テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「う…ぁ……? 」
なんだろう、かなり長い時間眠っていた気がする
なんで俺、眠ってたんだっけ…?
確か研究所って所に来て、台みたいなのに寝させられて…そして………
「思い出したぁぁぁぁあ!!」
「おぉ、目を覚まし たか?」
俺は上半身を勢いよく起き上がらせると、白衣を羽織ったジジイとコーヒーを飲みながら本を読んでいるゼットが目に入った
なんでこいつらこんなに平然としてるの?
「目を覚ましたか?じゃねぇよジジイ!!お前俺に何を注射したんだ!!?」
「落ち着け、ただの麻酔じゃ。超次元ホールから出てきたと聞いて、身体的な異常がないか調べただけじゃ 」
俺の問にいけしゃあしゃあと答えるジジイ
「じゃあ一声いるだろうが!何を無許可で正体不明なもの注入してんだ!死んだかと思ったわ!死んだわおばぁちゃんめっちゃこっち来いって手招きしてたわ!!」
「うるさいわね、この建物ボロいのだから大声出すと揺れるのよ。気をつけなさい」
「お前もお前だ!なんで無言だったんだよ!」
「仕方ないじゃない。その方が面白そうだったも」
「おい、そんなことよりボロいとはなんだ、ボロいとは。年季があると言ってくれないか」
「お前は一旦黙れ、何がそんな事だ。事実だから仕方ねぇだろ」
「何を言うか!ここはワシが何十年もかけて創った城じゃぞ!」
「2人とも五月蝿いわよ、もう少し落ち着なさい」
「「誰のせいだ」じゃ!!」
落ち着くまで割愛
_____________________
「…それで、結局こいつは誰なんだ?」
「こいつとはなんじゃ、歳上に向かって」
「もうお前のことは敬えねぇんだわ、なんなら見下し予備軍なんだわ」
逆にあれだけのことをして敬えは無理あると思うし、なんならシラフでそんなこと言える所は逆に尊敬できると思う
「話が脱線しかけてるわ、博士も口を挟まないで」
「うむ…」
不満げに喉モゴモゴ言わせるジジイ
何が不満なんだと一瞬イラついたがここは落ち着くことにした
すると、ジジイは立ち上がって
「ワシの名前はサイドウ ケン!このインビジブル大陸で最も優秀な博士である!」
と、ガラスのテーブルに足を乗せてクラーク博士のようなポーズを取った
それはムカつくことにかなり様になっていた
するとゼットがそっと口を寄せてきた
「半分嘘よ…確かに優秀であるのには間違いないけれど、問題行動ばっかりして都市の研究所をクビになってここに来てるのよ」
「えぇ…大丈夫かよ」
元から大丈夫そうな人の雰囲気はしてなかったけど、ちゃんと前科を持っていたか…
「モルモ…少年、君の名前も教えてくれ」
いまモルモットって言おうとしてなかった?
「龍神大和だ。お前には絶対敬語使わねぇぞ」
「それが正解ね。この人、下手に出るとすぐに調子に乗っちゃんだから」
「うぅん…心外だがまぁよかろう。寛容なのもワシのいい所じゃからな」
非常に口を挟みたかったが、話が長くなりそうだったため口を噤む
「話がずれてしまったな。話の本題はヤマト少年、君の体に関してのことだ」
その時、博士のムカつく顔がスっと引き締まった
その顔は、さっきのふざけた雰囲気と異なり顔と全く異なり独特な緊張感を醸し出している
「…」
ゼットも黙って博士の顔に注目している
その発言1つ1つを聞き逃さないように、真剣に耳を傾けているのが分かった
(なんだ…この張り詰めた雰囲気。変な人だけどやっぱ凄い人なのか…?)
「君の背中の傷だが、外傷的な異変は特に見当たらなかった…だが、内部的な異変が多数見受けられている 」
「内部的な異変…?」
「博士、続けて」
ゼットが続きを促す
「君の背中の細胞から、検知されたことの無い全く未知の強大なエネルギー反応がでよった。」
「エネルギー反応…どういうことだよ?」
「恐らく、君が超次元ホールをくぐった時に何かしらの力の影響で超次元ホールの空間状態が乱れてしまい、中を流れていた未知のエネルギーが君の体の中に流れ込んでしまったのじゃろう」
「このエネルギーを超次元エネルギーと仮定して呼ばせて貰うが、君の体にはその超次元エネルギーが循環している事が確認された。」
「循環って…俺の体は大丈夫なのか!?そんな意味分からないのが体にあって…」
「正直言って分からない、ワシも全く見たことのないエネルギーだったのでな。…ただ特殊な機械を通じて超次元エネルギーを見たところ、その分子の動きは安定しておった。すぐに危険が伴うことはないじゃろう」
「…」
つまり、将来的に安心出来るというわけではないのだろう
「なんだよ…それ、いきなり変なもんに呑まれたと思ったらそんな訳の分からないもんに体支配されてんのかよ。しかもいつ死ぬかも分からねぇって…」
「ねぇ、博士。どうにかその超次元エネルギーってのを取り除けないの?」
「無理…とは言わんが危険じゃ、先も言ったが少年の背中に溜まってるエネルギーは未知の上に強力なパワーを持っておる。下手に触れようもんならどうなるか分からん」
「じゃあ、何とかエネルギーの力を抑えるものとかはねぇのかよ?」
思わず立ち上がって問いを投げる
が、帰ってくる答えは期待通りのものではなかった
「何度も言うが未知のことなんじゃ。すぐにはどうにも…」
「まじか…」
無意識に膝が脱力して、再びソファに座り込む
人間どうしようも無いことと遭遇すると、無気力になってしまう
「じゃあ、せめて彼が元の世界に戻れる方法とかないの?」
ゼットのその問に俺は足に力が戻るのを感じた
「そうだよ!そのエネルギーと一生付き合ぅことになっても、家に帰れれば最悪それで… 」
心の底では分かっていた
さっきから超次元ホールの説明を聞くに、聞くだけ無駄であることは。
そして、やはりそれは博士の無言の否定によって証明された
「…そうか」
「…超次元ホールに意図的飲み込まれたら、次元を通じて戻れるかもしれんが、また生き残るかも、元の時空に戻れるかも不確定じゃ。そもそも超次元ホールは…」
「もういい」
「貴方…」
「もう、いいよ。」
龍神大和は意図せず泣いていた
無事に帰って、家族にまた会える
そんな淡い希望が木っ端微塵に砕かれてしまいえもいえない喪失感に龍神大和は苛まれてしまっている
「ふむ…今日は疲れているだろう。もう夜も遅いし、ここに泊まっていけ 」
「ありがとう、博士」
_____________________
深い夜
獣もジュラシックコマンドも眠る深い夜
研究所の仮眠室で龍神大和は1人、漠然とした気持ちで床についていた
だが、その双眼はいつまでも閉じることなく開いていた
(家にも帰れねぇし、背中の傷はいつどうなるか分からねぇ…どうなっちまうんだ俺…)
心にあるのは深い焦燥感
全ての希望が砕かれ、何をしても意味が無いとという無力が心を蝕んでいた
そんな時
コン、コン
「入ってもいいかしら?」
聞こえてきたのは鈴のような凛とした声
その声の主がゼットだと、すぐにわかった
だが、俺はその声に沈黙を貫いて毛布を深く被った。いわゆる不貞寝だ
「入るわよ」
「入るのかよ」
誰とも話したく無かったから黙っていたのに、結局入ってくるゼット
「なんだよ…今は喋りたい気分じゃない。手早くしてくれ」
「まぁ聞きなさい…少し、運動をしない?」
彼女は、初めてみる微笑をしながら俺に誘いかけた
_____________________
〘キャラクター図鑑〙
サイドウ ケン 〘65歳〙
自称インビジブル大陸一の博士
自己肯定感とプライドが人一倍強く、険悪な雰囲気をつくることが屡あり、元々は都市の研究所で働いていたが、問題行動を連発して左遷という形で今の研究所にいる
しかし優秀であることには違いなく、昔は化学賞を総ナメしていた…らしい(本人曰く)