ガソリン 近道 保志
バタン! 突然、この狭い貯蔵庫のどこかから扉の開閉の音がした。驚いてポケットに入れようとした缶詰が床へと落ちてしまった。辺りを見回す。
殻の缶詰がコロコロと壁際へと転がる。
「誰だよ!!」
「うわ!! 一体誰?!」
俺は背筋がゾクリとした。出入り口は一つしかなかったはずだ。さっき、トンネルから入って来た扉しかない。
「ねえ、おじさん。目に見えない扉がこの部屋にはあるの?」
「さあ? わかんないけど……誰かいたらいたらで、なんかマズイよな。徹くん気をつけた方がいいかもな」
「あ、やっぱり誰かいたんだよ! おじさん見て!」
徹が金属の壁の一部を指差した。俺もその方向を見ても……。
「え? うん? 徹くん。何が見えるのかな?」
「ほら! そこに扉があった! 金属の壁でよくわからなかったけれど、もう一枚。扉があったよ。おじさん! ほらほら!」
うーん? 確かに……よく見ると……。いや……こりゃ、扉かな? あ……扉だ……。取っ手が付いている。
きっと、俺たちとは別に誰かいるんだ。うーん。なんだか危険かも知れない。確かにそうだろう。こんなところだし。
「よし! 後を追ってみよう! 徹くん! 誰だかわからないけど俺たち以外にも人がいる! きっと、危ない奴だろうけど、出口を知っていて、ここから出れるかもしれないから!」
「うん!」
俺は金属製の扉の取っ手を回した。取っ手から微かにガソリンの臭いがしたけど、今は俺たち以外の落ちた人を探そう。
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