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中学校の最終学年を迎える頃、私は周囲のプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。東京の進学校に通っている以上、当然のように高校受験は避けられないものとされていた。学校もそうだったし、親や教師からの期待も感じていた。しかし、私自身はその期待に応えられる自信がまったくなかった。
成績は常に中の下。都会の競争に晒された中で、勉強に集中することができず、心はどこか遠くをさまよっていた。哲学や心理学に興味を抱き、自分の内面を探ることが私の一番の関心事だったが、そんな内向的な姿勢が、テストや受験対策という現実には役立たなかった。
受験が迫るにつれて、周りのクラスメートたちは塾や家庭教師を利用し、真剣に勉強に取り組んでいた。一方で、私は勉強に対して焦りを感じつつも、机に向かう時間は増えなかった。集中力が続かず、ノートを開いても頭の中には「なにか」という漠然とした疑問ばかりが浮かび、問題集の解答にはたどり着けないままだった。
受験当日がやってきたとき、私は覚悟を決めることができていなかった。試験会場に向かう電車の中でも、心の中では「なぜこの道を進むのか」「自分が本当にやりたいことは何なのか」と、ひたすら問いを繰り返していた。そんな不安定な心持ちで、当然のように試験も上手くいくわけがなかった。問題文を読んでも頭に入ってこず、時間が過ぎていく。焦りを感じれば感じるほど、答えは遠ざかっていった。
結果が発表された日、私は敗北感と共にそれを受け入れた。第一志望の高校には落ち、第二志望もダメだった。合格通知が届いたのは、滑り止めとして受けていた私立の高校だけだった。そこは、学びたいことも見つからないまま、仕方なく受けた学校だった。
両親には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。都会へ送り出し、期待していたことを裏切ってしまったという思いが強くあった。父も母も、私を責めることはなかったが、私は逆に重荷に感じられた。沈黙の中に失望が隠されているように思えてならなかった。
一人でアパートに戻り、私はベッドに倒れ込み、天井をじっと見つめた。高校受験に失敗したことで、自分のこれからの道が閉ざされたように感じた。この先、何を目指して進んでいけばいいのか、全く見えなくなってしまったのだ。
しかし、そんな中でも、心の中で微かに光る「なにか」は、まだ消えてはいなかった。それが何であるかは依然として分からなかったが、私はそれを求めて彷徨い続けることを決めた。高校に進学すること自体にはほとんど興味が持てなかったが、自分の「なにか」を見つけるために、立ち上がらなければならないと感じたのだ。
高校受験の失敗は、私にとって初めての大きな挫折だったが、それは同時に、新たな探求の始まりでもあった。この失敗が私をどこへ導くのかはまだ分からなかったが、私はその未知の道を進むしかないと思い始めていた。