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類に手をひかれ結衣は店を出る。類は結衣の手を掴んだまま少し前を歩いているが、無言だ。いつかの類の背中を思い出し、結衣は何かを言おうとして口を開くが、結局何も言えない。そのまま類は結衣を自宅へと連れ込み、玄関に入るとすぐに類は結衣を抱きしめた。
「結衣さん、無事でよかった」
ぎゅうっと力いっぱいに類は結衣を抱きしめる。あまりの苦しさに結衣はうめき声をあげながら類の背中をトントンと叩いた。
「る、いくん、く、るし」
「あ、ごめん」
慌てて類が結衣を解放すると、結衣はふーっと大きく深呼吸してから類の顔を見て目を見張る。類の目は据わっていて底知れぬ怖さがあった。怒っているのに冷ややかで、今にも見たものを凍らせてしまうかのような瞳だ。結衣の心臓はぎゅっと縮こまり、脈が速くなる。
(やばい、この顔はまじでやばいかも。でも、こんな顔させたのは私のせいだし……とにかく、謝らないと)
「類、くん?怒ってるよね、ごめんね、木田さんと二人きりで飲んだりして。二人きりじゃないと思ったんだよ、歓迎会があるからって言われて行ったら木田さんしかいなくて……」
「言い訳はいいから。あいつに騙されたんだとしても、二人きりだと分かった時点で帰るべきでしょ。どうしてすぐ帰らなかったの?あんな密着されて、手まで握られて……結衣さんは危機感がなさすぎる」
そう言って、類は結衣の手を掴みながら口元へ持っていく。そして、ちゅ、と小さくキスを落した。
「る、類君!?」
「あいつに、どうされたの?あいつ、結衣さんの手にキスしたって言ってたけど、どこ?どの指?ああ、いいや、もうめんどくさい」
そう言って、類は結衣の手にどんどんキスをしていく。各指にも順番にキスをしてから、ふと何かを思い出したかのように止まった。
「そう言えば、指を舐めたっても言ってたな。ああ、くそ、店を出る前に結衣さんの手をおしぼりで拭いたけど、それでも気持ち悪い」
類はイライラしたようにそう言うと、結衣の指を食んでからそのままぺろっと舐める。
「っ!」
思わず結衣が身じろいで類を見ると、類は目を大きく見開いてからさらに不機嫌そうになった。類の瞳に映る結衣の頬は赤らんで瞳も潤んでいる。
「まさか、その顔あいつに見せたの?ああ、本当に腹が立つ」
そう言って類はもう片方の手を結衣の後頭部に当てて強引に引き寄せると、結衣の唇に自分の唇を重ねた。
「んんっ」
乱暴に、イラついたように類は何度も結衣にキスをする。唇を食むようなキスに結衣はだんだんと呼吸が苦しくなってきて、類の胸元を両手で押し返そうとするが、びくともしない。
呼吸の苦しさが限界を迎え結衣の口が薄っすら開くと、類は結衣の口腔内に舌をねじ込んできた。
「んんー!」
結衣は抗議するように唸るが、類は構わず結衣の口の中を舌でかき回している。類のキスに結衣の頭はだんだんぼうっとしてきて力が抜けてしまい、結衣がくったりしたのが分かると類は結衣を解放した。
(類くん、いつもはこんなんじゃないのに)
ぼうっとした目で結衣が類を見つめると、類は苦しそうな顔をして結衣を見つめ返した。
そして、結衣のひざ下に手を入れて結衣を担ぎ上げると、寝室へ連れていき結衣をベッドの上におろす。
ギシッとベッドのきしむ音がして類が結衣の上に覆いかぶさる。結衣の衣服に手を伸ばしながら、類は結衣の頬にキスをしてそのまま首元に舌を這わせた。
「やっ……」
「やだって言ってるけど嫌そうな顔になってないよ」
結衣の顔は赤らんで目も潤み煽情的だ。結衣は否定するように首を振って身じろぐが、類はそのまま結衣の着ているシャツの前ボタンを開けていき、胸元に手を添わせた。
「類君、ねえ、やめて、話し合おうよ?ちゃんと話そう?」
「話し合う?何を?俺は怒ってるんだよ。結衣さん、危機感が無さすぎるんだからちゃんと教えてあげないとだめでしょう?」
据わった目のまま類は静かに低い声でそう言う。結衣は一瞬怯むが、口をギュッと結んで類をしっかりと見つめ、類の頬に手を伸ばした。
「類君を怒らせたのは本当に悪かったと思ってる。ごめん。でも、怒っているのは類君として?それとも、私がエイルと一緒にいたことが気に食わないルシエル様?」
結衣に言われた類は、ハッとして両目を大きく見開く。だが、すぐにまた据わった目で結衣を見下ろした。
「どっちもだよ。どっちもに決まってるでしょ。類もルシエルもどっちも怒ってるんだよ、わかるでしょ」
そう言って類は頬に伸ばされた結衣の手首を掴んで結衣の頭の両側に固定する。結衣は手をほどこうと懸命に動くが、拘束は緩むどころかきつくなるばかりだ。それでも、結衣はムッとしながら類を見つめる。
「どっちも、ね。わかるけど、私の好きな類君はこんなことしない。私の好きな類君は、怒りに任せて無理矢理私を襲うようなことはしない。もしするんだとしたら、幻滅する。推し変するつもりはもちろんないけど、類君には幻滅するよ」
類の目をひるむことなくしっかりと見ながらきっぱりと言い切る結衣に、類は驚愕したまま動けない。それからしばらくして、類は顔をもたげてハーッと大きく息を吐いた。
#歳の差