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※注意事項は前回と同じです。
⛄side
抱きしめた彼からは、ほんのりと柑橘系のシャンプーの香りがした。
ぞっとするほど細い体躯を覆うふかふかの部屋着。
もともと色白の肌は体調が悪そうに蒼白で、
⛄「…あのさ、」
🍌「うん」
穏やかに此方を見つめる瞳には色が灯っていない。
柔和な微笑みが、今はどうしようもなく辛いのに、ね、そんな顔、しないで
⛄「俺、ずっと、ずっ、と」
顔にじわじわと熱が集まっていく。
ああもうこのまま、存在ごと消えてしまいたい。
もう、どこかに行ってしまいたいと思うほどに俺は、
⛄「好きだったよ」
翡翠の瞳がぱっと大きく見開かれ、その表情が傷ついた子供のように歪んだ。
薄い唇がはくりと息を呑んで空白を紡ぐ。
⛄「…好きだった」
噛み締めるようにしてひとこと、ひとこと。
柔らかな沈黙が肌を刺すように痛い。
🍌「…ありが、と、う」
ありがとう。
たった5文字が、俺の失恋を物語っていた。
優しいおんりーはこういう時はっきり言ってくれない。
ごめん、俺が好きなのは別の人なんだ。
そうやって言ってくれたら、楽なのに。
一瞬で殺めてよ。
拷問するみたいにじわじわ殺さないで、
🍌「うれしか…っ」
腕の中に身を預けていた彼の体が、不意にかくんと傾いた。
片腕にそっと寄り掛かる重みには、暖かさがあって、
⛄「おんりー、?」
厚い前髪に覆われているせいで目元が見えない。
美しい造形をそっと覆う影を払うと、彼の睫毛は舌を向いていた。
⛄「おんりー、!?」
畳みかけるように呼び掛けても、あの声は返ってこなかった。
緩慢に上下するあたり、呼吸は出来ていて、
でも、意識が、
⛄「き、…っ、救急車!」
1、1、9。
人生でこの番号に電話をかけるのは、これが初めてだった。
膝の上で眠りこける彼の姿は変わらず美しくて、
このまま、俺のものに出来たら、よかった。
ねぇおんりー、起きたら、目が覚めたら、
ちゃんと俺のこと振ってね?
このまま、死んでしまったら?
かえって、こなかったら、
嫌な汗が背中をつたう。
おんりーはまだ、望む未来をかなえられていないのに。
⛄「ドズルさん!おんりー倒れちゃったんで、救急車要請しました!!」
🦍「え、!」
電話越しに焦る声が聞こえる。
ぼんさん、ねぇ、ぼんさん。
そろそろ潮時なんじゃないんですか、ね。