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くおんさんのコンテストのやつです。
幸せの解像度バカ低い!のに長くなっちゃったので2話に分けて出します。
マブ
*
正午。
太陽はてっぺんまで上り切っているはずなのに、あたりは真っ暗で、煙たい。
そこら中から空へ上がる黒煙が原因だ。
争いは絶えない。
我が国なんかは、みんな勝利に貪欲だから尚更だ。
勝って、勝って、勝ち続ける。それらに快感を感じざるを得ない者たちが集まった国だから。
戦いたいからいるやつも、女を食いたいからいる奴も、どうしようもない首領の補佐をするためにいる奴も、扱いようのない知識を何かに役立てるためにいる奴もいる。色んな欲を抱えた奴らが集まっている。
…誰かに見て欲しくている奴も。
倒壊した建物からは小さく爆発音が聞こえる。電化製品等が発火して起こる、よくある爆発だ。
そんな喧騒の中で、2人の戦士が立っていた。
「あ゛〜、っはは、疲れたー!」
「んふふ、今回も俺たちの勝利やな」
「何人やった?」
「え、そんなん数えとらんわ。シャオロンは?」
「俺も数えてん」
戦場のど真ん中。
最後のひとりを殺してようやく一息つく。
今回は膨大な区間での戦争だったため、任された一角も大分広かったのだ。
俺一人では力もリーチも足りない。
こいつがいてこそ、俺は自分の力を十二分に発揮できる。
「ロボロ、また強くなったよなあ」
「え、そお?」
天の文字が書かれた面を顔にかけているのは俺と組んで戦っているロボロ。
何のために面をつけているのかは聞いた事が無い。俺たちの前ではあまり意味を成していないからだ。
今だって、少し褒めただけなのに、溢れんばかりの嬉しいオーラがひしひしと伝わってきている。
素直な奴なのだ。
「よし、戻るか」
「うん、せやな」
少ししたところに地下基地への入り口がある。
そこでいつも迎えの船が来るのを待つ。
戦闘の終了を確認して数日間は敵の潜伏の対策として地下基地で過ごすことになっているからだ。
俺らの本拠点を知っている者はごく僅か。
ぶっちぎりでどこの国よりも固いセキュリティだと誇っている。
さく、と焦げた土を踏み、ロボロの前を先導するように歩いた。
地雷なんかがあってはたまらない。
ロボロは傷つけさせない。
「…ぉ………ぇら……」
「ん?ロボロなんか言った?」
「え?…いや、なんも言っとらんよ」
風の音を何か声に勘違いしたのだろうか。
「ぉ、お前らさえいなければなあ゛ぁッ‼︎‼︎」
「あかん、シャオロン!」
「え⁈な、に…」
突然ロボロに突進されて足元のバランスを崩す。
真っ黒な空が見えて、その次に見えたのは。
「ロボっ」
嫌なくらいに綺麗な赤をした鮮血。
それに僅かに遅れてパパァンと乾いた発砲音があたりに響いた。
銃だ。
撃たれた、ロボロが。
音がほんの少し遅れた。
そう遠くはない。
目視できる距離なはずだ。
脳は驚くほどに冷静にその場を理解した。
でも俺自身が、動揺してしまった。
「っあ、ロボロ、撃たっ、敵が」
また発砲音が響く。
次はすぐ耳元。ロボロが撃ったものだ。
少し遠くで「ぎゃ、」と声が聞こえて、いよいよあたりからは人の気配がなくなった。
「ロボロ、大丈夫⁈どこ撃たれ…‼︎」
服の胴体部分が、橙から赤色へと変色していく。
(え?これ、心臓いかれて…)
「大丈夫、や。心臓、肺は来とらん。…肩逝かれてもーたわ」
「よかっ……」
いや違う。あの時聞こえた発砲音は2回なっていた。もう1箇所、傷があるはずだ。
どこを撃たれたか聞こうとした刹那、頬に生ぬるい液体が飛んできた。
赤い。
ロボロの口元からは血が滴っていて、しきりにヒュ、ヒュ、と風の通る音が聞こえる。
「ロボロ⁈…っちょっと脱がすな」
鍛え上げられた体は赤く染まっていて、その出どころは一目瞭然だった。横腹に穴が空いていた。
血は黒くない、腎臓は大丈夫そうだ。
「とに、とにかく、止血。止血せな…!基地、応急処置…」
脳内を整理するためか、思ったことが全部声に出てくる。
数日するまで船は来ない。
うちには医師はひとりしかいないから、本拠地意外ではどこにいるかの情報も何よりも厳重でわからない。
死んじゃだめだ。
生きて、一緒に帰ろう。
また、飯食いに行こうって…。
長い、長い三日間が明けた。
一睡も出来ていないが、そんなのは全く気にならなかった。
全身を蝕む鈍痛と疲労感よりも、起きた時にロボロが死んでるかもしれないことへの恐怖の方が断然デカかった。
「シャオちゃん⁈ロボロどうしたん⁈」
迎えの船から降りてきたのは鬱先生。
女好きでどうしようもなくだらしないが、その聡明さと自己の強さは国でも重宝されている。
「大先生、ロボロが、撃たれて、腹」
「…ええか、シャオちゃん。俺が責任持ってロボロ持ち帰るからお前は先船行って休んどれ」
「え、やだ。ロボロが…、だって、」
言葉がうまく出てこない。
動揺か疲労か、はたまた睡眠不足か。
でも寝たくなかった。起きたらロボロがいなくなってたらどうしようって、それが怖くて。
「すまんなシャオちゃん」
「え、あ゛っ…」
突然大先生にみぞおちを殴られる。どうしても手放したくなかった意識は、いとも簡単に落ちていった。
(アバラ逝ってんねんぞアホ…)
「っは、」
「あ、シャオちゃん起きた?」
耳鳴りがするような静けさの中、悪趣味なまでに整えられた真っ白なベッドの上で目が覚めた。
1番に見た顔は大先生。
「…さいあく」
「なんやねん」
「……ロボロは」
ロボロは、無事か。
そればっかりが気になって仕方ない。
ふう、と大先生が大きく息を吐いた。肩が強張る。
「ロボロ、は…」
嫌に溜めるものだから、どんどん不安が募っていく。
固唾を飲み込んでその続きを待った。
「無事。ちょー無事。きもいくらいに無事」
「……へ、」
「処理が早かったんやろってペ神が」
全身が脱力する。
緊張がほどけて、体の強張りがスッと抜けた。
鼻がツンとして視界がぼやける。
「っ…良かったァ…」
本当に、よかった。俺を庇ってロボロが死ぬだなんて、それこそ俺は生きていけなくなっていただろう。
早く、その元気な顔が見たい。
「ロボロんとこ行く?」
「いく」
ずっ、と音を立てて鼻をすすり、ベッドから足を下ろす。
筋肉痛が響いてるのだろうか、ひどく関節が痛い。
ロボロは二つ隣の部屋にいるらしい。俺よりも目覚めるのは早かったみたいだ。
部屋に入ってみると、そこには数人のメンバーたちと楽しそうに話しているロボロの姿があった。
こちらを見たロボロはきょとんとした顔を見せた。
「ロボロ、お前無事やったか…」
「えっと…すんません、」
「どなたですか?」