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『覚えてないのに惹かれてく』
tg視点
pr…俺ってさ、ちぐのこと、好きやったことある?
あまりにも不意すぎて、
思わず、返事が遅れた。
tg な、なんで…そんなこと聞くんですか…
pr なんでって、…なんとなくやけど
先輩は信号の赤に目を向けたまま、
ぽつりぽつりと続ける。
pr この数日ずっと考えてたんや。お前と喋ってると、どこか懐かしくて、落ち着いて、なんか…ほっとする
tg ……
pr それでふと、思ってん。俺、もしかして、ちぐのこと好きやったんちゃうかなって
心臓が、音を立てて跳ねた。
その一言が、どれだけ欲しかったか。
どれだけ夢にまで見たか。
でも、それは記憶じゃなくて、ただの“予感”。
そして俺は、それを否定しなきゃいけない立場にいる。
tg そんな……こと、ないと思います
自分でも驚くくらい、声が震えていた。
tg 俺はただの、後輩ですよ。先輩に恋するなんて、そんな…
pr ほんまに、ないん?
少しだけ、先輩の声が低くなる。
まるで探るように、まるで――願うように。
tg ……ないです
言葉と反対に、心の奥が泣き叫んでいた。
“あるよ”って叫びたかった。
“今も好きだよ”って、泣きながら伝えたかった。
でも、それを言ってしまったら、
“もう一度自然に惹かれていってくれる”可能性を、壊してしまう気がして。
だから俺は、
今もまた、ほんとの気持ちを飲み込んだ。
その日の夜。
スマホの通知が震えた。
pr『ごめん、さっき変なこと聞いて。なんか……お前とおったら、気持ちが揺れるんや。』
通知を見つめたまま、
俺はスマホを胸に抱いた。
tg …好きだったんですよ、先輩
誰にも聞こえない声で、
ようやく、言えた。
でも、それはもう“過去形”でしかなくて。
いや――ほんとは、今も変わらない。
ずっと、先輩が好き。
でも俺は、何度だって飲み込む。
伝えたら、壊れてしまいそうで。
“もう一度恋に落ちてくれるかもしれない”って、
その希望を手放すのが、怖くて。
──その翌日。
いつもより少し遅めに登校した俺の目に、
昇降口で、先輩が誰かと話してる姿が映った。
笑ってる。
けど、どこかぎこちなくて。
その横顔に、ふと視線が吸い寄せられる。
……あれ?
先輩の手に握られてる、それ。
tg 鍵…?
──それは、俺が渡した“屋上の鍵”だった。
tg …え、なんで――
その瞬間、先輩がふと振り返る。
目が合う。
見開いた先輩の表情が、いつもと違って見えた。
pr …ちぐ話したいことある
胸が、跳ねた。
まさか。まさか――。
pr 放課後、屋上で待っててくれへんか?
──心臓が、音を立てた。
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コメント
4件
今全部一気見した!!!!!! ねぇ‼️ 私の好きな物全部詰め込まってる作品なんだけどぉ!? 最高……🤦♀️💕 はい。好きです😽︎💞
だぁっっっ!?(リアルでこう叫びました) 続きが楽しみです!