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「殺してもいい。いやむしろ殺せ」
そう割り込んできたのは雄大本人だった。
「手下がみんなが半殺しにされたのに親分だけ無傷で済ましてもらえたというのが一番困る」
「何が困るんだ?」
「ヤクザの親分子分は世間の親子と同じだ。子がみんなやられたのに親が自分だけ助かろうとしたと思われたら、親の威厳がなくなって子はみな離れていってしまう。おれが死んだあとは若頭の獅子丸が会長を引き継ぐことになっている。獅子丸は力士の虎丸の兄だ。だから遠慮はいらない。おれを殺せ」
「いい覚悟だ。でもおまえも極道なら一方的に狩られるのでなくて、戦って散ったらどうだ?」
女子高生がヤクザの親分に極道の心構えを教えて、ヤクザの親分がそれを真剣に聞いている。なかなかシュールな光景だ。
「それもそうだな。武器は使っていいのか?」
「使ってもいいが、余に取り上げられたらその武器で攻撃されることになるのは覚悟しておけよ」
「だから殺せと言ってるだろう。何度も言わせるな」
雄大が手に取ったのは短刀。彼らがドスと呼ぶ使い慣れた凶器。
陛下と雄大は大広間の中央で対峙した。陛下は武器を手にしていない。
さっきまでうめき声をあげていた雄大の手下たちもたいてい起き上がり、彼らのボスの勝利を信じて勝負の行方を見守っている。