花澤雪斗は熊本県出身のストライカーであり、ブルーロックに誘われた人物の一人でもある。
*
「おい」
下睫毛が際立つ、口調の悪い美青年に声を掛けられた。下睫毛が際立つ、口調の悪い美青年は二人いるが、この言葉が指し示しているのは糸師凛についてだ。
「なんだ〜」
雪斗はベッドに寝転んだ状態で言葉を返した。そんな雪斗の前に立ちはだかり、凛はサッカーボールを放り投げる。
「ちょ、今風呂入ったばっかだろ!」
雪斗は飛び起きて言葉を放つ。
「行くぞ」
雪斗の言葉を無視し、凛は無理矢理練習室まで連れて行った。
───あっ、やばい。ヤバイヤバイヤバイ
雪斗の全身を寒気が襲う。雪斗は部屋にスマホを置き忘れた。それは即ち、援交がバレてしまうということになる。もしも通知が着てしまえば、凛にバレることになれば、即死案件だ。
雪斗は高校二年生になりたての頃、同級生が噂していた援交というものに興味本位で触れてしまったのだ。
「なぁ、知ってるか?男でも男釣れるらしいぞ」
笑いながら言う男の言葉に、雪斗は耳を傾けた。
「お前そういうのしたいのか〜?」
雪斗の言葉に、男は
「なわけねぇって!てか俺男無理だし、ましてやおっさんとか。しかもおっさんも俺なんか無理だろ」
手を横に振り否定する。
「でもお前ならいけんじゃねぇの?顔綺麗だし」
はははっ、と男が笑うと、男を取り囲むように座っている三人の友人らも笑いながら共感した。
「いや、マジでやめろ」
雪斗は否定したものの、実際のところは興味があった。本番無しでも数万貰えるなら、と、夜な夜な歓楽街に出掛け、そういった行為を行ったのだ。
「り、りりり、りーーーーん」
「馬鹿にしてんのか」
「い、いやぁぁ、へ、へやぁに?戻ってもいいかな?」
雪斗は焦りながらも凛に了承を得ようと訊ねるが、
「無理に決まってんだろ」
許可を貰うことは不可能だった。
*
だらだらと有り得ない量の冷や汗が流れ、止まらない。仮面を被るように笑顔で誤魔化してはいるものの、雪斗の様子がおかしいことに凛は気づいていた。
「仕方ねぇ。今日はもういい」
雪斗の体調が悪いと思ったのか、凛は歩いていた足を止め、そう言った。
冷や汗は止まり、雪斗は喜んだ。これで一安心だ、と。だが、そうはいかないのが現実というものだ。
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