は』ってさ。妊娠したら、出産したら、そういう当事者意識が無かった。思い描いてた未来が独りよがりだったこと気づけなかったんだ。その未来が来ないなんて思わないだろう」
何て言っていいかわからなくて、目が泳いでしまう。
「後悔はたくさんあって、あの日、あの時……そう思わないわけじゃないけど。一番近くにいる人が見えてないというのは情けないよな」
「コミュニケーション不足、では」
「そう。だけど俺の場合はコミュニケーション取ろうとした時にはもう向こうにとって俺はコミュニケーション取る必要のない人間だったってこと。話し合いはこれから先もずっと関係が続く人とは有効だけど、縁を切る相手とうはそうじゃない。時間の無駄――。そう判断され、あとは事務的な連絡だけ。そうそう元妻だけど、再婚するらしい」
「え、早くないですか? 別れて半年ちょっとって……」
私が顔をしかめても橘さんは柔らかく笑う。何で笑ってるの、だって、橘さん……!
「俺も人の事言えないから」
「え、橘さんも浮気したんですか!? 」
「おいおい。元妻も浮気してないよ。また結婚したいと思う相手に出会えたんだろ。はは」
「そう、そんなものですかね。そんな直ぐに? 」
私は結婚したいと思える人になかなか出会えないことを身をもって感じてるし、なんだか腑に落ちない。
「俺と、付き合わないか」
え?
橘さんの言っている意味が理解出来なくて顔を凝視する。奥さんの、話をしていて……。
「え? 」
「もう、後悔はしたくない」
橘さんの目はまっすぐ私を見据えていた。
「俺とつき合ってくれないか」
橘さんはもう一度繰り返した。私には随分若い恋人がいて、でも婚活をしていて。橘さんは離婚して。こっちに帰って来ていて。
「ちょっと待ってください。何でそんな話に? 」
「結婚式で久しぶりに会った日。昔話に花が咲いて、感情がほんのりぶり返した。でもなーってやり過ごしたんだけど。東谷が婚活してるって聞いたらもう駄目だった。はっきり自覚したのはその時。東谷が結婚してしまうかもしれないって思ったら怖くなって」
「そ、でも、私……」
「さ、俺の気持ち伝えたんだから聞く権利あるよね」
橘さんから今まで向けられたことのない、異性としての顔をされ、ドキリとする。
「何をですか」
「東谷の今の恋愛について」
「橘さんの見立て通りです」
観念してそう言った。
断わり切れず大学生の男の子と結婚相手が見つかるまでという身勝手な理由でつき合っている、ということを。
「……そうだな。でも東谷は、いくらなんでも好きでもない男と付き合うわけないだろ」
咎めるか、引かれるか、呆れられるか。そう思っていたのにただ状況を受け入れられ私の気持ちを考えてくれるんだ。だけど……、
「はい、多分……」
自分でもはっきり認められない広睦くんへの気持ちを口に出すのを躊躇する。恥ずかしくて顔を上げられない私の前で、橘さんがふっと笑う気配がした。
「いいんじゃない? って思うけど。男側ならそのくらい年下でも『お前上手くやったなぁ』なんつってニヤニヤされるだけだわ。確かに大学生かぁ、とか。大人の常識的なことが引っかかるけど。特に東谷は真面目だし。でももう社会人になるわけで、向こうも自分で責任持たないといけない年になる。浮気とか暴力とか逸脱したこと以外は結婚とか恋愛って正解がないことだろう。 条件で選んだ婚活で知り合ったどこの誰ともわからない男に一生が保証されているわけでもないだろ。結婚出来たとしても引きずるものがないか? 」
「わかって、ます」
「どっち選んでも後悔は残るだろうな。でも、婚活男はまだ出会っても無いんだろう? 出会える保証もない」
その通りでこくりと頷いた。
「俺はいいと思うけどなぁ。もう相手の年の事は十分悩んだだろう? 今の感情を優先して、結婚なんて今の感情で決めるもんだからなぁ。周りが何とかしてくれるわけでもないし」
「若い子の気持ちなんてコロコロ変わるものですよ、橘さん」
口から本音が漏れる。橘さんはきょとんとして吹き出した。
「なんだ、東谷。向こうの心変わりが怖いのか。ちゃんと好きじゃないか、その子の事」
「……! 一般論で。周りの人に10年後とかに、ほらやっぱり若い男に捨てられたって言われるのも辛い……」
「はは! 芸能人でもあるまいし、ずっと“若い男と結婚した女”を追ったりしないさ。パッと見であの夫婦は10歳差だな、なんてわからないし。10年後も付き合いある周りの人なんざ、お前の事心配してる奴しかいねえよ。むしろ今の俺には10年も続いて羨ましいまであるわ! 」
自虐を挟むからつい吹き出してしまった。
「もう、やめてくださいよ」
「なぁ、東谷。俺は、捨てられたわけだけど、どう思った? 」
「え、捨てられ……? いいえ、別に。橘さんほどの人でもプライベートは情けない部分もあったのかなって……」
「はは、うっせえわ」
「あ。ごめんなさい。そんなつもりじゃ、えっと」
「な? 別に、人の離婚にそこまで何も考えないだろう。色々あったんだなーって。原因は向こうが若すぎたからでも、心変わりしたわけでもないかもしれないだろ」
「でも、私は若い彼を諭す立場なのに。大人になって何をしてるんだろうって……自己嫌悪で。いつも過去の恋愛を後悔してばかりだし、私、どうしたいんだろう」
「東谷、今の自分が何をしたいか知ることは、今のお前を否定することじゃないぞ。過去の後悔を今引きずると未来でまた過去に後悔することになるだろう」
「……はい。ありがとうございます」
「頑張りがいがある、ともいう。好きだろ、東谷。こういう逆境みたいな」
「ちょ、プライベートではヤですよ! 」
「努力とコミュニケーション」
「はい、胸に刻みます」
「あー、説教くさくなんの何でだよ。結婚はねぇ、いいもんだよ。色々あって良くないこともいっぱいあってしんどくていいこともあって楽しくて。なんかまぁ、何とかやってく。いいもんだ。俺はそう思う」
橘さんは焦点の合ってない目で遠くを見るように呟いた。
俺が言うなよ……と言って私に焦点を合わせ、破顔した。私もつられて笑ってしまった。
そこからの橘さんは機嫌がよく楽しそうだった。
最も、橘さんの機嫌が悪い時なんてないけど、少しかっこいい橘さんから可愛い所もある橘さんという広がりを見せた。
プライベートではもっといろんな顔があるのだろうか……。帰る頃には私も声をあげて笑ったせいか心が軽くなっていた。
帰り道、はぁ、と空に向かって息を吐く。
『俺と、付き合わないか』そう言った橘さんを思い出すとドキリと心臓が一度音を立てた。知らない、男の顔だった――。
ふとスマホが震え、ビクリとしてしまう。
あ、着信――。え、橘さんだ。
「あ、はい。どうし――……」
『何か俺! 東谷けしかけるみたいなこと言っちゃったなと思って。違うから、俺、諦めてないから。選択肢にちゃんと加えといてくれよ。――東谷とちゃんと付き合いたいと思ってる。俺が東谷を好きだってこと。わかっておいて」
「はい、あの、こちらこそありがとうございました」
「じゃ、付き合わせて悪かったな。また明日」
緊張して上手く言葉が出てこないまま電話は切れた。は、と緊張を解く。
橘さん。私に気持ちを伝えるために呼び出してくれたのに。今日は話を聞いてくれて、励ましてくれた。
私の恋愛を窘める体で相手を下げて別れる方向へ差し向けることだって出来たのに。尊敬する先輩からの助言だと私も従ったと思う。それなのに……。
「はは、良い人だな橘さん」
胸がどくどく言ってる。耳が熱い。橘さんが、私の事好き……?
あの結婚式の日に再会した時には逃したタイミングを悔やみ虚しい気持ちで橘さんを見つめていたのに。あの時に言ってくれていたら間違いなく橘さんを受け入れていたと思う。
どうしよう――……私、どうしたらいいの。
『既に信頼関係が確立しているちょうどいい年齢の独身男性がパッと目の前に現れたらいいのにね。そしたらなーんにも悩まずにさっと解決しちゃうのに』
やだ、こんな時に何を思い出してるんだろう。パンパンと顔を叩いて振り払った。
コメント
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みぅです🥀 橘さんの「もう後悔したくない」って言葉、重かったな……。自分から気持ちを伝えるってすごく勇気いることだと思うし、それをちゃんと選んだ橘さん、かっこよかったよ。しかも、東谷さんの恋愛を否定せず「俺はいいと思う」って背中押してくれる余裕もあるんだね。大人の男の余裕って感じがした。 あと「今の自分が何をしたいか知ることは、今のお前を否定することじゃない」って台詞、胸に刺さった。私もよく過去の後悔で自分を責めちゃうからさ……この言葉、覚えておきたいなって思ったよ。 最後の電話で「諦めてないから」って追いかけてくるところ、心臓がドキドキした。橘さんと東谷さん、どうなっていくんだろう。続きが気になる🥀✨