コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ーもしも生まれ変われたならー
これは昔昔の,そのまた昔の話。
とある王国での物語ー。
「産まれた!!産まれた!」
「なんて可愛い双子なの……」
「教会の鐘が彼らを祝福してるぞ!」
とある王国の国王の間に,私たち双子は生まれた。その日は嫌になるくらい澄み切った晴天だった。
「お姉様〜早く早く〜!!」
「ま、待ってよ…フラン…。」
無邪気な笑顔で庭を走り回る少女。
あの子は私の妹のフラン。
天真爛漫で,常にパワフルなフランに,私はいつも振り回されていた。
「お姉様……今フランのこと面倒臭いって思ったでしょ???」
はぁ、また読まれた……
「はぁ,フランには敵わないわね…」
「ふふふーんだ。私の前では嘘なんか通用しないんだよーだ。」
ドヤ顔で得意げな笑顔を見せるフラン。
先に言っておくと,フランは頭のおかしな子では無い。
産まれた時からフランには不思議な能力があった。
それは
「他人の感情を読み取る程度」の能力。そのせいでフランには一切の嘘が通用しないのだ……。
「ふふ。じゃあ私が貴方の大好きなブリオッシュを食べてしまったこともバレているわね。」
私は少しフランに意地悪をしてみた。
案の定フランは引っかかり泣きそうな顔で
「えっ……嘘……。」
そう行ってきた。
でも暫くして怪訝そうな顔でフランは言った。
「嘘じゃん〜……」
あははっ。ごめんごめん。とふざけて笑ってみせる私に,フランは仕方ないなぁ。といったふうな顔を見せた。
嘘は通じないくせに簡単な嘘に騙されるところはまだまだ子供っぽくて可愛いなぁ。と思う。
この力の事は他の人に悪用されるのを防ぐために,お父さん,お母さん,フラン,それに姉である私しか知らない事実。
バタバタバタバタバタ……
「フラン様……!レミリア様……大変です……!」
私達がたわいも無い雑談をしている時ふと1人の従者が私たちの元に息を切らしながら走ってきた。
「どうしたの???」
「…それが…国王様と王妃様が……」
……!!!!!
「お待ちください!!レミリア様!」
従者に事の顛末を聞いた私は制止を振り切り,お父さんとお母さんのいる部屋へと駆け出した。
「お父さん……!お母さん……!」
……っっっ……!!
(ダメだ……もう既にお父さんとお母さんは…こんなのフランには見せられな……)
「お父さん!!お母さん!!ねぇ,起きてよ……!ねぇってば……!!」
フラン…
(最悪だ…この姿をフランに…妹に見せてしまった……)
…お父さんとお母さんは,死んでいた…
医者の話だと病気で亡くなったらしい。
だけど絶対に嘘。
だって,お父さんとお母さんに病気なんてなかった。至って健康だった。流行病なんてものもない,
……とするならばお父さんとお母さんは,殺された…でもここの警備は厳重で
誰も侵入できないはず……
多分,この王宮にいる誰かに,殺された……
でも誰に……???
病気といった医者は敵??
家臣は??家来は??兵士は??召使いは……??
……殺したい…お父さんとお母さんを殺したヤツらを……
だけど今の私には無理だ…
私みたいな子供に何が出来る??
誰が敵で誰が味方かも分からない…
そんな状態で楯突いて何が変わる…?
今は…我慢しよう…
仇を取るために……絶対…お父さんとお母さんをあんな目に合わせた人たちを地獄に落とすために……
「…………。」
「失礼します。」
「……何?」
私が考え事をしている時,部屋に家臣が入ってきた。
「レミリア様,いや,レミリア・スカーレット。」
家臣は入ってくるなり呼び捨てで私のことを呼び。耳を疑うことを言ってきた。
「お前には今日から王女ではなく召使いとして働いてもらう。」
「……は……?」
召使い…?私が……?どうして??
意味がわからずに私は叫んだ。
「どーゆ事よ?!?!教えなさいよ!!」
「フラン様を王女にする為に,お前は邪魔なんだ。」
フランを……女王に……?
……(嗚呼……そっか……)
フランを王女にする為に,姉である私は「邪魔」という事ね……。
姉である私よりも妹であるフランの方が自分たちの思うように扱いやすいから。
…そーゆ事よね。
私がしばらく考えていると、追い打ちをかけるかのように家臣が言った。
「お前が従わないなら別にいい。だがその場合お前の妹のフランはどうなると思う?」
(なんでそこでフランが出てくるのよ……)
「あいつも,お前たちの父親達と同じ末路を辿らせてやろうか。」
「……!!!!」
(コイツが……お父さんとお母さんを……。じゃあ私がここで従わないとフランは……)
「…分かったわ…」
「なんだその言葉遣いは。お前は召使い。俺はお前の家臣。つまり上司だぞ。」
……。
「……分かり……ました。」
「んんんんーー!遅いー!!」
(お姉様を呼びに行くって言って何時間経つのよ…。あの家臣…遅いわね)
ガチャ……。
「あ!!お姉様……!」
「……」
「どうしたの??遅かったじゃん。」
「……」
(あれ…何…この変な感情…
なんて言うか色々な感情が混じってて…分からない…)
「…お姉様…?」
「……」
突然お姉様は私の目の前で膝ま着いた。
「これからお嬢様の元で働かせていただく召使いのレミリア・スカーレットと申します。」
(え……??)
目の前て突如として起こる光景に私は動揺を隠せなかった。召使い…?女王…?何それ…しかもどうしてこんなにも,他人みたいに……。
「お姉……様?何言ってるの……?」
「……。」
「ねぇ…なんとか言ってよ…お姉様……!」
私がいくら問いかけても無言のままのお姉様。
「返事してよ……!お姉様……!」
お姉様……!!!!!!!!!
その日からお姉様は一切喋らなくなった。
お姉様と顔を合わせられるのは教会の鐘が鳴る3時のティータイムの時間だけ。
その時間になると,決まってお姉様がおやつを持ってきてくれる。
…だけどお姉様が話すことは…無かった。
お姉さまから感じる感情はいつも同じだった。
モヤモヤしていて,色々な感情が組み合わさっていた。
「ごめんね。」とか「これでいいのよ……」とか
私…バカだから…よく分からないよ…口でちゃんと伝えてよ…。
……元のお姉様に……戻ってよ……。
「女王様だ!!!」
「若くてお美しいわ……」
「お妃様に似て優しそうな御方だ…」
今日は,私が初めて「女王」として国民たちの前に出る日。
…私は,こいつらが憎い…
お父さんとお母さんを奪った…お姉様を変えた,こいつらを……。
全部……全部お前らのせいだ……
「静まりなさい!!!」
その瞬間全ての国民が黙った。当然だろう。王女である私が大声で静まれ。と命令したのだから。
私は家臣たちの制止を振りほどき。続けた。
「跪きなさい。愚民ども!!私は女王よ!!!」
お前たちの言いなりになるもんか。
苦しめて,痛めつけて,ボロボロになるまで使い果たしてやる!
「……。」
フランが…変わってしまった…
フランは本来ならあんな事を言う子では無かった…。
もっと優しくて…華奢で,純粋で…。
私に何が出来る…?ただの召使いとなってしまった…今の私に…何が…
(嗚呼…そっか…。最初からこうすればよかったんだ……)
「女王様。」
私はフランの前に跪づいた。
驚くフランをよそ目を私は続けた。
「私が,必ず女王様をお守り致します。」
「…」
「…ええ。宜しくね。」
私の前に跪づく,お姉様。
その姿を見た時。私は漸く気がついた…
私は「女王」でお姉様は「召使い」
もう…昔のような関係には戻れない,
もう,お姉様は私のことを「フラン」と呼んではくれない。
(…女王になったら…元に戻ってくれると思ってたんだけどな……)
あれから,4年の月日が流れた。
私たちは14歳になった。
女王は,家臣たちの言うことなんか聞かず,自分のやりたいように事を動かし続け,国はめちゃくちゃになって行った。
戦争は続き,国民たちは税を払うのに必死で,前の豊かで平和な国はもう無かった。
……仕方の無いことよね。
そもそもあんなにも幼い少女に全権限を渡した方が悪いのだから…。
召使いである私は,ただ言われたことを行うだけ。
今日は隣の国。黒の国へ来ていた。
明日の女王のおやつを買いに行くため。
このおやつは女王の大好物だった。
「…フラン…喜んでくれるといいわね…」
私は誰にも聞こえないような声でポツリと呟いた。誰かに聞かれでもしたら大変だから。
「……(はぁ……)」
疲れた……すごく疲れた……
4年間,信頼できる人なんて誰もいなかった。
誰一人として信頼できる人が居ない中で試行錯誤するのはすごく疲れた。
……こんな時にお姉様と話せればな……。
「女王様,ご来客です。」
「客???」
「はい。隣の国,赤の国の女王様です。」
赤の国……嗚呼,お父さんが国王だった時に仲の良かった国ね…
「良いわ。通して。」
誰なんだろう…どうせ,自分のことしか考えてないようなワガママ女王なんだろうな…。
「初めまして。紫の国の女王様。私は赤の国の女王の,博麗霊夢です。」
ぺこりと頭を下げる,私より少し年下らしき女の人。
最初はそうやってても,どうせすぐにわがままを言うのでしょう??
そう思い、感情を読み取り,気がついた。
(あ…この人はほんとに…)
「ねぇ。」
「は、はい。」
「今すぐに私と女王以外を外に締め出しなさい。今すぐに。よ。これは命令よ。」
「は、はい……」
突然2人にされて驚いた顔をする,赤の国の女王様。
それも当然だろう。いきなり逢いに来た女王と二人きりにされるのだから。
「あ……あの……?」
「貴方,凄いわ!」
「え…?」
「私はフラン!お友達になりましょう!」
「え、えええええ?!」
私は久しぶりに心が踊っていた。
だってこんなにも純粋で,私に対して嫌な感情も持ってなく,ただの優しい人。
そんな人はお父様やお母様,お姉様以外に見たこと無かったから。
(嗚呼……ようやく見つけた……本当に心を許して話せる相手…いっぱい,いっぱい,今まで我慢して多分沢山お話したいな……!)
「ええー。森の中……良いなぁ…私も行ってみたい…。」
「大丈夫!フランならきっと行けるわ!」
「ほんとに…?!あ、ねぇねぇ!霊夢!お姉ちゃんって呼んでもいいかな?」
私はふと,霊夢にそう聞いた。
お姉様と話せなくなってた今,お姉様以外の女性と話したのは久しぶりで,何よりも私は心から霊夢を信頼していたから。
「え?!ま、まぁいいよ……でもその代わりに,誰もいない時だけよ?」
「やったぁ!!ありがとう!お姉ちゃん!」
私とお姉ちゃんは,すぐに打ち解けた。
色々な話をした。
赤の国には,森が沢山あって,
森以外にもお花畑もあること。
そこには私が大好きな
「ブリオッシュ」もあることを教えてくれた。
「ふふふ。お姉ちゃん。大好き。」
「……。」
「う、うん,私も大好きよ。」
……あ……
そこで私は気がついてしまった。
「好き。」という感情に反応した,お姉ちゃんのひとつの感情に,
「…あ,私そろそろ帰るね。じゃあね,フラン。」
「……うん……。」
「……(お姉ちゃんは,誰が好きなのかな……?調べなくちゃ……お姉ちゃんは私だけのものなんだから……誰にも渡さない……)」
はぁ……はぁ……
(漸く……着いた……)
やっと隣の国に着いた。
かれこれ出発してから2時間ほどたっていた。
(だいたい馬で行けば直ぐに着くのに,なんで歩いていかないといけないのよ……馬鹿じゃないの……。)
「…(早く買って帰りましょう……)」
「(やばいわ……?!もうこんな時間……??もうここに来てこんなに時間が経っている……ゆっくり選びすぎたわね……大体ここ,魅力的なものが多いのよ……)」
「……あら……?」
(あの金髪……どこかで見たわね……。)
「……あ。」
そんなことをぼんやりと考えながら歩いていると,その人にぶつかってしまった。
「す、すみません……。」
「え?あ,」
あーーーーー!!!!!
「お前,あの時の子供か??」
「もしかして、昔私たちを助けてくれた人ですか??うしてどここにいるの?」
顔を見て瞬時に私は思い出した。
この人は昔私とフランを命懸けで護ってくれた命の恩人だった。
「何でって……ここに私も住んでるからなんだぜ……。」
「あ、そうなんですね…」
(驚いたわ……まさかここで会えるなんて……。)
「へぇ??魔理沙は剣士なのね。だからあの時助けてくれた時も強かったのね。」
「まぁな。でもあの時は私もまだ未熟だったし,というか最近は妹までもが,剣士になりたいとか言っててよ…大変なんだぜ……。」
「あはは。魔理沙は美人だからきっと妹さんも美人なのでしょうね。」
「私は剣士だってーの!」
魔理沙とはかなり気が合う。優しいし面白い。それに何より話していて楽しいの。
今までの辛さが魔理沙と話すことで全てなくなっていくかのように……。
こんなにも近くに住んでいるのならばもう少し早めに会いに行けばよかったわ…。
「あら??こんな所で何をしているのかしら?」
私たちが話していると,ふと1人の少女が魔理沙に話しかけた。
「わ?!?!れ、霊夢……??
お前,黒の国へ行ってたんじゃ無いのか……?」
「ええ。行っていたわ。でも話が終わったから寄ってみたのよ。」
「寄ってみたのって…急に来るんじゃねーぜ……。」
(…顔真っ赤ね…魔理沙
なるほど……魔理沙はこの子が好きなのね……)
「ねえ。魔理沙。少しこっちに来て?」
私は顔が未だに赤い魔理沙をこっちへと引き寄せた。
「な、なんだぜ??」
「魔理沙,あの子のこと好きなんでしょ??」
「は?!?!?!ちょ……なんで分かるんだぜ……。」
「ふふ。貴方わかりやすいとよく言われないかしら?」
反応可愛いわね…この子。
「まぁ。貴方ならきっと大丈夫よ!自信を持ちなさい。」
「レミリア……。」
「ありがとうなんだぜ!私。きちんと自分の気持ち伝えてみるのぜ!」
「ええ、それじゃあ私は邪魔のようだし,そろそろ帰るわね。今度会った時には結果の報告を待っているわ。」
「お、おう!」
(魔理沙……きちんと言えたかしら……。というか妙に兵士たちがバタバタと騒がしいわね……戦争でもするのかしら……?)
「レミリア。」
ふと家臣に呼び止められた。
「え、あ、はい……」
「女王さまがお前をお呼びだ。」
……(え……?フランが私を……?)
「分かりました。」
(フランが私を呼んでいる…?何だろう……今までこんなこと無かったのにどうしたのかしら……)
「失礼します。お呼びでしょうか。女王様。」
私はそう言ってフランの部屋へと入った。
フランは静かに口を開き,私にこう言った。
「レミリア。」
「黄色の国を燃やし尽くすの。あなたも行きなさい。」
「……え……?」
私は一瞬,女王が,フランが何を言っているのかが理解できなかった。
(黄色の国って…今行った……)
「な、何故ですか?!なぜ黄色の国を……。」
「魔理沙。と言う女を知っている?そいつが,私を暗殺しようと企んでいるのよ。だから見せしめとして国を燃やすのよ。」
「な、何で…?魔理沙はそんなこと……」
「…そいつのことを知っているのね?」
「……っ……。」
「召使い。命令よ。黄色の国へ行って魔理沙を殺してきなさい。それとも私の,命令が聞けないのかしら??」
私はふとフランの顔を見た…
フランの目は正気の色ではなく,
その顔つきや瞳から本気なのだと気がついた…。
「……」
「……仰せの……ままに」
「宜しい。馬を貸してあげるわ。だから明日の午後のティータイムまでには帰ってきなさい。」
「………。」
(……っ……
女王の命令は……絶対…
フランを守れるのは……私だけ……)
「…行かな……きゃ……。」
「ふぅ……。」
「……」
「あれ??レミリアじゃねーか。
なにか忘れ物でもしたのか?」
「……。」
ぽかんとした表情の魔理沙。警戒なんて一切していない。当たり前よ…さっきまであんなに仲良く話していた相手に警戒なんてするはずがないわ……。
私は魔理沙に気が付かれないように,悟られないように腰からナイフを取りだし……そして……。
「……ごめんなさい……。」
「あ……え……??」
どさりと倒れる魔理沙。
ちょうどその場面で魔理沙の恋してる相手,霊夢が通りかかった。
「え…あ…あ……」
「魔理沙……!!」
気がついた頃にはもう霊夢が目の前に立っていた。
「どうして……?!ねぇ……お願い……!目を開けてよ……魔理沙…魔理沙……っっ……!!」
「いや……嫌だ……!私を……私を置いていかないで……!!」
霊夢は倒れている魔理沙を抱き抱え脇の腹から流れ出している血を必死に止めていた。だけど血なんてほとんど見た事のない霊夢の処置などたかが知れていた。
「……。」
「あ……れ……」
「……。」
「……ごめんなさい……。」
私は……魔理沙と…霊夢を殺した…。
ふたりが離れ離れにならないように……
同時に……痛みを感じない方法で……
「……私は……フランを守りたかった……
あの子の笑顔を守るために行動した……ただそれだけ……なのに」
どうして涙が止まらないの……??
「……う……うぅ……ごめん……ごめんね……。」
黄色の国は全て燃えた。
家も,人も,国ごと全て。
燃えた人々は誰か判別がつかないほどにまっ黒焦げに燃えていたのだと言う。
黄色の国に出かけていた他の国の住民や,赤の国の国民も燃えたため国民は酷く怒りに震えていた。
「女王様,今日のおやつはブリオッシュです。」
「やったぁ!!ありがとう!レミリア。」
「……。」
そうとも知らないフランは
無邪気に笑っていた。私はそんなフランをただじっと。ひたすら見つめることしか出来なかった。
うぉぉぉぉぉぉ!!!!!!
「人の命を弄び,暴虐の限りを尽くす女王を我々は決して許さない!!」
うぉぉぉおおおおお!!!
「女王を許すな!!自由よ!我らに!!」
(まぁ……当然こうなるわよね……)
怒れる国民たちを,白の窓から見つめて私はぽつりと呟いた。
やりたい放題していたのだから,国民だって黙っちゃいないだろう。
それに最近は戦争続きで,兵士たちだって敵ではないだろう。
「……これが運命……報いなのね……」
(それなら私は……その運命に抗うわ。どうせここまでやったのだから。
もう何も怖くないわ。)
「あ…レ…ミリア……。」
フランの部屋を開けると震えて膝を着いて泣いていた。
「……どうしよう……私……私……は……。」
「……。」
「死にたく……無いよぉ……助けて……レミリア…。」
「そっか。ならこうしましょう。」
「え……?」
妹を……フランを助けるためには……もうこうするしかない……。咄嗟に思いついた考えだから上手くいくとは限らない。でもそれでも私はフランを…妹を守りたいから。
「私の服を貸してあげるわ。あなたはこの服を着て逃げなさい。私はあなたの洋服を着て国民たちの方へ行くわ。」
瞬時に固まるフランの表情。その表情は今にも泣き出しそうだった。
「え…でも……そうしたらレミリアが……。」
「…。」
私は震えるフランをそっと抱きしめ,こう言った。
「大好きよ。フラン。」
「私があなたを守るから,だから,ずっとずっと,笑っていてね。」
「……っ……!」
それでもなお震えるフランに
私はこう伝えた。
「大丈夫。私達は双子なのよ?きっと……きっと誰にも分からないわ……。」
堰を切ったかのように泣き出すフラン。
その表情の中にはかつての優しいフランがいた。
その表情を最後に見れただけで私は幸せだった。
(もう…何も思い残すことなんて無いわ……)
さようなら。「フラン」
「あ……ああ……。行かないで……1人に……しないで……。お姉様ぁぁぁあああああああ!!!!!」
「見つけたぞ!!女王だ!!」
「覚悟しろ!!!大人しく捕まれ!!」
(来たわね……)
「私を誰だと思っているのよ!この……無礼者……!!」
「…………。」
(フラン……逃げきれたかしら……きっとあの子のことだから……大丈夫よね)
私が処刑さえされたら,もう誰も私たちが双子だってことに気がつける人はいなはずよ。だから…だからもう少しの辛抱よ……フラン……。
「あら……?何かしら?赤い鎧の女剣士さん。」
「…。」
突然私の前に来た少女。
その姿を見て私はすぐに分かった。きっと…いいえ。絶対にそうだと思った。
(似合ってるわね…赤い鎧が…)
「……貴方……本物じゃないでしょう?」
「……。」
「お姉ちゃんがここで働いていた時に,聞いていたのよ。女王に瓜二つの召使いがいることを。ね。」
「…。」
「…流石ね…」
「それで??どうするのかしら??今更私が本物じゃないことを国民に言うのかしら??そんなことをしたとしても国民は信じないと思うわよ?」
私がそう言うと
その子は少し考えた後にこう言った。
「…貴方はそれでいいの?散々こき使われて,捨て駒みたいに扱われて,最終的にはこんな結末…まだ私が貴方を女王じゃないと言えば……」
(ほんとに…魔理沙が言っていた通りの子だな…魔理沙に似て優しくて,人思いで…それでいて強くて……でもだからこそ…… )
「優しいわね。あなた達兄弟は。」
「……え……?」
「貴方,魔理沙の妹でしょ?魔理沙が言っていた特徴がそのままなのよ。」
その瞬間,その少女の目が大きく見開かれ,なぜ知っているのか。と言った表情になった。
「…どうしてお姉ちゃんを知っているの……?」
「どうしても何も,あの子を殺したのはー。」
「……!!!!!!!!」
「これより,女王の処刑を決行する!!!」
「…。」
結局,赤い女剣士は私が偽物だということを言わなかったようね。まあ当然よね。今それを言うと私のことを処刑するのが難しくなる。
それに姉の敵を処刑するチャンスをみすみす逃すわけが無いものね…。
「……。」
(見つけた……。)
私に向かって様々な怒号を飛ばす国民たちの真ん中に佇んでいる1人の少女。
私の……可愛い妹…。
「……っ……。」
(お姉様は,まっすぐと私を見つめている。私を見つけたのかな……?今すぐにでもお姉様の元に駆け出したい……お姉様。って名前を呼びたい……お姉様と一緒に…この世界から抜け出したい……。だけど……それをしたら,お姉様がせっかく作ってくれたチャンスを逃してしまう……。)
「処刑を開始する!!!!」
お姉様の首に,処刑用の器具が着けられた。
お姉様は静かに目を瞑り,その時はただ静かにずっと待っていた。
(いや……嫌だ……死なないで……お姉様…)
「執行!!!!!!!!」
「…」
ちらりとお姉様は私の方を見た。
「ありがとう。」
「…あ…ああ……あ……ぅ……」
ぅああああああああああああ……。
私の魂の叫びは,国民体の歓声で掻き消された。
「ねぇ?フラン??
もしも生まれ変われたらさ。
その時はまた遊んでね」