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片思い 🍆🍌

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片思い 🍆🍌

5 - 第9話 惜別(時雨side)

♥

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2022年09月25日

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※注意事項は前回と同じです。







⛄side

抱きしめた彼からは、ほんのりと柑橘系のシャンプーの香りがした。

ぞっとするほど細い体躯を覆うふかふかの部屋着。

もともと色白の肌は体調が悪そうに蒼白で、

⛄「…あのさ、」

🍌「うん」

穏やかに此方を見つめる瞳には色が灯っていない。

柔和な微笑みが、今はどうしようもなく辛いのに、ね、そんな顔、しないで

⛄「俺、ずっと、ずっ、と」

顔にじわじわと熱が集まっていく。

ああもうこのまま、存在ごと消えてしまいたい。

もう、どこかに行ってしまいたいと思うほどに俺は、

⛄「好きだったよ」

翡翠の瞳がぱっと大きく見開かれ、その表情が傷ついた子供のように歪んだ。

薄い唇がはくりと息を呑んで空白を紡ぐ。

⛄「…好きだった」

噛み締めるようにしてひとこと、ひとこと。

柔らかな沈黙が肌を刺すように痛い。

🍌「…ありが、と、う」

ありがとう。

たった5文字が、俺の失恋を物語っていた。

優しいおんりーはこういう時はっきり言ってくれない。

ごめん、俺が好きなのは別の人なんだ。

そうやって言ってくれたら、楽なのに。

一瞬で殺めてよ。

拷問するみたいにじわじわ殺さないで、

🍌「うれしか…っ」

腕の中に身を預けていた彼の体が、不意にかくんと傾いた。

片腕にそっと寄り掛かる重みには、暖かさがあって、

⛄「おんりー、?」

厚い前髪に覆われているせいで目元が見えない。

美しい造形をそっと覆う影を払うと、彼の睫毛は舌を向いていた。

⛄「おんりー、!?」

畳みかけるように呼び掛けても、あの声は返ってこなかった。

緩慢に上下するあたり、呼吸は出来ていて、

でも、意識が、

⛄「き、…っ、救急車!」

1、1、9。

人生でこの番号に電話をかけるのは、これが初めてだった。

膝の上で眠りこける彼の姿は変わらず美しくて、




このまま、俺のものに出来たら、よかった。




ねぇおんりー、起きたら、目が覚めたら、

ちゃんと俺のこと振ってね?



このまま、死んでしまったら?

かえって、こなかったら、




嫌な汗が背中をつたう。




おんりーはまだ、望む未来をかなえられていないのに。




⛄「ドズルさん!おんりー倒れちゃったんで、救急車要請しました!!」

🦍「え、!」

電話越しに焦る声が聞こえる。

ぼんさん、ねぇ、ぼんさん。

そろそろ潮時なんじゃないんですか、ね。

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