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第4話.放課後の部室
練習が終わり、部員たちが帰っていく。
静まり返った部室に、残っていたのは春竜と国見ちゃんだけだった。
「……今日は疲れたね」
春竜が笑みを浮かべながら椅子に腰かけると、国見ちゃんは黙ったまま水を飲み、視線を横に向けた。
しばらく沈黙が続き、やがて彼がぽつりと口を開く。
「……春竜ちゃん。俺、実は……」
国見ちゃんの声は普段よりも少しだけ熱を帯びていた。
春竜は胸の鼓動を抑えられず、思わず彼を見つめる。
「え……?」
国見ちゃんが言葉を続けようとしたその時――
「おーい、春竜ちゃん、国見ちゃん! まだ残ってたの?」
軽快な声とともにドアが開き、及川先輩が顔を出した。
「えっ……及川先輩?」
春竜は慌てて立ち上がる。
国見ちゃんは一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに表情を消し、無言で荷物をまとめ始めた。
「ふふん、部室に二人きりなんて、いい雰囲気だったんじゃない?」
にやりと笑う及川先輩。
春竜の顔は一気に熱くなり、言葉が出ない。
「……別に、何もないです」
国見ちゃんが短く答える声には、わずかな苛立ちが滲んでいた。
及川先輩はそんな彼を見て、さらにからかうように肩をすくめる。
「そう? 俺はなんとなく、いいところを邪魔しちゃった気がするんだけどなぁ」
その一言に、春竜の心はますます揺れ動いた。
――国見ちゃんが言おうとした「実は」の続きを、どうしても聞きたいのに。
けれど、タイミングを壊した及川先輩の存在が、その瞬間を奪ってしまった。