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???「はいはい通るよ〜」???「茜ちゃん仕事頑張ってるね〜偉いよ!」
???「ここが……」
「「鬼灯(ほおずき)刑務所!」」
「紫雲雨花」と「不山橙」は、人間や神、そして妖怪が住んでいる刑務所に来ていた。その手伝いに「光田茜」も来ていた。
橙「どうしてそういう名前に?」
雨花「「鬼灯」は暗闇の光……つまり、提灯という意味もあるのと、花言葉に「心の平穏」と、それから「ごまかし」という意味もあって、今まで周りを誤魔化しながら生きてきた……そんなところが自分たちに似ているからこういう名前になったんだって〜」
橙「そうなんですね」
雨花「(橙ちゃんも興味が出てきたみたいだな。あはは)
橙「それにしても何だかあまり刑務所っぽくないですね……釣りや水泳のための池や川、屋上には田んぼまであって、皆さん家でくつろいでいるように過ごしています……」
この刑務所は、A棟からD棟に別れており、それぞれコンクリートで出来た橋で繋がっている。下には川や小さな森ができており、屋上では果物や野菜を栽培している。構造は十階建てで、一棟に千室部屋がある。
雨花「ここにいる人間や神は自ら妖怪たちと関わりたいと想って志願してきた者たち。妖怪と関わりたいと自ら望んでいる。ここだけじゃなくてあの世の刑務所は、大体こんな感じだよ。」
橙「でも、罪を犯しているのにこんな風にくつろぐなんて良いんですか?」
雨花「……罪を犯すその瞬間、とてつもない醜い感情が理性にせめぎ合って押しのけようとする。そして、抱えられない罪悪感を感じ続けることになる。でも、その罪悪感をずっと抱えたまま自責し続けてたらどんどん心に余裕がなくなって、再犯に繋がる。だからこういう造りの刑務所にしたんだって。……お師匠様が」
橙「え!この刑務所。雫さんが作ったんですか?……本当に誰に対しても暖かい方ですね。暖かすぎて……」
雨花「すぎて?」
橙「恐いです。だって罪を犯したんですから、罪悪感を感じるのなんて自業自得じゃないですか。なのに、それすらも支えようとするなんて……馬鹿のすることじゃないですか……私は……自分を傷つけた者がこんな生ぬるい環境にいるなんて許しません。……許せません」
橙は自分の首のチョーカーを触りながら言葉を零す。
雨花「そっか。そう想うのも間違いじゃないよ。当たり前のことだと想う。傷つけられたんだから傷つけてきた人たちにはちゃんと罰を与えられて欲しいよね。でも……」
雨花は刑務所を見渡す。
雨花「「罪を償う」のと「罰を与える」のは違うこと。罰を与えたって、ざまぁみろって想うだろうけどそんなの少しの間なだけで、傷つけられた事実も傷つけた事実ももう変えられない。なら、もうその傷つけたことを無駄にしないように「罪を償う」ことが大切なんじゃないかな。その方が周りも本人も傷つけられた人も自分の経験は無駄じゃない。自分を構成する上で必要なものだったんだって、想えるんじゃないかな。絶対大切な想い出なんだって。例えば自分を痛めつけるだけの想い出でも。わたしはちゃんと抱えて、抱えられないものは誰かに抱えてもらって、そうやって生きていけたら良いのになって想うな。……願っちゃうな」
「きっと、」
雨花「お師匠様はそれを伝えたくてこの刑務所を作ったんだと想う」
橙「…………やっぱり私には理解できません」
「でも、」
橙「理解できたら良いなとは想います」
雨花「……あはは。そっか!」
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橙「あのどうして茜さんを助っ人にしたんですか?」
雨花「ん?あぁそれは、茜ちゃんあまりにも仕事が優秀で「やることがなくて暇なんだ〜」って言ってたから刑務所の掃除とか事務作業やって貰ってるの」
橙「本当に優秀なんですね……意外です。」
茜「雨っち〜だっちゃん〜やっほ〜」
橙「だ、だっちゃん?」
雨花「やっほ〜茜ちゃん。今休憩中?」
茜「そうなんだよね〜大体の仕事は終わらせたから妖怪ちゃんたちと遊ぼうかな〜って!」
雨花「良いじゃん!行ってきなよ!」
茜「じゃあ……早速あのヤモリ?蛇?みたいな妖怪ちゃんに声かけよ〜と」
雨花「ヤモリ?」
橙「蛇?」
雨花「ねぇ橙ちゃん。何だか聴いたことある特徴じゃない?」
橙「そうですね……十中八九……「あの方」ですね」
茜「ねぇ〜あんた!ワタシ茜って言うんだ〜良かったら遊ばない?」
???「あ?」
その妖怪とは……
橙「やっぱりあなたでしたか」
「「通り妖魔さん」」
通り妖魔「ちぇっ!てめぇらとまた会うことになるとはな」
橙「ちゃんと大人しくしてるんでしょうね?」
通り妖魔「誰かさんの綺麗事のせいで削がれたんだよ」
雨花「へぇ。そんな人がいたんだ」
通り妖魔「てめぇだよ。このクソあまぁ」
橙「全く反省してるようにはみえませんが?」
通り妖魔「あぁもううるせぇな。戦意も削がれたし、ここにいるカウンセリングの奴に「まだあなたは出れませんね。ゆっくり償っていきなさい」とか言われて、めちゃくちゃこいつらだりぃと想ったし、大人しくしてるんだから良いだろ?」
雨花「カウンセリングは、お師匠様がやってるんだよね。分身になって」
橙「相変わらず、凄いですね。雫さん」
雨花「それに、お師匠様ならいつでも、妖怪も人間もいつでも制圧できるからね。……確か…………「三千世界」っていう神通力と妖術の合わせ技で」
橙「そ、そんなものがあるんですか……?力が桁違い……」
通り妖魔「とにかくもうどっか行k」
茜「ねぇねぇ、あんた通り妖魔って言うの?」
通り妖魔「あ?それは通称名だよ」
茜「じゃあ名前きかせてよ」
通り妖魔「嫌だ。こいつらが妖怪に名前付けるような制度にしたから俺にまで名前付けられて……「通り妖魔」で良かったのに」
雨花「ふーん……じゃあどんな名前かめちゃくちゃ気になるなぁ……?」
通り妖魔「ぜってぇ教えねぇ。適当に決めろってガキに任せた結果、変な名前になっちまったし……」
茜「えぇ〜ますます気になる〜」
通り妖魔は、その場から逃げ出した。
雨花「茜ちゃん。捕まえよう!そして弱味を握る!」
茜「ワタシも楽しそうだから参加する〜」
「待てぇー!!!!」「だから追いかけて来んな!!!!」
茜も妖術が使えるため、一気に四階に上がったり、壁を這いつくばって進む通り妖魔を、壁を走って進む雨花と茜。それを面白がって陽気に笑う妖怪たちと人間と神たち。
橙「最初は、こんな刑務所ありえないと想ったけど……」
「「みんな本当に楽しそうに笑ってる」」
そういうと、橙は少しはにかんだ。
橙「この場所から「人間や神と妖怪との共存」が広がっていけたなら……!ここなら町人の妖怪の方々も働きやすいと想いますし。ここから始まっていけたら……良いですね。」
途方もない、果てしない、
未知の道のり
地図もなく、方位を示すものもない、
何も分からない闇夜の中
少しずつ灯されていく弱々しい光
それを大切に大切に優しく守り続ける
そんな覚悟が果たしてできるのだろうか
でも、今だけは、
純粋に、この時間を、
ふつふつと楽しんでいたい
────今、だけは。