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だけど、私の胸の奥に灯った熱い高鳴りは
アパートに近づくにつれて、一向に収まってくれる気配を見せなかった。
◆◇◆◇
そうして辿り着いたのは、叶人くんが一人で暮らすアパートの一室だった。
清潔感のある部屋は隅々まできちんと整理整頓されていて
所々に彼の几帳面で大人な性格が垣間見える。
「…改めて。いらっしゃい、さっちゃん」
叶人くんが玄関の鍵を閉めるなり、静かに振り返った。
その綺麗な瞳にはもう
先ほどコンビニで見せていたような軽やかさは、欠片も残っていなかった。
「うん……お邪魔します」
靴を脱ぎ、靴下越しでも少し冷たく感じるフローリングに足を進める。
視界の端で、洗面所やキッチンの配置
そして奥にあるベッドの存在を、無意識のうちに辿ってしまっている自分がいる。
これから寝室で、私は彼と───
そう思っただけで、心臓がずくりと痛いほど疼いた。
「さっちゃん、お水飲む?外、暑かったよね」
「う、うん…!いただきます」
差し出されたグラスを受け取って一口啜るものの、喉を通るのは冷たい液体というよりも
「緊張」という名の巨大な塊だった。
落ち着こうと何度も深呼吸を繰り返すのに、うまく酸素が肺に入り込んでくれない。
グラスの中で氷がカランと転がる繊細な音が、静かな室内に妙に響いて耳についた。
「…ねえ、さっちゃん」
「えっ?あ、なに?」
「するの、怖い?」
「そ、そんなこと……」
「やっぱり、今日は本番はやめとく?」
「えっ……」
叶人くんはどこまでも穏やかな声で言葉を紡ぎ私の頭を愛おしそうに優しく撫でてくれた。
「俺がさ、ちょっと衝動的に言っちゃったから…無理させてるかなって思って」
彼のその底なしの優しさが嬉しい反面
同時に、自分の中の不甲斐なさと申し訳なさも込み上げてくる。
私自身が「経験豊富」じゃないから
焦って「抱いて欲しい」なんて無茶なお願いをしたのに。
叶人くんはそれをからかうこともせず、ちゃんと真っ直ぐに受け止めてくれていて。
確かに、男の人に抱かれることへの恐怖や未知への不安があるのも事実だけれど───
それと同時に、身体の奥底
子宮のあたりに、確かな疼きを感じているのも事実だった。
私は、どこかで彼とのセックスを激しく期待してしまっているのだ。
「っ、わ、私は大丈夫だから…っ。本番まで、して欲しい……」
私は意を決して、消え入りそうな声で口を開いた。
叶人くんが一瞬、驚いたように目を見開いたのが分かった。
その直後、彼の大きな指先が、私の肩にそっと触れてくる。
「無理、してない?」
#TL
瀬名 紫陽花
14,533
#BL
多 動 症 .
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