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『おはよう。恭香ちゃん』
呆然と立ちすくんでいた私の肩を叩いたのは、一弥先輩だった。
『あっ、びっくりした~』
『どうしたの?こんなところで立ち止まって』
『あ…いえ』
『うわぁ。あれ、本宮君だよね』
一弥先輩の目にも飛び込んできたらしい。
『そう…みたいですね』
『スーツ似合ってるね。本宮君はカッコよくて、カメラの才能もあって、おまけに…うちの会社の御曹司って…』
社長と話してる姿を見たら、やっぱり御曹司なんだって、確かに思う。
そっか…
文映堂の一人息子ともなれば、莫大な財産を受け継ぐことになるんだろう…
お金のことなんて、私には全然関係ないけど…
とにかく、あんな強引で怖い人…
私は嫌だよ…
でも、頭の中ではそう考えれても目の前の本宮さんのルックスを見たら…
男性として素敵だ…って思ってる自分も…正直、いたんだ。
大好きな一弥先輩が横にいるのに…
『あっ、先輩、すみません。中に入りましょうか?』
『そうだね』
私は、一弥先輩と入口に向かって歩き出した。
まだ社長や本宮さん達は入口付近にいる。
何かの相談のようだ。
なんか嫌だな…
そう思った瞬間、本宮さんは、私達に気がついたみたいでこっちに近づいて来た。
『おはよう』
一弥先輩が、本宮さんに爽やかに挨拶した。
相変わらず可愛い笑顔。
『おはよう…二人で出勤?』
本宮さんの目が、少し冷ややかな気がした。
『今、たまたまそこで会ったんだ。入口に本宮君達がいて、恭香ちゃんが入りにくそうにしてたから』
『え?あ…』
私が戸惑っていると、
『行くぞ』
そう言って、本宮さんは、私の手を掴んで無理矢理引っ張っていこうとした。
『ちょっと、離してください。私、先に行きますから』
よくわからなかったけど…
気がついたら私は、本宮さんの手を振り払って走り出してた。
周りの人達もこのやり取り見てたかな?
嫌だよ、一弥先輩にどう思われたんだろう。
本宮さん、強引過ぎる…
でも…
不思議だけど、腕を掴まれてほんの少しだけドキドキした自分がいた。
スーツ姿でカッコよすぎる本宮さんが、昨日とは違ってキラキラして見えたから…?
私、本当にどうしちゃったのかな…
きっと一弥先輩にフラレて寂しいんだよ…
だから、他の人を見てちょっとときめいたりして。
一弥先輩を忘れたいのに忘れられない気持ちと、本宮さんの強引さに振り回されてる自分に…もうわけがわからなくなってる。
今夜…
もし、本宮さんが来たら…ますます混乱しちゃいそうだ。
私は、頭の中を必死に仕事モードに切り替えながらミーティングルームに向かった。