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 狂気を愛し、その身を持って破滅の道を進む化け物を人はこう呼んだ。


 ”ギャンブラー”と。


「君はこの人生ギャンブルを楽しんでいる?」

 僕が某国のカジノで食事をしていると、突然声をかけてきたのは、狂気の笑みを浮かべる美しい少年─いや、どこか「少年のようなもの」だった。まるで何もかもが嘘のように、美しい外見をしていたが、その視線には冷徹なものが宿っていた。

「あの、どちら様ですか?」

 困惑した僕はとりあえず名前を聞いてみることにした。

「急に悪いねボクは運命シクザールさ、それで君の答えは?」

「良い名前だと思いますけど、僕にどうしてその質問を?」

「……良いから、答えてよ」

 そういう彼の視線はまるで市場で新鮮な野菜を探すかのような目をしていた。

 僕は直感的に危機感を感じて、その視線と合わせることは出来なかった。

「自分なりに楽しいと思いますよ」

 僕がそう答えると、彼は突然、くすくすと笑いながら僕を指さして言った。

「君、退屈しているでしょ」

 異質な空気を纏う彼は急にそんなこと言う。

「それならどうして僕はカジノなんかに?」

「君はこのカジノに退屈を紛らわしにきているんだ」

 言われればそれはそうだ。

「もう良いですか?僕も暇じゃないので」

「そうなのかい?それは悪かったね。ボクは22時までここにいるから、いつでも来るといい」

「では、機会があれば」

 僕はわずかな違和感を感じながらも、トレーを手にその場を後にした。

 彼は何だったんだろうか。急に質問をしてきて……。

「楽しんでいるか?、か……」

 僕はこのカジノに来てから楽しんでいたのだろうか。

 そんな悶々とした考えを抱えたまま僕はポーカールームへ向った。


 もちろん、そんな考えを抱いたまま勝てるはずもなく、あっさりと僕のチップは消え、日も沈んでいた。

 「今日はゴミみたいな日だったな。」

 確か22時までいるんだっけ。少し愚痴を言うぐらい良いよな。

 レストランへ向かうと、そこには同じ場所でコイントスをしている彼の姿があった。

「ちょっと良いか?」

 僕は彼の正面を向く形で座った。

「やっぱり戻ってきた」

 彼の口ぶりは、まるで僕がここに戻ってくることを予測していたかのようだった。

「負け続けたよ、たっく、ゴミみたいな結果だったよ。あんたはどうなんだよ」

 僕は不機嫌に言った。

「何が?」

「人生をだよ、楽しんでいるのかよ」

「もちろん人生ギャンブルを楽しんでいるよ」

 彼は考える間も無く即答というには早すぎるレベルで答えた。

「……そうかよ、」

 そう言って僕は席を立とうとした時だった。

「君は僕に愚痴を言いにきたんじゃ無いのかい?」

 その目は今朝見た市場で新鮮な野菜を探すかのような目だった。

 俺はまるでホラー映画を見た後にトイレへ行く気分になり、正気を取り戻した。

「もう良いよ、頭が冷めた。」

「ねぇ、ギャンブルをしない?」

 僕はその場から逃げたい気分で一歩後ろに下がった。

「嫌だね、それじゃ」

 僕がその場から逃げても彼はずっと僕の後を付いてきた。

「なんだよ、いい加減にしてくれ」

 僕は思わず振り返り、彼の目を見てしまった。

 

 「あ――」

 その時、僕は振り向いたことを後悔する。

 普通に走って振り切っていれば良かった。

 その目は今までの人生で見たことのないほどのもので、人間が持つとは考えられないものだった。

 たとえられるなら、それはまるでるで虫が耳元で羽音を立てながら、夏休み最終日の宿題を抱えているような絶望感と不快感が同時に流れ込んだ。

「ん?どうしたの?」

 動くことすら出来なかった。

「一緒に来こない?」

 断わりたい。とても断わりたい。だが、断った先の自分の命が危ういと感じるほどの圧。

 だからといって承諾するのも危うい。僕はどの選択肢を選べばいい!?

 上司から飲み会を誘われた時の何億倍断わりづらい状況だ。

 まず僕はどこへ連れて行かれるというんだ。

「あはは、行くよ」

 人間、どうしようもなくなった時には、笑いが零れるのかもしれない。

「さぁ、行こうか!ギャンブラー化け物の巣窟へ」

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