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「他の先生からも担任の私に報告が入ってきているんだ」
「俺はてっきりやってきてるもんだと思い違いをしてました。それにマナのことだから何かあれば親父さんに頼んで何とかしてもらってるのかと――」
「五十嵐議員から校長に、頻繁に電話がかかってくるようで、校長から五十嵐マナのことをよろしく頼むとお願いされてる。だから下手なまねは出来ないんだ。でも、宿題や課題などの提出物関係は形として残ってしまうものだから、やらないとマズいんだがな。他の先生とのこともあるしな――。職員会議で問題に出されたら私一人ではフォロー出来ないぞ」
「つまり、俺にマナの面倒をしっかり見ろと」
「明石には悪いと思っているんだが、どうにもならないんだ」
「わかりました。何とかしてみます。失礼します」
「明石、お前たちケンカでもしてるのか?」
その場を離れようと後ろを振り向いた瞬間、声を掛けられた。
「してないと思いますけど――どうしてですか?」
「だったらいいんだが、最近2人で一緒にいるところを見てないような気がしたんでな」
確かに、マナが飯塚にのめり込んでしまってから、俺といる時間は極端に減ってしまっていた。まさか周りの人間にも気付かれているとは意外だった。
「そんなことないですよ。相変わらず、つきまとわれていますよ。それに俺とマナは付き合ってる訳じゃないんで」
「そうなのか? 先生はそう思ってたんだが――」
先生の一言で、俺とマナの関係を周りの人間がどう思っているのかが、わかったような気がした。
帰りのホームルームが終わると、待ち合わせの下駄箱に向かった。下駄箱で靴に履き替えてマナを待っているけど、何分経ってもやって来なかった。そして10分が経過した頃、ゆずきがこちらに向かって歩いて来た。
「ゆずき、マナを見なかったか?」
「マナならジュースを抱え込みながら階段を上がって行ったけど――会う約束をしてたんじゃなかったっけ?」
「そうなんだけとな――」
「もしかして、飯塚先輩のところに――」
「だろうな」
「飯塚先輩のことだから、マナにジュースを買いに行かせたに違いないよ」
「あのやろう」
「どうする? マナを連れ戻しに行ってこようか?」
「いいよ、自分で行ってくる」
ゆすぎにそう言った後、マナがいるであろう2階に向けて階段を駆け上がった。放課後ということもあり、教室に残っている生徒や廊下ですれ違う生徒は殆んどいなかった。そして3年のフロアに着くと、物音を立てないように飯塚のクラスにゆっくりと近付いて行った。
ちょっと待てよ――。
もしマナが飯塚と一緒にいたらどうしようか――。
俺は飯塚のクラスから数メートル離れたところで歩く足を止めた。どうする? それにしても静かだ。全く話し声も物音の1つも聞こえなかった。誰もいないのか? 俺は恐る恐る教室に近付いて中を覗いてみた。