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夕方、部屋には静かな光が差し込んでいる。しばらく天井を見つめていた涼ちゃんが、ぽつりと呟いた。
「……𓏸𓏸ちゃん、大丈夫……?」
その声はかすかに震えていて、でも確かに𓏸𓏸に届いた。
𓏸𓏸は一瞬驚いたように涼ちゃんを見て、それから柔らかく微笑んだ。
「……大丈夫だよ。 ありがとう」
熱で少し赤い顔のまま、それでも涼ちゃんのそばに戻ると、いつも通りゼリーを用意したり、水を差し出したり世話をしはじめた。
ふらつきながらも、𓏸𓏸は「これくらい平気」と言い聞かせるように、さりげなくポケットから自分の薬を取り出して飲んだ。
その様子を――
涼ちゃんは、そっと見つめていた。
普段なら黙っているだけだが、今だけは𓏸𓏸が薬を飲んでいることもちゃんと目に焼きついている。
(がんばってるんだ……無理してる……)
涼ちゃんの心の中で、少しずつ、何かがほどけていく。
世話をされるばかりでなく、
自分以外の誰かが――目の前の大事な人が――
しんどさを抱えながら頑張っていること。
そのことが、涼ちゃんの心にいつもより強く、静かに響いていた。
𓏸𓏸がそばにいる限り、
涼ちゃんもまた小さくではあるけれど、気遣いとありのままの想いを、
これから、少しずつでも外に出していけたらいい――
そんな希望を感じさせる静かな一日が、また終わろうとしていた。