「……よし。ほな行こか」
家を出るときの治はいつも通り落ち着いてる。
けど、🌸と手をつないだ瞬間、指先に微妙な力がこもってるのが分かる。
(あ、これちょっと緊張してるな……)
売り場に向かうエスカレーターでもずっと静かで、
🌸が声をかける。
「治、緊張してる?」
「いや……してへん、思う。
……けど、双子やしな。なんか色々あるやろ?俺だって双子な訳だし…」
控えめに眉を寄せてるのが、治の“最大級のそわそわ”だった。
「……ちょっと待ってや」
ベビー服コーナーに入った瞬間、治が固まった。
小さな服がずらっと並んでいるのを見て、
「……こんなん、二人分か」
ぽつりと呟いてしゃがみ込み、
手のひらでそっと服のサイズを確かめる。
「……🌸。
こんなちっちゃいの二人やろ。
俺、ちゃんとできるかな」
今までに聞いたことないくらい弱気な声。
けど🌸が隣で微笑むと、
「……あかん。
弱気になってる場合ちゃうな」
治はすっと立ち上がって、
少しだけ顔を上げる。
治が最初に向かったのは“ベビーカーコーナー”。
そこに、双子用の大きなベビーカーが置かれていて——
「……でっっっか……」
治の目が見たことないくらい丸くなる。
「これ押すんか俺……?
いや……押すよ?押すけど……でか……」
あなたが笑ったら、治は耳まで赤くなる。
「いや笑うやろ?これは……想像の3倍あるで」
でも、ベビーカーの取っ手を握ると、
治の表情が一瞬で変わる。
「……思ったより軽いんやな。
これやったら、ええな。
二人一緒に連れて行けるし」
ゆっくり押しながら確かめて、
少しずつ顔がほころんでいく。
そのあと哺乳瓶コーナーへ。
治はパッケージを見た瞬間、
あからさまに固まる。
「……待って。
哺乳瓶って……二つずつ必要やんな」
「そうだね」
「……いや、待ってや。
量、倍なんやけど」
🌸が笑いながら「頑張ってね」と言うと、
「……頑張るけども。
……いや、頑張るわ。俺が全部やる」
気合いの入った顔をしてるのに、
耳だけしっかり赤い。
🌸が少し疲れてベンチに座ったとき、
治は自然に隣に座って、あなたのお腹に手を添える。
「……二人、元気に育ってくれたらええな」
その声は静かで、深くて、優しい。
「双子やから心配とか大変とか言われるかもしれんけど……
俺はむしろ楽しみやで。
家賑やかなん、好きやし」
🌸が目を潤ませると、
治は少し照れながらも言う。
「🌸もしんどなったら、全部言ってな?
ご飯でも家事でも、出来る限り俺がやるし。
……ううん、出来る限りやなくて、やるわ」
治はあなたの頭をぽんと撫でる。
「三人で、いや、四人でやな。
必ず幸せにするから」
落ち着いた声だったけど、
その中には治らしい“本気”がしっかり込められていた。
コメント
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気遣いできる治さすがっす