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Chapter26.また...
魔王は、 玉座に座ったまま、 虚の境界に張り巡らせた魔力の網を通じて、 城内の動きを監視していた。
その時——ピキッ……!
空間に走る、 微かな“魔力のひび割れ”。
「……ほう。 共鳴したか。」
魔王の掌に浮かぶ、 黒い魔力の球体が震えている。
その中心に、 白金色の光の波紋が広がっていた。
「あの詐欺師…… まさか、鍵を……!」
「そして…… 光の欠片が、それを使った……か。」
魔王は、 玉座の前にひざまずく影たちに命じる。
「 “夢喰の回廊”が破られた。 光の欠片が、仲間を解放している。追え。 連れ戻せ。 必要ならば—— “光を砕け”。」
影たちは、 音もなく立ち上がり、 闇に溶けていく。
ミナたちは、 らみとれむを支えながら、 回廊を抜けようとしていた。その時—— 空気が変わる。——冷たい。 ——重い。 ——まるで、夜の底に沈むような気配。
回廊の奥から、 黒い霧のような影が現れる。
魔王の尖兵——“影喰(えいしょく)”
ミナはらみとれむを背後にかばい、 剣を構える。
「ここは通さない……!」
影喰が、 無数の足音もなく迫ってくる。
ミナの剣が、影喰の刃を受け止める。
らみの光の花が爆ぜ、 れむの夢の霧が敵の動きを鈍らせる。
だが—— 影喰は数を増やし、 包囲が狭まっていく。
「くっ……! 多すぎる……!」
「ミナくん、後ろ……!」
ミナが振り返ると、 別の影喰が、らみに迫っていた。
その瞬間——バシュッ!!
影喰たちは、 ないこの炎に焼き尽くされ、 回廊には静寂が戻っていた。らみとれむは、 セラの癒しの光で少しずつ回復していく。ミナは剣を収め、 深く息をついた。でも—— その目は、まだ先を見ていた。
「……まだ、追手が来るかもしれない。 ここに長くはいられない。」
「でも、ミナ……! あなたも疲れてるでしょ?少し休んで……」
ミナは首を振る。
「今のうちに、 他のみんなを助け出してくる。 ここにいると、君たちまで巻き込んじゃう。」
「おいおい、また一人で行く気か?」
「今度は違うよ。 ちゃんと戻ってくる。 みんなで、ここから出るって決めたから。」
ミナは、 かなめの鍵を握りしめ、 次の気配を探る。
——微かな音。 ——誰かの歌声。 ——誰かの怒り。 ——誰かの祈り。
「待ってて。 今、迎えに行くから。」
そして、 彼女は再び闇の中へと走り出した。
Chapter27.音なき回廊
「待ってて。 今、迎えに行くから。」
そして、 彼女は再び闇の中へと走り出した。
ミナが進むにつれ、 空気が変わっていく。
——風の音が消えた。 ——足音も、呼吸の音も、聞こえない。 ——まるで、世界が“ミュート”されたような空間。
やがて、 黒曜石のような壁に囲まれた空間にたどり着く。
中央には、 透明な結晶の檻がふたつ。
ひとつには、 ネイロが、 目を開いたまま、無言で座っている。もうひとつには、 ユエルが、 静かに眠っていた。
ミナが声をかけようとするが、 自分の声すら、音にならない。彼女は焦りながら、 かなめの鍵を取り出し、 ネイロの檻にかざす。——反応なし。
ネイロが、 ミナに気づき、 ゆっくりと顔を上げる。
その目は、 驚きと、安堵と、 そして“伝えたい何か”で揺れていた。声にならないまま、心で歌う。
その瞬間—— 彼女の胸の奥で、 白金色の光が脈打つ。
ネイロの檻が、 音もなく砕け、 彼の身体から黒い鎖がほどけていく。
次に、ミナはユエルの檻に向かう。
彼女は、 まるで眠り姫のように、 静かに横たわっていた。
ネイロがそっと言う。
「彼の魔力は、 この空間に吸われてる。 でも……君の光なら、届くかもしれない。」
ミナは、 ユエルの手をそっと握る。
「……ユエルくん。 目を覚まして。 みんなが、待ってる。」
ミナの手から、 白金色の光が流れ込む。
ユエルの胸元に、 淡い光が灯る。そして—— 彼のまつげが、ふるりと揺れる。
「……ミナ……ちゃん……?」
ミナは、 涙をこらえながら微笑む。
「うん。迎えに来たよ。」
Chapter28.断罪の庭
ネイロとユエルを救出したミナは、 ふたりを安全な場所へと案内したあと、 再びひとりで進み始めた。
今度は、 胸の奥に“ざらつくような気配”がある。
——怒り。 ——悲しみ。 ——そして、迷い。
「この感じ……しゃるろくん……? それに……初噛みつきくんも……?」
ミナがたどり着いたのは、 鏡のような床と天井が広がる空間。そこに立っていたのは、 しゃるろ。
だが—— その目には光がない。 まるで、魂が抜けたような、 冷たい視線。ミナが一歩踏み出す。
「しゃるろくん?……僕だよ。ミナだよ。 君を助けに来たんだ。」
しゃるろは剣を抜く。
「 “ミナ”……? 知らない。 僕の任務は、君を倒すことだ。」
しゃるろの剣技は、 かつて仲間だった頃と変わらない。 いや、それ以上に鋭く、容赦がない。
ミナは必死に受けとめる。
そのとき、 空間の奥から、 金属の軋む音が響く。
ガシャッ……ガシャッ……!
そこには、 鎖に繋がれた初噛みつきの姿があった。
目は赤く染まり、 牙を剥き、 今にも暴れ出しそうな気配。
「ミナ・・・・ニゲロ」
しゃるろの剣を受け止めながら、 ミナはその動きに違和感を覚えた。
——鋭すぎる。 ——迷いがない。 ——まるで、誰かの型をなぞっているような……
「……この剣筋……見覚えがある…… みつきくんは、なんとか持ちこたえてる。 でもこの動きは……!」
しゃるろの剣が、 ミナの肩をかすめる。
「うるみやくん……! たしか、かなめくんの側近で、 一番剣技が得意だった……!」
「このままじゃ、 しゃるろくんを傷つけてしまう…… なら、まずは“型”を止めるしかない!」
彼は後方へ跳び、 しゃるろとの距離を取る。
「ごめん、しゃるろくん。 君を取り戻すために、 先に“その剣”の源を断ってくる!」
しゃるろは無言で剣を構えるが、 ミナはすでに走り出していた。
ミナがたどり着いたのは、 まるで鍛錬場のような空間。
壁には無数の剣が突き刺さり、 空気は張り詰めている。
その中央に、 うるみやが静かに立っていた。
目を閉じ、 まるで瞑想するように、 剣を地に突き立てている。
ミナが一歩踏み出した瞬間、 うるみやが目を開ける。
その瞳は、 冷静で、研ぎ澄まされていた。
「……来たか。 ミナ。」
ミナは剣を構える。
「しゃるろくんに、君の剣技が移ってた。君が教えたんだね。」
うるみやは頷く。
「あれは“型”だ。 彼の記憶が失われたとき、 魔王が僕の剣を“刻んだ”。 彼は今、僕の影だ。」
「君が彼を救いたいのなら、 僕を超えてみせろ。」
「魔法は使えない…… 剣だけで、うるみやくんに勝てるのか……?」
でも、ミナは一歩も引かない。
「君の剣を断てば、 しゃるろくんの心に、 本当の記憶が戻るかもしれない。だから、僕は——戦う!」
うるみやの剣が、 ミナの肩をかすめる。
ミナは必死に受け流しながら、 叫ぶように言葉をぶつけた。
「うるの、バカ……! ほんとバカ!!」
うるみやの動きが、一瞬止まる。
「なんで、またそうやって…… 自分を犠牲にして、 誰かの“剣”になろうとするの!? しゃるろくんにまで、 君の剣を背負わせて……!」
「君は、 かなめくんの側にいたのに…… なんで、同じことを繰り返すの!? かなめくんと一緒! 学習しないバカだよ……!」
うるみやの目が、 かすかに揺れる。
「……僕は、 かなめ様の“剣”だ。 それが、僕の存在理由だ。」
「違う!! 君は“うるみや”でしょ!? 誰かの道具じゃない! 自分の意志で、動いてよ……!」
「……なら、証明してみせろ。 君の“光”が、僕の剣を止められるかどうか。」
ミナは、 涙を拭い、剣を構える。
「いいよ……! 絶対に、君の目を覚まさせてみせる!」
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