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安浦は上村の頭から目を離さずに挨拶をしている。
「中村さんは下?」
私は安浦の手を取ると、上村の案内で駅前に止めてある中村の車まで歩く。
「安浦。今日一日は俺のことをご主人様って言うなよな。かなりややこしくなると思うし。頼むから」
私は改札口で念を押したことを、再び頼んだ。
「解りました。ご主人様」
「……」
駅前のロータリーに中村のボロ車が見える。その車の助手席に上村がさっさと座るが、私は少し待ってと言い。安浦とカラオケのドリンクは高いようなのでコンビニに少し寄ることにした。
「ご主人様。あたしコーラ飲みたい」
「俺は烏龍茶を買う。金出してやるよ」
「ありがとうございます」
ご主人様は止めてほしかったが・・・無理のようだ。私は中村・上村に何て言えばいいのかと考えながら、飲み物を二つ持ってレジの前に並ぶ。
レジは二つあって、そのどちらも二人か三人かが並んでいた。
すると、前にいた汚れた格好の浮浪者がレジを済まさずに私のところへとのそのそと来た。
異臭がするかと思い内心身構えるが、そうでもなく。服装は、何年も履いているように思える、色が変色しているジーンズと、夏物ではない赤いジャケットと元々は白だったシャツを着ている。やや痩せ気味。そして、目だけがギラギラとしている。生い茂る髭とぼさぼさの白い長髪の老人だった。
それでも、悪臭が何故かしなかった。
厳つい顔を綻ばせて、
「兄さん。もう一個。飲み物買おうか」
と、私に手に持っているサイダーを渡す。
私はこの浮浪者に目を白黒させられた。
「ご主人様。その人のも買ってあげましょうよ」
安浦の発言に私は「ま、いいか」と、受け取った。
三人分の飲み物をレジで精算した。
サイダーを受け取ると、途端に人懐っこい顔になり、にっこりして帰り際に浮浪者は、
「ありとがとな。あなたに主の恵みを。」
と、以外にもよく通る知的な口調で私に手を振った。
中村の自動車に安浦と私は、いい事をした時の気分の高揚感を抱えて、歩きだした。
カラオケ「にゃんこにゃんこ」は、休日のためか何人もの客が受付をしていて、なかなかに広かった。歌を歌う部屋が幾つもあるようで……普通のカラオケ屋だった。
私は初めて入るカラオケ屋なので、周囲をキョロキョロと見回していると、