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「圭太、どうするの?」
「もちろん、マナには真実を伝えるつもりだよ」
「大丈夫?」「大丈夫じゃないかもしれないけど、ちゃんと伝えるから安心してくれ」
「そうじゃなくて、私が心配なのは圭太の言い方」
「問題ねえよ。マナが飯塚を諦められるように、洗いざらいぶちまけてやるつもりだよ」
「それが心配だっていうの。真実を全て伝えてあげるのは大切だけど、マナの気持ちも考えてあげなきゃ。何も知らないマナは純粋に恋をしてるだけなんだから。普通の女の子と同じように傷つくに決まってるでしょ」
「わかってる。出来る限りマナが傷つかないように言葉は選ぶつもりだよ」
「それに、恋に夢中になって周りが見えなくなってるマナが圭太の言うことを素直に受け入れて、諦めるとは思えない。頭で理解しても心がついて行かないと思うの――。あの子の目を覚ますのは相当大変だと思う」
「やるだけやってみるさ」
「ねぇ、何話してるの?」
俺とゆずきが教室の後ろで話をしていると、マナが声をかけてきた。
「ちょっと、廊下に来い」
「えぇ〜、めんどくさいんだけど」
面倒くさがるマナを無理やり廊下に連れ出した。
「マナ、あのさ――飯塚先輩のことなんだけど――」
「何? また飯塚先輩のこと?」
「そうだよ」
「どうせまた、付き合うのはやめろとか言うんでしょ」
「その通りだ。わかってるなら俺の話をちゃんと聞くんだ」
「聞いてもいいけど、私の気持ちは変わらないから」
マナは俺をひと睨みしてそう言った。
「あの男はな、マナっ――」
キーンコーンカーンコーン―――
昼休み終了のチャイムが鳴った。
くそっ! 何でいつもいいタイミングで邪魔するんだよ!
「マナ、学校が終わったら下駄箱で待ってる」
「スタバのコーヒーおごってくれるなら行くけど――」
「わかった。おごってやるから俺の話をちゃんと聞くんだぞ」
「飲んだら、考えてあげなくもないかな。でも聞くだけだからね」
この分だとマナを説得できるかどうかは微妙なところだった。
午後の授業が始まると、マナは早速いつものように居眠りをしていた。先生がマナの席の横に立っても全く気づかずに眠り続けた。相変わらずだ。よく人は恋をするとキレイになるとか、生活に張りが出て生き生きとしてくると言われるけど、マナには全く関係のないことだったようだ。
「はぁ――」
そしていつも通り先生は呆れ顔で教壇に戻り、黒板に文字を書き始める。授業が終わると、マナではなく何故か俺が職員室に呼び出された。
「明石、悪いな呼び出しちゃって」
「いえ、大丈夫ですけど――もしかしてマナのことですか?」
「そうなんだ」
「授業中に相変わらず居眠りをしてるのは知ってます。俺の方からキツく言っておきます」
「まぁ、それはそうなんだが――明石を呼んだのは別の理由なんだ」
「他に何かしでかしたんですか?」
「実はな、最近宿題とか提出物関係が全くやってないんだ」
「そんな訳ありませんよ」
マナは俺に、宿題はやっていると言っていた。俺はその言葉を信じてしまっていたけど、よくよく考えたら俺が手伝ってやらなければマナが自分でやる訳がなかった。しかも飯塚がマナの宿題を手伝ってあげるわけはない。