初音ライダー剣
第13話
“奸計”
小規模な工場の入り口でトリロバイトアンデッドと戦うブレイドはやや苦戦を強いられていた。ブレイラウザーをかざしてトリロバイトアンデッドの攻撃を回避するブレイドだが、トリロバイトアンデッドの体を硬化させる能力の前に攻撃が中々通らない。
ミク「く…」
ブレイドは歯噛みしつつも、ブレイラウザーを振るってトリロバイトアンデッドを斬りつける。だが、トリロバイトアンデッドは体を金属の如く固めて防御する。そうして攻めあぐねるブレイドに対し、トリロバイトアンデッドは左腕の爪を伸ばしてブレイドを攻撃してくる。だが、ブレイドはこれをブレイラウザーで防ぐ。攻めあぐねているのはお互い様だ。
ミク「…このッ!」
ブレイドは力を込めてブレイラウザーを振るい、トリロバイトアンデッドを退ける。そして、その直後にオープントレイを開き、♤2と6のラウズカードを取り出す。
「SLASH」
「THUNDER」
「LIGHTNING SLASH」
2枚のラウズカードのパワーを得たブレイドはブレイラウザーでトリロバイトアンデッドを斬りつける。斬れ味を強化し、電撃のエネルギーを帯びたブレイラウザーの一撃はトリロバイトアンデッドの硬い装甲を難なく斬り裂く。そして、トリロバイトアンデッドを撃破したブレイドはブランクのラウズカードを投げてトリロバイトアンデッドを封印した。だが、直後に謎の声がする。
矢沢「さすがだなぁ、俺の下僕を軽々倒すとは。」
ミク「誰?」
ブレイドは声がした方向に目を遣る。そこにはピンクのアロハシャツを着た青年・矢沢が立っていた。
矢沢「今ので十分消耗したろ。じゃ、次は俺が相手な!」
矢沢は即座にカプリコーンアンデッドへと変化し、早々に正体を明かした。カプリコーンアンデッドは手にした三日月状のブーメランをブレイド目掛けて投げる。
ミク「っ!」
ブレイドは右に身を反らしてブーメランを回避する。ブーメランは弧を描いて周囲の物を斬り裂き、カプリコーンアンデッドの元に戻ってきた。ブレイドはカプリコーンアンデッドがブーメランをキャッチしたのと同時に、ブレイラウザーを構えて接近戦を仕掛けようとする。
矢沢「おっと、誰が反撃して良いっつった?」
ブレイドが突撃しようとした矢先、カプリコーンアンデッドは右手の指をパチンと鳴らす。すると、アンデッドがもう1体出てきた。そのもう1体のアンデッド・プラントアンデッドは持前の蔦で人を1人捕縛していた。その捕縛されている人とは、何と桃音モモだった。
ミク「モモちゃん!?」
モモ「ミクさん、ごめん…」
ブレイドはカプリコーンアンデッドらがモモを捕らえていたことに驚く。モモは涙ぐんだ目をしている。
矢沢「さて、まずは変身を解いてもらおうか。断ったら、言うまでもねえよな。あ?」
モモ「ひっ!」
カプリコーンアンデッドは捕らえたモモの喉元にブーメランを突きつけてブレイドを脅す。
ミク「…っ!」
ブレイド/ミクは歯を食いしばった。こういう卑劣な輩は許せない。だが、この離れた距離ではどうしても攻撃が届く前にモモが殺されてしまう。ここはヤツの言う通りにするしかない。ブレイドは迷いなくブレイバックルを外し、オリハルコンエレメントを投影してくぐり、ミクの姿に戻った。
ミク「…これでいいでしょ?」
矢沢「OK。んじゃ、次はそのベルトを壊してもらおうか。」
ミク「な…!?」
ブレイバックルを外したミクに、カプリコーンアンデッドはさらにブレイバックルを壊せという条件を突き立てる。
矢沢「分かってんのか?こっちにはコイツがいるんだぜ?」
モモ「ひっ!み…ミクさん…」
カプリコーンアンデッドはモモの首元にブーメランの先を突き付け、そこから血を流させる。モモは両腕を拘束されて抵抗できず、涙を流して首を左に振る。
ミク「…分かった。」
ミクはブレイバックルを地面に捨て置いた。しかし、これこそがカプリコーンアンデッドの狙いだった。カプリコーンアンデッドはプラントアンデッドに指示し、丸腰になったミクを攻撃させる。
ミク「あッ!?」
ミクはプラントアンデッドの蔦の鞭を受ける。
一方、ギャレンとレンゲルは波止場で戦闘を繰り広げていた。ギャレンは走りながらレンゲルに銃撃を撃つ。レンゲルは銃撃をレンゲルラウザーで防ぎながらギャレンに接近戦を仕掛けようとする。しかし、ギャレンは銃撃が効果的になるように適度な距離を取って戦いを展開する。レンゲル/レンはその状況に苛立ってきた。
レン「逃げてねえで近づいて来い!チキン野郎!」
レンゲルは距離を取って戦うギャレンにヤジを飛ばす。ギャレンはそれを無視してレンゲルに銃撃を撃つ。レンゲルはそれをレンゲルラウザーで防ぐと、再びギャレンに接近する。ギャレンは高く跳んでレンゲルの一撃を回避すると、空中で一回転してレンゲルの懐を取り、そこにギャレンラウザーを近づけて銃撃を浴びせる。
レン「うがッ!?」
レンゲルはギャレンに思わず懐を取っての攻撃に怯む。
レン「てめえ…よくも!」
MEIKO「言う通り近づいてやったけど?」
レンゲルは激昂してギャレンを睨み、レンゲルラウザーを取ってギャレンを薙ぎ払おうとする。しかし、ギャレンの銃撃に阻まれ、攻撃が届く間合いまで接近できない。
レン「ぐ…」
レンゲルは攻めあぐねて怯む。ギャレンはその隙に♢2、4、6のラウズカードを取り出す。レンゲルは「REMOTE」のカードを使おうとするが、これもギャレンの銃撃に阻まれる。
「BULLET」
「RAPID」
「FIRE」
「BURNING SHOT」
ギャレンはギャレンラウザーを構えて炎の弾丸を高速で連射する。
レン「うああああああ!」
レンゲルは炎の弾丸を連続で受けて倒れ伏した。そして、レンゲルバックルからスピリチアエレメントが投影され、変身が解除された。同時に、レンから元のリンへと戻った。
リン「うう…」
リンは寝込んだまま頭を抱える。弾丸は全弾命中したが、ダメージはそれほどでもない。全て急所を外していたからだ。
MEIKO「目が覚めた?」
リン「…MEIKO姉…」
MEIKO「行くわよ。ミクがピンチみたい。」
リン「…うん!」
MEIKOは変身を解いてリンに近寄り、右腕を差し伸べる。リンはまだ本調子でないが、MEIKOの手を取って立ち上がった。
ミクは小工場の入り口でプラントアンデッドの蔦の鞭とカプリコーンアンデッドのブーメランの2重攻撃を受けていた。ミクは腕をかざしてプラントアンデッドの蔦を受けようとするが、生身で受けきれるはずがなく、蔦の一撃を受けてそのまま地面に倒れてしまう。そこに、カプリコーンアンデッドが三日月状のブーメランを投げてミクを攻撃する。ミクはこれを間一髪で起き上がって回避した。
矢沢「おいおい、誰が回避していいっつったんだ?」
カプリコーンアンデッドは捕らえているモモの首根を掴んで力を入れる。
モモ「あっ…」
モモは首を掴まれて足掻くが、拘束されて抵抗できない。その目からは涙が流れてきた。何もできない悔しさと、殺されるかもしれないという怖さの両方の涙だ。
ミク「…」
矢沢「へっ!次は避けんなよ!」
ミクは怒りの目でカプリコーンアンデッドを睨む。カプリコーンアンデッドはミクに攻撃を避けないよう忠告した後、ミクの足目掛けてブーメランを投げる。
ミク「うっ!」
ブーメランはミクの足を斬り裂き、ミクの動きを封じようとしてきた。ミクは膝をついて地面に倒れそうになった。
矢沢「これで避けたくても避けられねえだろ。もっとも、こっちにはコイツがいんだけどな!」
モモ「ミクさん…」
カプリコーンアンデッドは再びブーメランを手に取ってミクに投げつけようとする。モモはそれを涙ぐみながら見ているしかできなかった。その目がミクに闘志を再燃させた。
ミク「…っ!」
ミクはブレイバックルを拾って再び立ち上がった。両足にダメージを負ったミクだが、気力で立ち上がった。
ミク「…許さない!絶対許さない!」
ミクは足の痛みを抑え、カプリコーンアンデッドらのいる方へ向けてゆっくり歩いていく。
矢沢「へ、バーカ!こっちにはこれがあんのを忘れたか?」
カプリコーンアンデッドは右手の指をパチンと鳴らす。
モモ「あぐっ!?」
プラントアンデッドはカプリコーンアンデッドの合図を受けて、捕らえているモモを締めつける。ミクは彼女を救うべく、ブレイバックルを装着してオリハルコンエレメントを投影させる。
ミク「変身!」
「TURN UP」
投影されたオリハルコンエレメントはカプリコーンアンデッドとプラントアンデッドを弾き飛ばし、ミクをブレイドへと変身させる。
矢沢「…てめ…これを狙って…だがまだこっちが有利だぜ?」
カプリコーンアンデッドの言う通り、形勢は未だアンデッド側が有利だ。ブレイドは1人、アンデッドは2体。しかも、プラントアンデッドはまだモモを捕らえている。だが、別のところから思わぬ助っ人が来た。カプリコーンアンデッドの左からミサイルが2発飛んできた。
矢沢「うっ!?」
リン「でやあッ!」
カプリコーンアンデッドはミサイルの直撃を受けて怯む。ミサイルが飛んできた先からはレンゲルがグリンクローバーに乗って出てきた。レンゲルはグリンクローバーを走らせてそのままプラントアンデッドに突っ込み、プラントアンデッドに車体ごと体当たりを敢行する。プラントアンデッドはこの突撃を寸でのところで回避するが、モモを捕らえたままでは満足に動けず、怯んで体制を崩してしまう。レンゲルはこの隙を逃さず、グリンクローバーを降りてレンゲルラウザーでプラントアンデッドを攻撃する。プラントアンデッドはこの一撃でよろけ、捕らえていたモモを解放してしまう。
モモ「きゃっ!?」
モモは倒れそうになるが、すぐにレンゲルに抱えられ、その場に降ろされた。
リン「モモ、大丈夫?」
モモ「…うん。」
MEIKO「危なかったわね。」
レンゲルがモモを助けた直後にギャレンも現れ、ブレイドの近くに駆け付けた。
リン「…よくも!」
レンゲルはプラントアンデッドを睨み、カードデッキから2枚のカードを取り出し、ラウズする。
「BITE」
「BLIZZARD」
「BLIZZARD CRUSH」
リン「らああああ!」
レンゲルは高く跳び上がり、両足に冷気のエネルギーを纏ってプラントアンデッドにクロスキックを蹴り込む。プラントアンデッドは蹴り飛ばされて大きなダメージを負い、倒れ伏してアンデッドクレストを開いた。レンゲルはそこにラウズカードを投げ込み、プラントアンデッドを封印した。
MEIKO「残るはあんただけね!」
ギャレンとブレイドがカプリコーンアンデッドを睨む。
矢沢「ぐ…」
短時間で一気に形勢が不利になったカプリコーンアンデッドは最後の足掻きにブーメランを持ってブレイドに斬りかかる。しかし、怒りに燃えるブレイドはブレイラウザーを思い切り振り下ろしてカプリコーンアンデッドを斬り裂く。
矢沢「ぐっ!」
カプリコーンアンデッドはブレイドの斬撃を真正面から受けてその場に大の字に倒れた。ブレイドとギャレンはこの機を逃さず、ラウザーからラウズカードを取り出してラウズする。
「KICK」 「DROP」
「THUNDER」 「FIRE」
「LIGHTNING BLAST」 「BURNING SMASH」
ブレイドとギャレンはポーズを取って足に力を込め、高く跳び上がる。
ミク「はああああ!」 MEIKO「らああああ!」
ブレイドは電撃、ギャレンは炎のエネルギーを纏った足でカプリコーンアンデッドにキックを蹴り込む。カプリコーンアンデッドは大きく蹴り飛ばされ、大ダメージを負い、蹴り飛ばされた先でアンデッドクレストを開いた。ブレイドはそこにラウズカードを投げ込み、カプリコーンアンデッドを封印した。
モモ「…ごめんなさい、皆…」
モモは泣きながらミクたちに謝る。
MEIKO「…BOARDで待ってるように言われたでしょう?」
モモ「でも私…リンちゃんが心配で…」
MEIKOはモモを諭す。そこにリンも謝罪してきた。
リン「…私も、心配かけてごめん。」
モモ「…リンちゃん…」
リンはモモに優しく謝る。モモはまたしても泣きたくなった。
リン「…多分さ、私、今後も迷惑かけるかもしんないけど、友達でいてくれる?」
モモ「…うん。私、リンちゃんがいないとダメなの。」
リンとモモは今後も互いに一緒に友達でいようという。
ミク「…何か、良いな。そういう風に思ってくれる人がいるのって。」
ミクはリンとモモのが少し眩しく思えた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!