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すごいご縁だ!まさか婚約者さんだったとは…これはお兄ちゃんが引き寄せたとしか思えないよ! でも📱教えしまうのは…どう?訴えると仰った三岡先生に対してお兄ちゃんがなんと言ったのかは想像つくけど、急かさないであげて欲しい。待っててあげて🙏
仕事始めが木曜日だったので2日出勤すればもう週末だ。
金曜日には三岡先生と3週間ぶりに会った。
ここ数ヶ月の2週間に一度の面会ペースが崩れることを気にした先生は、休み中にも会うと言ってくれたのだが、私は丁重にお断りしていた。
「元気そうで安心したよ」
そう言いながら、先生がまた封筒を私に差し出した時……私の電話が鳴る。
三岡先生は目の前にいるし、ここは事務所内だ。
事務所の人からの連絡ということもないだろう。
誰……?
全く同じ表情の先生は
「何番?」
と、私に番号を確認するように言った。
鳴り続けるスマホを先生に渡して、それはすぐに鳴りやんだが、先生はもう一度番号を表示し自分のスマホを操作する。
「お兄さんだ」
「え…お兄ちゃんから……?」
「どうやってわかったんだろうね」
すると、再び鳴り始めた私のスマホを手に
「私が出てもいいかな?」
と聞く三岡先生に、私が頷くと
「はい、三岡です…忠志さん、どうやってこの番号を?探さない約束でしたよね?」
厳しい表情で話をする先生の表情が、しばらくすると……ふと緩んだ。
「そうですか…そういうことですか……縁ですよね。佐藤さん…良子さんにとってのタイミングだったのかもしれません」
どういうこと?
「一旦切ります。妹さんに説明をしてから連絡します。私からになるかもしれませんが」
通話を終えた先生は、二度三度頷いてから私を見て穏やかに言った。
「美容室に行ったでしょ?あなたの髪を切ったのは忠志さんの婚約者さんです」
美容室のショートカットのお姉さんはお兄ちゃんの婚約者らしい。
私の名前でもしかしてと思い、お兄ちゃんに妹の写真を見せろと言い、ずいぶん前のお兄ちゃんとのツーショット写真を見て確信した彼女は個人情報管理の点でアウトと知りながらも、妹を心配するお兄ちゃんへ私の電話番号を教えたという。
「弁護士の私でも責められない行為です。忠志さんの気持ちを知っているのでね」
先生は苦笑しながら
「電話連絡だけしてみますか?探さないという約束は守ってくれるはずですし、もし会いたいならいつでも会える状況が整った。あなた自身が美容室に行くという行動で開いた道です」
そう言い、もちろん気が進まないなら先生からそのように伝えるとも言った。
‘私自身が開いた道’
「先生、電話だけしてみます」
「わかりました。私も今もう一度連絡します」
先生は、自分のスマホでお兄ちゃんへ電話すると
「良子さんから電話するそうですが、今日か明日とは急かさないで下さい。それから彼女の電話番号を誰かに教えましたか?……それならいいです。忠志さんが勝手に電話番号を誰かに教えたら、個人情報保護法の観点から婚約者さんを訴えます。ご両親にも勝手に教えないようにお願いしますよ」
‘……’
「当たり前です。訴えますよ。私のクライアントは佐藤良子さんですから、良子さんを守るのは当たり前です」
と……私には責められないと言っていた婚約者さんの行為を盾に、私の電話番号を人に教えるなと念押しした。