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88 - 第88話 七の罪状 ~前編⑤ 悲報

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2025年06月09日

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※闇の仲介所――室内扉前。



時間帯はまだ深夜に差し掛かっていない為、目立たぬよう二人は分子配列相移転にてこの地に赴いた。



「ルヅキ来たよ~」



ドアを開ける悠莉の声には、何時もの陽気さが感じられない。



「御待ちしておりました」



室内に踏み込むと、其処には何時ものように腰掛けてパソコンに向かう琉月の姿が。



「……緊急召集じゃなかったのか?」



しかし違和感に気付く。幸人は室内を見渡したが、自分達以外は誰も居なかったのだから。



緊急召集なのだから幸人としてはてっきり、この界隈の全エリミネーターが召集されているものだと思っていたのだ。



「少々御待ちください。呼んでいますのでそろそろ……」



――待つ事数分。



「待たせたね琉月ちゃん。髪のセットが中々決まらなくてね――」



同じく分子配列相移転で来たのだろう時雨が、一瞬で室内にその姿を現した。



「――って、何でまたお前らがぁ!」



時雨は幸人と悠莉を見るなり、心外の声を上げる。



「…………」



彼に向けられる視線は軽蔑。琉月は当然として、悠莉すらもそう。



「えっ! 何々この雰囲気……」



集まる視線に戸惑う時雨は、どうやら緊急召集の意味が解っていないようだ。



琉月からの個人的連絡を、逢瀬の誘いと本気で勘違いしている伏があった。



「――まさか、これで全部か?」



だが今はそんな冗談に構っている場合ではない。時雨を無視して幸人は話を続ける。



「ええ……。残念ですがこれで“全員”です」



琉月もそう。早速とばかりに本題に入る。



「もしかして俺って……空気読めないとか? 話が見えね~」



この疎外感に時雨は悶絶。



「今頃気付いたの~? まあこれに懲りて時雨お兄ちゃんも、もうちょっと大人になりなよ~」



すぐにフォローする悠莉だが、相変わらずフォローになっていない。



「そんな事言われても嬉しくねぇ! てか懲りるも何も意味分かんねぇ……」



火に油を注いだに過ぎないが、毒気を御互い感じないのは関係が不穏でない証。



「全員とはどういう事だ? 他の連中は――」



だが幸人と琉月にとっては、今はそんな事どうでもいい。



「連絡が取れないのです。この区間のエリミネーター全員が」



「何……だと?」



琉月の『連絡が取れない』という意味に、幸人の表情に緊張が走る。



それが意味する事は――



「雫さん……落ち着いて聞いてくださいね。昨夜、第一位が死亡しました――」



その悲報を聞いた瞬間、幸人は驚愕に立ち竦んだ。



「彼の生体反応消失を皮切りに、この区間のエリミネーターも次々と消失、消息不明。まさかこの短期間で……」



その後に続く琉月からの状況説明は、既に幸人の耳には届いていなかった。



“アイツが……死んだだと?”



幸人は状況が掴めない。現在の第一位が熾震で在る事は、当然幸人も知っている。



「くっ……」



だが幸人の狼狽ぶりはどうした事だろうか。確かに同僚とはいえ、この世界に身を置く者は常にこのような危機に晒されている。取り乱す程ではない筈――



「それは確かに緊急事態だね。てか第一位って誰だったっけ?」



空気の読めない時雨もようやく事の事態を把握したのか、二人の間に割って入ったが、やはり何処か空気が読めていない。



「覚えてないのですか……熾震さんの事」



「う~ん……覚えてないなぁ」



琉月は呆れたように促すが、時雨は本気で覚えていない。あの時の当事者にも関わらず。



「数ヵ月前、此処で貴方と一悶着起こしたでしょう?」



琉月が言ったのは、Sランク依頼で一同に介した時だ。自分も当事者である事は敢えて言ってないが。



「あぁ! あの手品の刀野郎ね」



時雨はようやく思い出したのか、両手をパンと叩いた。



「でもアイツ、S級下位じゃなかったっけ? 何でまた第一位に」



確かに熾震は当時、三十三間堂の第二十九位だった。この短期間で第一位である事が疑問であると時雨は言っているのだ。



「確かに当時はそうでした。ですがあの日以来、彼の中で何かが変わったのでしょう。その目覚ましい上昇率は、狂座の歴史の中でも特筆に値します。臨界突破レベルも『180%』超まで計測されましたからね」



琉月は手元の資料と、実際己の目で見てきた事でその度合いを説明する。これが如何に驚異的であったかを。



「えっ? そ、そんなにかよ……」



これには流石の時雨も驚愕。口がどもる。所詮は『キリ』と侮った者の異常な上昇速度にだ。



「その彼をして今回殺された……。恐らく造作もなく」



そして狂座にとっても重要な要ともなった熾震が死亡した事が、如何に緊急事態であるかを琉月は強調しているのだ。



第一位となった熾震を倒す程の人物の影に、室内が不穏な空気に包まれる。



「酷似してますね、あの時と……」



琉月は視線を幸人へと向けた。



「あっ、ああ……」



考え事でもしていたのか、幸人は少しの間を置いて頷く。どうも歯切れが悪い。



「数ヵ月前? 何それ、何かあったの?」



どうも最近の疎外感振りに、堪らず時雨が口を挟んだ。



「元エリミネーター『錐斗』による、前第一位殺害事変。あの時は雫さんが粛清に赴き、見事に遂行しましたが」



「錐斗!? えっ――それ以前にアイツ死んでなかったっけ? てか第一位殺害とか、そんな事あったなんて聞いてねぇよ」



時雨と雫は同期である為、当然錐斗とも面識があった。解せていないのが、第一位を倒せる程の力と、何より死亡したと思われた者が実は生きていた、それもついこの前の話である事に時雨は狼狽しているのだ。



「この件は公にはしませんでしたから……」



そんな時雨を汲んだのか、琉月は何処か申し訳なさそうに。



「それだ」



「あ?」



突然幸人が口を挟む。視線が彼に集まる。



「この件の背後に居る者が誰か、それはとっくに分かっている筈だ。だがこの間、何の進展も無い。お前達上層部は何をやっていた? 早急に突き止めていれば、こんな状況は防げただろうに」



珍しく幸人の口調が荒い。それは狂座の対策の粗を責めている感もある。



自分は何の為、親友を粛清しに行ったのか。この情報を元に、早急に対策を打ち立てるのが上の筋であろう。それを何ヵ月も疎かにした結果が、現在の状況を招いた――と。



「おまっ――何琉月ちゃんを責めてんだ!」



状況をよく知らないとはいえ、惚れた女性が責められている事は分かる。時雨は幸人へ食って掛かった。



「黙れ……」



胸ぐらを掴まれた腕を逆に締め上げる幸人。



「テメェ……」



両者は一気に一発触発。



「ちょ、ちょっと二人共やめてよ~」



悠莉が割って入ろうとするが、止められそうもない。



「落ち着いてください御二方」



――も束の間、席に居た琉月が二人の間に割って入っていた。



「雫さんの言う通りです。返す言葉も御座いません……。申し訳ありませんでした」



そして幸人へ向かい、深々と頭を垂れて詫びていた。



「ちょっと琉月ちゃん!? そんな頭を下げる必要なんて……」



「時雨さん。ここは私に免じて、どうか退いてください。お願いします」



「うっ……」



琉月にここまで言われたら、時雨としては退く以外あるまい。



「済まない……」



幸人も軽率だったのか、素直に時雨ではなく琉月へ詫びる。



「ありがとうございます」



そして御互いが元の鞘へと。相変わらず幸人と時雨は禍根を残すだろうが、内部で争っている場合ではない。今は一丸となるべき。

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