今回からラストに向けてもっくん視点になります。
俺はしばらく誰とも連絡を取る気になれず家に閉じこもっていた。
何か考えると悪い方向にばかり思考が向かうので何も考えないように頭の中を真っ白にする。
自分の中の闇が襲いかかってくるのが怖かった。
トントン。
その空間に音が割って入る。
誰かが心配して様子を見にきたのだろう。俺の家の鍵を持っている人なんて限られている。
「元貴、入るよ」
ノックの後、ガチャリとドアの開く音とともに涼ちゃんの声が聞こえる。
俺は涼ちゃんの方を見る事ができずにただソファーの上で膝を抱えて小さくなっていた。
何を言われるのかが怖い。
「…ねぇ、元貴。俺、今日は元貴とちゃんと話さなきゃって思ってきたんだ。聞いてくれる?」
涼ちゃんは俺の隣にそっと座るとポツポツと、喋り出した。
「元貴、あの時俺に元貴の事本当に好きなのかって聞いてきたよね?」
俺は抱えた膝をギュッと抱きしめる。
「…俺、自信がなかったんだ。なんで元貴は俺を選んだんだろう?本当に俺でいいのかな?って」
「えっ?」
「ずっと思ってた。元貴にはもっとふさわしい人がいっぱいいるんだから、俺は元貴に何も求めちゃダメなんだって」
「そんな…」
俺はびっくりして涼ちゃんの方を見る。涼ちゃんは目線を下に向け、寂しそうに笑っていた。
「だからこの間の女の子の事だって、俺なんかよりあの子の方が元貴とお似合いだから俺には何も言う権利なんかないんだって」
涼ちゃんが静かに涙を流すのを見て俺は衝撃を受けた。
「ごめん!俺、涼ちゃんがそんな風に思ってたなんて知らなくて…」
知らない間に涼ちゃんの事を傷つけていたなんて。
その時、俺は涼ちゃんが自分の事を好きか確かめようとするばかりで涼ちゃんに「好きだ」と伝える努力を忘れていた事に気付く。
「いいよ。…この前、俺が学生時代の友達と話してたのに嫉妬してくれたんでしょ?若井から聞いたんだ」
涼ちゃんは目を閉じた。
「俺、それ聞いてすっごく嬉しかったんだ」
涙に濡れたまま嬉しそうに笑う涼ちゃんに目を奪われる。
「ねぇ、元貴は本当に俺の事好き?本当に俺でいいの?」
とっさに腕が伸びて涼ちゃんをギュッと抱きしめる。
「好きだよ。好きに決まってるじゃないか!『涼ちゃんでいい』なんかじゃない『涼ちゃんがいい』、涼ちゃんじゃなきゃダメなんだ」
「俺も元貴の事本当に好きだよ。『元貴は俺のものだ』って俺も思っていいの?」
「当たり前だろ。俺はずっと、ずっと前から涼ちゃんだけのものだよ」
両思いになるよりもずっと前から俺は涼ちゃんだけのものだったんだから。
「…俺たち2人ともバカだよねぇ」
お互いが相手の気持ちに自信が持てずに勝手に悩んでいたのだから。
見つめ合ってクスクスと笑う。
「それにしても、俺は自分でバカなのわかってたけど元貴もけっこうバカだったんだね?」
いや、違う。いつだって恋は人をバカにさせるものなのだ。
なんとかお話し合いもすんで無事にお互い気持ちの確認もできました。
後はイチャイチャタイムに入ります。
コメント
7件
恋は人をバカにさせる 名言! 大森さんは、ヘタレを挽回する事柄が必要ですよね! 藤澤さんはもう完璧✨
キャー(,,- -,, )ホッコリする 嫉妬が嬉しいって言ってる涼ちゃんが可愛すぎて軽く死ぬ えへへ( ´ཫ`)てぇてぇなぁ
よくやった涼ちゃん!!