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「会社が倒産したみたいだ」寝起きの俺同僚からの電話
俺はその言葉が信じられず
少し馬鹿にしたように言う
「おいおい俺が寝起きだからってそんな冗談信じ込むわけないだろ?」
しかし同僚は声のトーン変わらずに
「マジだ」と言うばかり
「いやいや嘘だ」
ずっと馬鹿にしたように笑う俺に
荒げた声で同僚は言った
「現実を見ろ!」
その声で俺はやっと事実だとわかった
会社は倒産したんだ
「え…ほんとなのか?」
事実だとわかった上で問う
昨日彼女に振られ仕事一本で頑張ると決めた夜仕事がなくなったら俺の生きる意味がなくなる
「だからマジだって言ってるだろ!」
その言葉に俺は絶望した
まだ会社に入って半年ちょっと
俺は馬鹿だからやっと仕事に慣れてきたところ
そんな俺に突きつけられる
「「倒産」」
という言葉
「そっか…」とだけ言い残し俺は電話を切った
会社も恋人も残らず俺に今あるのは虚無感と空腹感だけ
とりあえずコンビニで朝飯を買ってこようと
フラフラとコンビニへ向かう
向かう最中これからのことを考える
金は貯金少しだけ 守るものも無い
「「自殺」」
そんな言葉が脳裏によぎる
若い頃は自殺をするのはバカだけだと考えていたが
いざ自分が追い込まれるとなってしまう
そんなことを考えながら歩いていると
小さな声で「にゃー」と聞こえる
前の方に箱が見える
多分捨て猫が入っているのだろう
俺は軽度の猫アレルギーだし捨てられた猫を拾うような優しさはないんだ無視だ無視
心の中でそう思い進んでいき
ついに箱の前にきてそのまま進もうとすると
視線の左下に小さな白い猫が顔を出して
こちらに向かってこようとするのだ
俺はその愛らしさに思わず足を止めてしまった
「みゃー」
悲しそうに泣く子猫
その子猫を撫でながら言う
「ごめんなぁ…俺のマンションペット禁止なんだよ…くしゅん!」
アレルギーの症状が出てしまうがかまわない
どうにかしてこの子を助けたいと思う心が勝った
「そうだ!」
突然大きな声を上げる男に対し
猫はビクッ!っと跳ね上がる
にやけて近づいてくる男に猫は顔を強張らせながらジリジリと下がっていく
ドンっ!っと音がし後ろに下がれないことを
気づく子猫
猫なのに汗が垂れてるのが見える気がする
バッと男が子猫を掴む
「お前のこと一週間だけ預かってやる」
変なことをされると思った子猫は首を傾げる
「俺一週間経ったら自殺するんだ」
さらに子猫は首を傾げる
話しかけても通じないとわかっていても話仕掛け続ける
「自殺!自分で死ぬことだ」
日本語の意味がわかったのか
その言葉を聞いた瞬間子猫は驚きの表情を浮かべる
「おーお前頭いいなー!」
子猫の毛をグジャグジャにするほど撫でる
「お前人間だったら超モテてるぞ多分」
「あー!モテるって言うのは異性から好意を示されることだ!」
「みゃー!」
嬉しそうな声を上げる子猫
「くしゅん!」
「ちょっと待ってろよ!お前の餌買って来てやるからな!」
「にゃん!」
餌と聞いた子猫は飛び跳ねて喜ぶ
さながら一昔前に流行った猫ミームみたいだった
「電子決済でお願いします」
チャリン
男は自分の食べ物を買うのも忘れて
猫用の餌を買ってすぐに子猫の元に向かった
そこには律儀におすわりをして待っている猫がいた
「おー子猫すぐお家へ帰ってご飯だぞ」
「みゃー!」
男がしゃがむと子猫はすぐに腕の中に収まり
男の服にしがみつく
バレたら大家に怒られるリスクもあるが…
俺は人間として正しいことをするからいいんだ
そんな理由づけをして自室にソーっと入る
「ここが俺の部屋だぞー!」
「くしゅん!」
腕から解き放つと子猫は犬のように駆け回る
「お前…犬みたいだな」
男がそう呟くと子猫は走るのをやめ
頬を膨らまして男の方をみる
「みゃ〜!」
「おーごめんなお前は猫だもんな」
男は微笑みながら餌を皿に出す
「ほれ腹減ってるだろご飯だぞ」
「にゃー!」
子猫は大きく口を開けるばかりで食べる気配がない
「どうした?食べないのか?」
「にゃー!」
この子もしや「あーん」して欲しいのか?
だとしたら甘えん坊の猫すぎないか!?
俺がスプーンで餌を持ち上げると
子猫が待ってましたと言わんばかりに
顔を近づけてくる
「あーん」
「にゃー」
子猫は嬉しそうにそれを頬張ると
その場で一回転をしまた大きな口をあける
俺はその可愛らしさからどんどん餌をあげてしまう
「はいあー…」
「あれ!ない!」
ノリノリになって全ての餌を食べ尽くさせてしまったのだ
「うみゃー!」
その場にぐてっと倒れて
人のようにそう言うこの子猫
「おっさんみたいだなー」
…そういやこいつ性別どっちなんだろ
ふと頭に疑問がでる
「ちょいと失礼」
そう言い子猫を掴み肛門をみる
「ふにゃっ!」
「お前メスか!」
俺が大きい声で言い
子猫の顔を見ると
その真っ白な毛が少し赤くなり
爪を尖らせる
「あ…」
俺が気づいた頃にはもう遅い
俺の顔は子猫の爪によっとグジャグジャに
BAD END…
とはならずに子猫はそっぽを向くだけだった
恋愛漫画のヒロインみたいな子猫だなぁ…
俺はつくづくそう思うのだった
そして俺が自殺する前日になった
「おーいまいーご飯だぞー」
俺は拾った日から毎日子猫と過ごしてる
名前は”まい”にした
俺の好きな物語のメインヒロインの名前からとった
「食べ終わったらちょっと外に出てみようか」
俺がまいのほっぺをすりすりしながらそういうとまいは勢いよく「うにゃん!」っと返事をした
俺はまいと遊ぶために公園にきた
「おしっ!まい走るぞ!」
「にゃー!」
同時にスタートを切り公園内を走る
だが運動を全然してこなかったこともあり
すぐにばてて公園のベンチに座り込む
「おぉ…お前まだ元気なのかぁ…すごいぞっ!」
「もう俺疲れちゃったな…」
俺がぽつりとそう呟くとまいは俺の肩に登ってくる
「んっ?どした〜?」
「にゃおにゃお」
小さい手でわかりにくいがなでなでをしてくれている
クソ…猫のくせに…今まで我慢していた涙がポロポロと出てきてしまったじゃないか
その涙を拭うようにまいはぺろぺろと舐める
「お前が人間だったら…俺は嬉しかったのにな…」
その後俺たちは冷ややかな目で見られていることに気づきまいを抱っこし部屋に戻った
「は〜眠っ…」
「あっ…まいお前俺の妹の家に行くことになったんだよ」
まいは鳴かずに首をふる
「そんなに俺が好きか〜?」
首をブンブンっと縦に振り足に擦り寄ってくる
「ふふっ可愛いなぁ…」
「にゃぁにゃぁ!」
まいは照れくさそうに頬をかき
まるで色気を出すように上目遣いでこちらを見てくる
そんなまいをあざといなと思いつつ
脇をもち頬を擦り寄せる
どんだけくしゃみがでても構わず
なんでもいいから最後に甘えたい気分だったからだ
「ふぅ…じゃあおやすみな まい」
「うにゅぁ…」
そして…自殺するその日になった
自殺すると思い寝たのだが案外ぐっすり眠れ
最高の体調で朝を迎えれた
「ふわぁ…まいおきてるか?」
「にゃい!」
「お〜早起きだ…え!?」
「ふふっご主人様驚きましたにゃね!」
「いつのまに死んでたんだ…俺」
「にゃー!死んでないですにゃよ!」
「え…どゆこと」
目の前の美少女は「ふふふっ!」とドヤ顔で笑い一拍置いて言う
「私もよくわからないのですにゃ」
「えぇ!?」
「昨日の夜!神様に人間になりたいですって言ったらなったんですにゃ!」
「どゆことだ!」
「私のご主人様への愛がこうなったんですかにゃ?」
「そ…そうなのかぁ?」
改めて美少女の姿を見てみる
ぱっちりした青い目にさらっとした長い白い髪
整った顔に小さい胸!?
「って!なんで裸なんだ!?」
「元が猫にゃんですから裸ですにゃよ!」
「恥ずかしくないのか!?」
「もうご主人様にはお股まで見られていにゃすので…」
「それは猫の時の話だろ!」
「もう恥ずかしくないですにゃ!」
「風邪ひいちゃ悪いからこの服着てろ!」
「にゃっ!」
服を着て静かな部屋に二人ちょこんと座る
「…これからどうする?」
「子供をたくさん産んで子孫繁栄ですにゃね!」
「あのね…」
「だってまい住むとこもないだろ?」
俺がそう言うとまいはキョトンと頭を傾ける
「ここに住めばいいじゃにゃいですか!」
「無理無理!食費とかもあるし!寝るとこないし何より俺の理性が持つかわからん!」
「大丈夫ですにゃ!私は鰹節だけで生きていけにゃすし寝るのもご主人様とくっていて寝ればいいですにゃし」
そしてポーっと顔を赤くして言う
「あと…夜の方も…大歓迎ですにゃで…」
「いやっ!」
俺が喋ろうとすると口を塞いで抱き頬を寄せる
「これからよろしくお願いしますにゃね!」
「くしゅん!アレルギーも出るのかよ〜!」
こうして元猫と元サラリーマンとの
なんとも不思議な物語が始まったのだ