テラーノベル
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伶
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スタートーー!
夜の港町。
潮風が静かに波を運び、埠頭に並ぶコンテナを月明かりが銀色に照らしていた。
午後十一時五十分。
街は眠りにつこうとしていたが、一つだけ煌々と明かりが灯る建物があった。
海都市立美術館。
今夜、この美術館では世界的に有名な宝石展が開かれている。
展示の目玉は、「ルミナス・スター」と呼ばれる、青白く輝く伝説の宝石。
その価値は金額では測れないと言われ、厳重な警備が敷かれていた。
館内には警備員が巡回し、監視カメラが死角なく並ぶ。
「異常なし。」
無線の声が静かな展示室に響く。
宝石はガラスケースの中で静かに輝いていた。
その時。
一人の警備員が足を止める。
「……?」
床に、一枚の白いカードが落ちていた。
拾い上げると、そこには美しい銀色の文字が記されている。
『月が天頂に昇る時、星の輝きは私の手の中へ。』
──怪盗ファントム
警備員の顔色が変わる。
「予告状だ!」
館内が一気に騒然となる。
⸻
午後十一時五十九分。
美術館の外には大勢の報道陣と野次馬が集まり、警察車両の赤色灯が夜を染めていた。
「本当に現れるのか?」
「怪盗ファントムだぞ。」
誰もが息をのむ。
時計の針が十二時を指した、その瞬間――。
パンッ!
夜空に一発の花火が打ち上がった。
続いて、青い煙が屋上を包む。
「屋上だ!」
警備員たちが一斉に駆け出す。
しかし、そこには誰もいない。
「いない……?」
その時、展示室から悲鳴が響いた。
「宝石が!」
全員が駆け戻る。
ガラスケースは無傷。
鍵も壊されていない。
それなのに――。
ルミナス・スターだけが、跡形もなく消えていた。
ケースの中には一輪の白いユリと、一枚のカード。
『本当に価値あるものは、決して売り物にはならない。』
館内は騒然となる。
だが、その誰もが気づいていなかった。
美術館の裏路地。
黒いコートをまとった一人の青年が、月を見上げていた。
白いマントが夜風に揺れる。
その手には、確かにルミナス・スターが握られていた。
しかし彼は宝石を見つめることなく、小さくつぶやく。
「君は、まだここにいるべきじゃない。」
青年は古い教会の鐘楼へと向かい、宝石を小さな木箱へ納める。
その箱の中には、一枚の古い写真が入っていた。
写真には、若き日の天文学者と写真家が笑顔で並んでいる。
写真の裏には、かすれた文字。
「星は、未来へ道を示す。」
青年は写真を静かに見つめる。
「……約束は守る。」
その瞬間、遠くからパトカーのサイレンが近づいてきた。
青年は帽子を軽く持ち上げ、微笑む。
「それでは、また。」
白いカードが夜風に舞う。
次の瞬間、鐘楼の屋上から黒いグライダーが滑るように飛び立った。
月明かりを背に、その姿は夜空へ溶けていく。
⸻
一方、その頃。
東京都・帝丹高校。
写真部の部室では、一人の少女が静かにフィルムカメラを磨いていた。
白石美月。
『漆黒のメモリー』での事件から数か月。
彼女は今も、倉橋俊介から受け継いだ言葉を胸に、シャッターを切り続けていた。
窓から差し込む月明かりが、机の上に置かれた写真を照らす。
そこへ、一通の封筒が風に乗って窓から舞い込んできた。
「えっ?」
美月は驚きながら封筒を開く。
中に入っていたのは、一枚の白いカード。
銀色の文字で、こう書かれていた。
「あなたのカメラに眠る”星の記憶”を、次の満月の夜にいただきます。
──怪盗ファントム」
美月の表情が凍りつく。
「……私のカメラ?」
静かな夜風が部室を吹き抜ける。
月は何も語らず、ただ静かに街を照らしていた。
そのカメラに隠された秘密とは何なのか。
そして、「怪盗ファントム」の本当の目的とは――。
新たな物語の幕が、今、静かに開こうとしていた。
⸻
――プロローグ 終――
次回は第1章「写真部に届いた挑戦状」です。
ここから美月と怪盗ファントムの知恵比べ、そして新たなミステリーが本格的に始まります。
コメント
3件
おお、怪盗ファントム、かっこよすぎるだろ…! 予告状から華麗な盗み、そしてグライダーで夜空へ消えるまでの流れ、完全に絵になってるわ。しかもただの宝石泥棒じゃなくて、ちゃんと理由があって動いてる感じがするのがミステリアスでいい。美月ちゃんのカメラに隠された“星の記憶”って何なんだろう。次回の知恵比べ、めっちゃ楽しみにしてる🔥