ある日のことだ。
父が海底に訪問してきたとき、赤紫色の竜が居た。
青色の鋭い目をした竜だ。誰かと思えば兄らしい。
自分に兄がいたという喜びが明らかに勝った。
兄はとても優しくて、俺を甘やかした。
しばらく時が経ちて、その兄には助手がいると
分かった。助手に会えば自分と似たものが居た。
牛と龍を掛け合わしたような生き物である。
黄色の鱗をしていて一角獣。
気の弱そうな生き物であった。俺は彼に似た部分を感じ
気軽に話しかけていた。その生き物の正式名称は麒麟
名はクルルである。クルルはよく親切にしてくれた。
そして
「昔は身内に虐められたんだ。」
とよく俺に言い聞かせていた。
「けど、サーフィーには見た目に違和感がない。
神は不思議なもので腕が何本あろうが神聖だ。」
俺のことを神に近いんだとも言われた。
他の人に言われたら癪(しゃく)に障るが
クルルについては説得力があった。
けど、それは時間が経ってからだ。
クルルは俺が兄と喧嘩してしまったときに
暴走しそうになった。鱗が剥げて白い皮膚が出たと思うと
腕が六本もある何かになったから…
破壊神のような何かになったから。黄金の着物や
頭が痛くなる感覚はよく記憶していた。
そのクルルこそ醜い姿を隠したいと麒麟になっていた。
なろうと思えば人になれる。それが何よりも羨ましかった。
だから、術まで教えてもらって俺は人に変化した。
理由は馴染むためだ。隠すためだ。俺は教師をした。
かつて竜界と人が混じり合った所で。
戦争の後でどうにもならなかったが
サーガラに言えばすぐに直してくれた。周りの竜とも協力して
種族関係なく通える学校を作った。
勿論、教師の俺がちゃんとしないといけない。
ここには人から魔物まで全ての種族が通った。
俺は各世界の文化を教えて、平等であるべきと訴えた。
きちんと生徒は耳を傾けてくれていた。
その中で勉強に熱心だったのは人間界の少女…セノだった。
彼女は百年という短い間の中でよく頑張っていた。
だから成績も性格も良い彼女を気に入ったのだが
その頃、竜が教師をすることなんてなかった。
だからか俺は人に化けていたのだが
セノには見抜かれてしまった。
「先生は竜なのに授業がお上手ね。」
突然そう言われ焦ったが
どうやら首筋にある鱗で見抜かれたそうだ。
仕方無しに理由を説明して、騙してすまないと謝った。
「俺は、西洋竜にも東洋竜にも成れないのだから
人に化けなければ笑い者になる。
だから、セノに笑われても文句一つ言えないんだ。」
そう口にすると手に着けていた紐を解いて
竜の姿になった。青い鳥のような翼と花びらのような鱗。
竜のわりにはシュッとした顔と胴体。
目元にある傷のような赤い模様。全てをも晒した。
セノは驚かなかった。笑いもしなかった。
ただ、黙って抱き締めてくれた。
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