羽良野先生は前を向いているはずなのに、ぼくに優しく微笑んでいるかのような錯覚がしていた。
信号機が青になり、十字路が見えはじめた。
黒い街並み。
静か過ぎる住宅街をぼくは見つめていた。
月も隠れていて、誰も明かりをつけない街。稲光しかこの街を照らさない。
雨で濡れていて、湿っていて、今にも風邪を引きそうな街。
この街の子供達にも、犠牲者がいるんだね。悲しいこと。辛いこと。いっぱいあるけれど、やっぱり生きていくしかないんじゃないのかな?
「羽良野先生。御三増セントラル病院で、村の人たちを殺したの?」
羽良野先生は少しだけ頷き。
「そうです。でも、彼らは死なない……。もうそろそろ不死の儀の村です。歩君。今から言うことをしっかり聞いて」
羽良野先生はまた、俯き加減になり苦悶の声を振り絞った。
「大丈夫?」
「ええ……。歩君のご両親を助けたら、私と一緒に不死の儀の村を燃やすの。そうすれば、彼らは……」
黒い街を抜けると、山の中腹へ向かうと聞いた。
羽良野先生は時々、苦悶の表情をしていた。
ぼくはその都度。羽良野先生を気づかったけど、何か大きなことが。
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