千秋の腕の中で美紅は心地よい疲れにうっとりとしていた。
千秋は美紅の乱れた長い髪を指に絡める。
「もし俺が美紅とエッチできなくなって、セックスレスになったら美紅は俺に催促する?」
突然のとんでもない質問に美紅はびっくりする。
「え?どうしたの突然。急にそんなこと聞かれても」
セックスレスではない美紅としては答えようがない。
「最近俺の周りにもそんな話を聞くからさ。もし俺たちがそんな風になったら、美紅はどう思うかと思ってさ」
唐突だよなと千秋も思ったが、美奈子が気になって美紅ならどう答えるか聞きたくなった。
「よくわからないけど、愛情があってならまた千秋さんがその気になるまで待つかな」
美紅はにっこり笑って千秋を見つめる。
「寂しいとか、シてって言わないの?」
「寂しいよ。でも言ってプレッシャーになったら嫌だもん。それに恥ずかしくて言えないよ。毎日一緒にいる人だから、エッチに関しては素直に言えないこともあるもん」
美奈子も恥ずかしいと言っていた。
やはり男が思うようには、女性は素直に言えないのかと、美奈子もそうなんだと千秋は思った。
「もし俺がEDになったら、病院に行ってってお願いする?」
まだこの話を続けるのかと、美紅は正直嫌な気分になる。
せっかくたっぷり気持ちのいいセックスをしたのに、千秋は何を気にしているのかと勘ぐりたくなる。
「逆に私がお願いしたら千秋さんはどう思う?素直に病院行ってくれる?」
もし自分が。と考えてみる。
きっと病院に行くのは勇気がいると思った。
男のプライドを傷つけられると思った。
治療のために薬を飲んで。
その前に、勃起しなくなった時点で男として終わったと思ってしまう。
「私はこうやって抱きしめあったり、キスしたり、ちょっとしたスキンシップがあるならエッチできなくても平気。だって、千秋さんを愛しているもの」
美紅がそう言ってくれるのは嬉しいはずなのに、美奈子のことを考えると美奈子の方が心配で気にかかる。
【私、誰かと浮気しちゃいそう】
美奈子のLINを思い出して、千秋は悔しくなる。
自分が美奈子の夫だったら、美奈子にそんな思いをさせることもないのにと。
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