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翌日、メイは副司令官に呼び出された。
凌の鋭い目がメイを見つめ、彼女の緊張した面持ちが一層強まった。
「霜月メイ、なぜ単独行動に出た?」凌の声が冷たく響く。
「はい、エリナさんが連れ去られ緊急事態と判断しました」メイは緊張しながら答えた。
凌は冷ややかな表情を崩さずに続けた。
「ならば、なぜ罠だと分かった?あのまま部隊が魔獣に囲まれたら
多くの犠牲者が出ただろう、それが分かったのか?」
「それは...」メイは言葉に詰まった。
自分でもなぜ罠だと気付いたのか分からなかった。
あの時、魔獣がメイに近づき、死の恐怖を感じた瞬間
何かが彼女に警戒を促していたのだ。しかし
それを凌に伝えることはできなかった。
凌は困惑しているメイの様子をじっと見つめた。心の中で考える。
(霜月メイの資料を見たが、訓練学校では優秀だった。
成績も戦闘能力も上位クラスだ。しかし、なぜ魔獣は霜月を襲わない?
魔獣に意思があるとでもいうのか?)
凌はメイの顔に近づき、何かを探っているかのように見つめる
メイ(こ、こわい...)と思いながらも凌に問いかける
「あ、あの副司令官、魔獣はなぜ群れで襲わないのですか?」
本来、魔獣は動物や精霊が邪悪な呪いをかけられ、
その邪悪さが増殖することによって生まれると伝えられている。
その魔獣には本能のまま群れることはあっても、
人間のように知恵を使うことはないとされてきた。しかし、
昨日の戦闘では魔獣が少女をさらい、罠を仕掛けた。
凌は今までとは違う何かに違和感を覚えていた。
「もとは動物と精霊だった...」メイが口にした。
凌は冷たく返した。「訓練学校で習っているはずだが?」
「わ、忘れちゃったのかな」ごまかすメイ
「霜月、前日の銃訓練では最下位だな」
「は、はい...」
凌は冷たい眼差しをメイに向け、指令室の空気が一瞬で張り詰めた。
彼の心には疑念が募っていた。なにかが違う。なにかがおかしい。
凌はゆっくりとメイの周りを歩きながら、その視線を一瞬たりとも外さなかった。
「訓練学校では銃も剣も上位クラスだったお前が、なぜ最下位にいる?」
「そ、それは...その...」
持っていたペンでメイの胸を突き
その眼差しをさらに鋭くする。
「お前は何者だ?」
凌の問いは鋭く、まるで刃のように彼女の心に突き刺さった。
メイは凌の鋭い視線から逃れることができず、その場に立ち尽くした。
二人だけの指令室には、凌の言葉だけが響く。
メイの背筋が凍るような感覚に包まれ、
息を呑む音さえ聞こえるほどの静寂が漂っていた。
凌の目は鋭く光り、その視線は一瞬たりともメイから逸れなかった。
その時、ドアが開き、國光が現れた。
「あれ、おじゃまだった?」國光が場の空気を和らげるように言った。
凌はすぐに姿勢を正し、「國光様」と敬礼した。
國光は凌の頬をつまみながら、
「凌、またそんな怖い顔しちゃって」と笑顔で続けた
「昨日の件で呼び出しておいてその顔はないでしょ」
凌は一瞬だけ表情を緩め、「はい、では報告いたます」と答えた。
凌はメイに向き直り
「もう下がれ、だが私はお前を疑っていることを忘れるな」と冷たく言い放った。
奥で國光が手を振る中、メイは部屋を後にした。
「失礼しました」
凌の冷たい視線を思い出す。「お前は何者だ?」という言葉が
心の中で何度も反響していた。
次の日、メイと翔太はタケルとエリナの見舞いに来ていた。タケルの病室に入り、
カーテンを開けると、タケルとエリナがまさにキスをしようとしている瞬間に遭遇した。
「えっ!ご、ごめん!」とメイが慌てて言うと、エリナも顔を赤らめながら、
「違うの!これは誤解しないで!ただ差し入れを持って来ただけ」と釈明し、
恥ずかしさに顔を赤らめつつ、エリナは病室を後にした。
彼女の元気な様子に、メイは心から安堵した。
翔太は呆れたようにタケルに言った。「お前、病院で何やってんだよ。」
タケルは不満げに返した。「そっちこそ、今いいところだったのに来るなよ!」
メイは笑顔で「元気そうでよかった」と言うと、三人は一緒に笑い合った。
笑いの中、翔太が真剣な顔で話を切り出した。
「最近、魔力が強くなった魔獣が各地方で暴れているらしいぞ」
タケルは驚いて問い返した。「魔力が強くなった?」
「ああ、以前なら都に来なかった魔獣が、最近は都に出現するようになったし
集団で行動したり、待ち伏せしたりしていたのはおかしいと思わないか?
魔獣の中で何かが変わった可能性がある」
タケルは眉をひそめた。「人間みたいに知恵がついたら厄介だぜ」
翔太も深刻な顔をして答えた。「ああ、今は邪獣までしか見てないが
鬼獣まで出てくるようになったら、太刀打ちできるかどうか...」
メイは驚いて聞き返した。「そんなに強いの?」
翔太は頷いた。「強いというか、魔力を持って攻撃してくるやつらだ
俺たちの持ってる武器が通用するかどうか怪しい」
タケルは腕を組んで言った。
「隊長クラスなら魔剣術も扱えるが、俺たちはまだ使えない」
メイは連が魔獣を制圧した時のことを思い出した。
闇を切り裂くような凄まじい光と稲妻が魔獣の体を引き裂いた光景が
鮮明によみがえる。「あれが魔剣術……」
翔太は続けた。「そうだ。明日、各地から司令官が集まるそうだ
今回の魔獣に対する対策会議が開かれるらしい
俺たちも警備にあたることになってるがタケル、お前はどうする?」
タケルは目を輝かせて答えた。「もちろん行くさ!
いつまでもこんなところにいるわけにいかない
それにエリナちゃんとさっきの続きもしないとな」と、興奮気味に笑った。
三人は再び笑い合い、明日の健闘を誓った。