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第16章
神を信じる理由
第111話:正しい側に立ちたい
王都・臨時広場。
演壇の下に、人が集まる。
老若男女。
職も、思想も違う。
共通点は一つ。
「間違えたくない」
「国家神は、
私たちを守ってくれる」
「感情で動く人間より、
計算できる神の方が正しい」
誰かが言い、
皆が頷く。
正義は、
“安全な席”になった。
第112話:国家側の本音
管理局・戦略室。
カシムは、
疲れた顔で座っていた。
「神が必要だったんだ」
側近が言う。
「民衆が、
自分で考えるのを
やめるほど」
カシムは、
目を伏せる。
「……野山健は、
人に考えさせすぎた」
「それが、
一番危険だった」
第113話:信仰は責任を奪う
地方都市。
かつて健を信じ、
今は国家神を信じる男。
彼は言う。
「神が正しいなら、
俺は間違ってない」
「選んだのは、
俺じゃない」
それは、
救いの言葉であり、
同時に――
免罪符だった。
第114話:裏切り者の告白
夜。
健の前に、
かつての仲間が現れる。
「……すまない」
震える声。
「俺は、
国家側についた」
健は、怒らない。
「理由は?」
「楽だった」
沈黙。
「神を信じていれば、
考えなくていい」
その言葉が、
健の胸に刺さる。
第115話:弱さの選択
エリナが言う。
「人は、
弱い生き物よ」
「だから、
強い神を作る」
健は、拳を見つめる。
「俺は……
弱さを見せた」
「ええ」
「それは、
人として正しい」
「でも、
信仰には向いてない」
第116話:信じない者の孤独
健は、街を歩く。
視線が、冷たい。
「……異端だ」
小さな声。
誰も、
石を投げない。
だが、
誰も助けない。
信じない者は、
最も孤独だった。
第117話:神の沈黙
国家神アルケイオン。
今日も、
奇跡を配分する。
祈りに応える。
数値通りに。
だが――
問いには、
一切答えない。
それでも人は、
沈黙を
「正しさ」と呼んだ。
第118話:人に戻すということ
健は、
リュシアに言う。
「神を壊すんじゃない」
「人を、
神から引き戻す」
リュシアが、
苦く笑う。
「一番、
難しいやつね」
第119話:それでも話す
健は、
小さな集会を開く。
壇上も、
旗もない。
「俺は、
正しくない」
「間違える」
「でも――」
一人一人を見る。
「一緒に、
考えたい」
数人が、
立ち止まる。
ほんの、
数人だけ。
第120話:次に壊れるもの
観測層。
ノクスが、
静かに呟く。
「……兆候、確認」
「神の信仰、
微減」
監査官が問う。
「微々たるものです」
ノクスは、
首を振る。
「十分だ」
「神は、
疑われた瞬間から
壊れ始める」
均衡は、
再び――
人の手に戻りつつあった。
第16章・了
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