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三つ子の命を宿したしのぶのお腹は、臨月を迎える頃にははち切れんばかりに大きく、神々しいまでの膨らみを見せていました。その瞬間は、家族全員で夕食を囲んでいた、穏やかな団欒の最中に訪れました。
「……っ! あ、ああ……っ」
しのぶが箸を止め、お腹を抱えて椅子に深く沈み込みます。それと同時に、足元から温かな液体が床に広がり、静かなリビングに衝撃が走りました。
「お母様!?」「母上!」
恋と扇が椅子を蹴って駆け寄るよりも早く、童磨が風のような速さでしのぶの側に膝をつきました。
「破水だね、しのぶちゃん! 大丈夫、僕がいるよ。恋、扇、お父様が車を回してくるから、玄関で待っていて! 入院バッグを持って!」
三度目ともなれば、童磨の指揮は完璧でした。彼はしのぶを羽毛のように優しく、けれど三人の重みをしっかりと支えるように力強く横抱きにします。
「……ふふ、三人分……さすがに、重いでしょう……?」
苦しい息の下で冗談を言うしのぶの額に、童磨は必死に、けれど愛を込めて口づけました。
「重くないよ、全然! 僕たちの愛が三倍詰まってるんだから、これくらいなんてことない。さあ、深呼吸して。僕が、君と三人を絶対に守り抜くから!」
病院へ向かう車内、しのぶの陣痛はこれまでにない激しさで襲いかかりました。一人、また一人と位置を変える胎児たちの動きに、しのぶは絶え間ない激痛に耐え、童磨の手を真っ白になるまで握りしめます。
「う……っ、ああぁっ! ……童磨、さま……っ、苦しい……っ!」
「ここにいるよ、しのぶちゃん! 僕の手を壊してもいいから、全部僕にぶつけて! 頑張れ、もうすぐ三人の天使に会えるんだ!」
分娩室に入ると、そこは戦場のような熱気に包まれました。三人の命を一人ずつ、慎重に、かつ迅速に取り出すための緊張感。しのぶは意識が遠のきそうになるほどの痛みの波を、童磨の「愛してる」という叫びに近い励ましだけで繋ぎ止めていました。
「……っ、あああああぁぁぁーーーっ!!」
しのぶが最後の力を振り絞り、童磨の腕に爪を立てたその時。
「おぎゃあ!」「おぎゃあ!」「おぎゃあっ!」
時間差をおいて、三つの重なり合う、瑞々しくも力強い産声が室内に響き渡りました。
「……生まれた……。三人とも、元気な女の子だ……!」
童磨は、これまでに見たこともないほど顔をぐしゃぐしゃにして泣きじゃくりました。一人、また一人と腕に抱かされる、自分に似た淡い色の髪や、しのぶに似た愛らしい鼻を持つ小さな三つの命。
「ありがとう……しのぶちゃん。本当に、本当にお疲れ様。君は……君は僕の、命の恩人だ……っ」
童磨は、精根尽き果てて眠りにつこうとするしのぶの頬を両手で包み込み、魂を震わせるような感謝の口づけを落としました。
窓の外では、新しい三つの命を歓迎するように、夜明けの光が世界を優しく照らし始めていました。恋、扇、そして生まれたばかりの三つ子たち。五人の宝物に囲まれた、二人のこれ以上ないほど賑やかで、情熱に満ちた第二の人生が、今、高らかに幕を開けたのでした。